四章までの小ネタ解説と楽曲集
これまでに出てきた小ネタで、本編中では触れなかったものについてまとめました。
一応ネタバレありなので、読んだ方のみお楽しみください!
あと、25話までで出てきた25の楽曲を最後にまとめて列記しておきました。
一話で一曲ペースで出したと思うとかなり頑張ってるな……。
・最初のサブタイトル「芸術とは、最も美しい嘘のことである」
印象派の作曲家、クロード・ドビュッシーから引用。
・主人公「リリカ・クラヴィーア」のモチーフ
様々な逸話を含ませていますが、J.S.バッハがメインモデルです。
バッハは幼い頃、兄に楽譜を見る事を禁じられていました。
しかし音楽好きのバッハは夜中に月明かりの下、兄の楽譜を盗み見て紙に書き写していた「月光写譜」という名の逸話があります。また、バッハは教会オルガンの演奏をよく観察していて、初めてのオルガン演奏の際には経験が無いにもかかわらず、見事その才能を見せ付けたそうです。
リリカが教典を暗記している描写が「月光写譜」、テーブルで仮想ピアノを弾く描写がバッハの初演奏の逸話をモデルにしています。
また、リリカの苗字「クラヴィーア」はピアノが開発される以前の鍵盤楽器の総称です。
バッハの作曲した「平均律クラヴィーア曲集」は「ピアノの旧約聖書」とも呼ばれる作品です。
リリカはピアノを愛しているので「ピアノの旧約聖書」の名を与えました。
・フェレスの性格と扱いについて
フェレスはリストと何らかの関わりがあるキャラクターとして描写しています。
本編中では冗談ばかり言うクセに、窮地を打破する力を持った掴み所のない絶世の美少女です。あとフィーネにやたらとセクハラされます。
リストは絶世のイケメンで、置き忘れたハンカチを貴婦人たちが取り合ったり、風呂の残り湯を盗まれたりしていたようです。
セクハラ問題はひとまず置いておくとして、リストはよく気が回る性格で、多くの音楽家たちに資金的な援助を行ったり、演奏会でファンサービスを行うなど立ち回りに長けた人物でした。
また師としてもすぐれた人物であり、冗談を交えてピアノを教える気の良い先生として弟子が手記を残しています。
フェレスとリストの関係についてここでは明記しませんが、上記のような要素はフェレスの性格や立ち回りに影響を与えていることは確かです。
・三章でリリカがピアノではなくオルガンを弾いた理由
フェレスを出せない状況……というのが作中の理由ですが、音楽的にメタな理由もあります。
というのも、三章でリリカが弾いた「ディープ・パープル」のキーボード担当、ジョン・ロードが使っていた楽器が、キーボードではなくオルガンだったことに由来します。軽い理由ですが、拾える部分は拾いたいので取り入れました。
・17話の「希望は残っています……どんな時でも……!!」
リリカの弾いた楽曲「主よ、人の望みの喜びよ」は新世紀エヴァンゲリオンで劇中BGMとして使われた楽曲です。シン・エヴァの冒頭三分のあらすじ部分ですが、その最後に渚カヲルが発する台詞が「希望は残っているよ、どんな時にもね」。
ちょっとした小ネタですね。
・20話、天使の台詞に出てくる三人の音楽家
バッハ、ベートーヴェン、ブラームスの三人はドイツを代表する偉大な音楽家三人組(もちろん時代は別々)であり、その頭文字を取って「ドイツ三大B」と呼ばれることがあります。
別に小ネタでも何でもありませんが、一応ここで解説しておこうかと思って出しました。
・クロネロ・シュヴァルツ・ノワールの名前
リリカのライバル。
クロ=日本語で「黒」
ネロ=イタリア語で「黒」
シュヴァルツ=ドイツ語で「黒」
ノワール=フランス語で「黒」
ショパンの代表曲の一つに右手がほぼ黒鍵しか触れないという楽曲「黒鍵のエチュード」があります。
ライバルキャラでショパン由来、特徴的な名前にしたかったのでこのような名前になりました。
・革命のエチュード
ショパンの「英雄」がショパンの名付けたタイトルでないことは作中(23話)で言及しましたが、実は「革命」もショパンの名付けたタイトルではありません。受け取ったリストが勝手に付けたタイトルです。
こうして見ると、ショパン、名前付ける気ゼロじゃん……英雄も革命も楽曲と関係ないじゃん……と感じるかもしれませんが、別にショパンに限った話ではありません。チャイコフスキーの「悲愴」は弟に「何かいい名前付けて!」「じゃあ悲愴で」「いいね!!」ってノリで付けられたタイトルです。音楽家は名前に拘ってはいけないという法律でもあるんですかね。
・四章最終回の国家と音楽の関係性
概ね事実。
17世紀のフランスの王「太陽王・ルイ十四世」は当時最高峰の総合芸術と言っても過言では無い、バレ(今で言うバレエ)に自ら出演し、絶対的な存在である君主を演出することに力を注いでいた。
その他にも国家の威信を音楽で表現する試みは古今東西の多くの国家で行われており、ヒトラーが偏愛し政治利用したワーグナー、それとは逆に敵性音楽としてジャズを禁じたソ連など、音楽と政治は古くから現代に到るまで意外と接点が多かったりします。
余談ですが、ソ連のエピソードは今放送中のアニメ「月とライカと吸血鬼」の四話でも拾われていたので、「あぁ~結構ちゃんと調べてるんだなぁ」と感心しました。(一応ソ連にも当局公認のジャズバンド「国立ジャズオーケストラ」がありましたが、逆に言えば当局公認のバンドでないと活躍出来なかったということの裏返しですね。闇が深い)。
以上、作中の小ネタ解説でした!
以下はこれまでの25話の中で使用した楽曲を列挙したものです。
一部探しても見つからないものもあるかもしれませんが、有名なものが多いので是非聴いてみてください!
・25話までに登場した25の楽曲
ジャン・バプティスト・リュリ「怒りの日」
ベートーヴェン「ハンマークラヴィーア」
グリーグ「朝」
キング・オリヴァー「Dippermouth Blues」
J,S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集」
ラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」
ビックス・バイダーベック「Singin The Blues」
キング・オリヴァー「Wa Wa Wa」
J.S.バッハ「インベンションとシンフォニア」
ビックス・バイダーベック「In A Mist」
パッヘルベル「カノン」
JerryC「カノンロック」
J.S.バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」
ディープ・パープル「Speed King(2010 Remix)」
ディープ・パープル「ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ」
ディープ・パープル「紫の炎」
モーツァルト「キラキラ星変奏曲」
ベートーヴェン「交響曲第三番 英雄」
リスト「交響詩第六番 マゼッパ」
ショパン「英雄ポロネーズ」
ショパン「幻想即興曲」
リスト「愛の夢」
ショパン「革命のエチュード」
リスト「パガニーニによる大練習曲第六番 主題と変奏」
リスト「メフィストワルツ第三番」
ベートーヴェン「交響曲第九番 合唱付き」
色々と小難しいことを書きましたが、本編のほうは何も考えずに読めるようシンプルな物語にしています。
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