好きな人の想い人と相棒になった話
初めての短編。
「君のことが好きなんだ。誰よりも……いや、この世界でただ一人の僕の想い人が君なんだ!」
今人気の二人組アイドルの片割れ、Haru。そんな彼は、同僚で相棒でもある男、Shigureに想いを告げていた。
この2人が関わり、同じアイドルグループの仲間として活動しているきっかけ。それは彼らがが高校2年生の時の事だった。
◇◇◇◇
数年前――高校2年生
「聞いて聞いて!私好きな人がいるの!」
「え…」
突然聞かされたのは、俺の幼馴染の綾坂寧々の好きな人の話だ。彼女と俺、暮沢時雨は幼稚園の頃からの付き合いだ。そして彼女は……俺の好きな人でもある。そう、この瞬間俺は失恋したのである。しかも相手は学園の王子様とも呼ばれる…
「やっぱり御堂君は凛々しくてカッコいいわ!!」
御堂晴樹。こいつは2年に進級するタイミングで転校してきたクラスメイトである。自他共に認める美形であり、何でもできる器用さも相まって、こいつに惚れる女子も多い。転校して来て半年も経っていない現在既にファンクラブも出来ている程だ。でも俺は、ただでさえこの男のことが気に入らないのだ。そんな奴の事を自分の片思い相手が好きだと言っていたら余計に気に食わない。
しかしそんな俺の悩みに反して、その日から寧々の恋バナは続いた。
「さっきの選択授業、席が隣だったの!」
「今目合った!?目が合ったよね!!?」
「今日も凛々しくて素敵!」
好きな人の話を聞くほど辛いことはないだろう。
告白はしないのかと寧々に聞くと、
今初めて気づいたかのような顔で
「それもそうね!明日告白してくるわ!」
と宣言した。
…あのまま何も言わなければ彼女の告白は避けられたのか?
振られて悲しそうにする姿を見るのは嫌だが、両想いとなって幸せそうにする寧々の姿を見るのは…もっと辛いと思う。
正直言わなければよかったかもしれない…
…それが昨日までの話だ。そして今その彼女が、御堂に告白している筈…なのだが…
「御堂君、私に一目惚れしたの。貴方の横で、輝く貴方を眺めていたいわ」
「…そうか僕も―――
―――僕も僕のことが好きだ!」
は??
◇◇◇◇
俺の好きな人である寧々の告白に対して御堂はこう答えた。
「僕も僕のことが好きだ!」
ー-と
は????これ告白を受けているんだよな??というか
「私、貴方の事プロデュースして最高に輝かせたいなって思ったの!」
ん???
「だから私のプロデュースでアイドルになって欲しいの!」
「もちろんだよ!」
…何でこうなってんの?あとこれは失恋のカテゴリーに入るのか?
◇◇◇◇
そして。
「お願い!御堂君と一緒にアイドルをやってくれない?」
…どうしてそうなったんだ。
俺の片思い相手でもある、綾坂寧々の家族は、実は芸能一家である。母親が元トップアイドルで、父親がその元マネージャー。そして母方の叔母は、俳優業と社長を両立させる凄い人だ。そんな一家の血を色濃く継いだのか、彼女には―――
―――プロデュース欲のようなものがあるらしい。告白より優先するくらいには。まあ百歩譲ってそれはいいとしても。
「なんで俺が??!!」
◇◇◇◇
そんなこんなで色々あり、暮沢時雨と御堂晴樹はアイドルとして活動している。気が付くといつの間にかマネージャーになっていた綾坂寧々と共に、俺たちはガムシャラに頑張り、今では光栄なことに国民的アイドルともいえる状態になった……のだが。
まさか。
こうなるとは誰も思わないだろう。
この俺、暮沢時雨が
好きだった女の好きだった男に告白されるなんて……!!
暮沢時雨
この物語の主人公。紺色の髪に青い目。一人称は俺。幼馴染のことが幼少期から好きだったが、告白する前に失恋した挙句、彼女の片思い相手とアイドルを一緒にやっていく流れになってしまう。ツンツンした性格だが身内や好きな相手には甘いところがあり、特に幼馴染からの頼みを断れたためしがない。御堂晴樹のことは気に食わないので、他のクラスメイトのように神格化したり遠慮したりは一切なく、むしろ辛辣な態度が目立つ。