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第9話《欲しければ盗めばいいのよ!》


「……なんでこんなに綺麗になってるの?」


部屋に侵入?してきた少女がボソリと呟いた。


当の俺はといえばその様子をクローゼットの中から盗み見ていた。


あいあむじゃぱにーずにんじゃでござにゃんにゃん。ふざけてる場合じゃない。大ピンチだ。なにを馬鹿言ってるんだ俺は。考えただけで言ってはないけど。


この状況どうする?


見知らぬ少女にクローゼットに隠れている俺。そもそもなんで俺が隠れてる?いや、当然の判断だと思う。いきなり知らない少女が入ってきたら、そりゃ隠れるって。


今後のことは一切考えてないわけだけど。


なるようになるんじゃないかなー。あれ、けっこう余裕か俺。


まぁ、下手に物音たてなきゃ見つからんだろう。安易な考え。


それに――というか、それより。ここはクローゼットの中でして、つまるところを言えばですね。ここには鈴郷さんの衣類がたーくさん収納されているわけでして……。


すーはーすーはーすーはー。


うわ……すげぇ、良い匂い……って!俺はへんた――。


すーはーすーはーすーはー。


変態だよ!俺は変態だよ!つーか、これが健全な青少年の反応だよ!我慢なんか出来るか!俺だっておと――。


すーはーすーはーすーはー。


変態なんだよ!男はみんな変態!これ世界の真実!はい!決定!全会一致で現議題は可決され――。


すーはーすーはーすーはー。


だー!もー!たまんねぇーなー!わかってる!わかってるさ!俺が今やってることは最低さ!でもな!


すーはーすーはーすーはー。


バレなきゃ何の問題もねーんだよ!


ガチャ。


「……」


「……」


バレました。


開け放たれたクローゼットの扉。


向かい合う名も知らぬ少女とクローゼットの中に潜んで、すーはーやっていた変態。


さて?なにが飛び出る?悲鳴か?悲鳴だろ?ここは、きゃーってな感じで叫ばれて、なんだなんだと人が集まってきて。


パトカーのサイレンの音。


少女を人質に立て篭もる俺。


スピーカーから聞こえてくる俺を説得しようとする声。


俺は本気だこんちくしょーと威嚇射撃。


どよめく現場。


もう、まってはいられない。


強行突入。


響く一発の銃声。


じんわりと血に滲む胸。


薄れ行く意識の中。


俺が最後に見た光景はニヤリと口元を歪める知らない少女だった。


……は?


「うわっ!?」


瞬間、世界が反転する。


一瞬、なにが起きたのかが理解できなかった。背中が少し痛いこと、目線の先には天井が見えたことで俺は今、自分が仰向けに倒れているんだと知った。


それに腹部にかかる軟らかい圧迫。知らない少女が倒れた俺に跨がっていた。それは世間一般で言うところのまうんとぽじしょんと呼ばれるものだった。





「おい牧原、聞いたか?」


「……ん?なにが?」


昼休み。机を向かい合わせて昼メシを食べていた仁が不意に言った。


「今日、暁ちゃんお弁当らしい」


「へぇー。あのカップラジャンキーの鈴郷さんがお弁当を?」


「そうだ。しかも手作りなんだって!」


「はぁー。手作りねぇ。それは凄いな。で?なんで仁がそんなこと知ってる?」


「盗み聞きした」


「最低だ!?」


「で、だ。マッキー」


「やめい。俺をそんな油性マジックみたいな感じで呼ぶな」


「ならマリック」


「なんで?」


「マジックだから?」


「疑問形を疑問形で返すのはやめい」


「そんなことよりだ。マッキーは暁ちゃんの手料理を食べてみたいとは思わないのか!?」


「急に何なんだよ」


「ああ!俺は是非とも食べてみたいね!考えてもみろよ!あの愛しの暁ちゃんの手料理だぜ!もう、そりゃ素手でいろんな食材を触ったりなんだり、つまり!それを食べれば間接的に暁ちゃんの生手をベロンベロンになめ回してるのと一緒だぜ!」


「やっばり最低だ!?生手って、なんだよ。生手って」


「てって、てって、うるせーなー。つーことで、俺は今から暁ちゃん弁当をかすめ盗ってくる!」


「おまえ最低だよ!?」


「つーことで、いってきま――」


「やめい」


立ち上がろうとした仁の襟首を掴み強引に席に戻す。なんか、首が閉まってグェとかカエルが潰された時のような声がしたけど気にしない。


「とめるな!」


「とめるわ!」


「なんだよマッキー。なんだかんだ言って本当はマッキーだって暁ちゃんのこと好きなんだろ?このムッツリー」


「ちがうわ。俺は今から罪を犯そうとする馬鹿をとめただけだ」


「まぁ、マッキーの気持ちはよくわかるぜ。だってあの暁ちゃんだもんな。容姿端麗で容姿端麗で容姿端麗な暁ちゃんだもんな。おまえが惚れちゃう気持ちはよーくわかる!でもな!俺の暁ちゃんはおまえにやらんからな!」


「話し聞いてねぇし。ボキャブラリすくねぇし。鈴郷さんはおまえのものじゃねぇし」


「じゃ、改めて、いってきま――」


「だから、やめい」


「なんで止めるのよ馬鹿!」


「まず、かすめ盗るって発想を改めろ」


「マッキー、質問だ」


「急になんだ?」


「欲しいものがあったら、どうやって手に入れる?」


「ガンバル!」


「ブブー。正解は盗むでしたー」


「最低だ!?」


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