表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/40

第5話《祝!二日目に突入しました》


俺はその日、久しぶりに熟睡した。


こんなによく眠れたのはいつ以来だったろうか。


鈴郷さんのおかげだ。


鈴郷さんに感謝。


しかし、習慣とは恐ろしいもので俺が目を醒ましたのはやっぱり日が昇る前だった。


ごそごそと鈴郷さんを起こさないようにベットから抜け出した。


例え環境が変わっても二度寝という選択肢はなかった。


「んー」


腰に手を宛てて軽く身体を後ろに逸らす。


ん、よく寝たから絶好調だ。


どれ、鈴郷さんが起きる前に朝ごはんでも用意しておこう。


家主(しかも女の子しかも美人)が寝てる間に勝手にいろいろするのは何か間違ってる気がしたが、なんとなく鈴郷さんはそんなことは些細なことと一蹴する気がした。いや多分する。


核心はないけど、深く鈴郷さんのことを知ってるわけじゃないけど。


安らかな寝息をたてている鈴郷さんを見下ろす。自然と口元が綻んだ。はたから見ると寝てる同級生を見てニヤついてる無職。変態か俺は。


洗面所に向かい顔を洗う。洗って気がつくタオルがない。辺りを見回すと棚の上にタオルを見つけた。ちょいと拝借。ちょっと甘い香りがした。


俺って結構図々しいな。


キッチンに向かう。昨日はカップラの容器で埋立地になっていたキッチンだが、俺の奮戦もあり、一先ず綺麗にはなっていたが、所々汚れが残っているのが目立っていた。


流石に調理ができる環境ではないな。朝ごはんを作る前にちゃちゃっと掃除してしまおう。


幕間。


お掃除終了。日が申し訳程度に西の空から顔を出した頃だった。時間にして一瞬。ちょっと大袈裟に言った。


どれ、鈴郷さんが起きてる前に朝ごはんを作るとしよう。


さっそく冷蔵庫の中を漁った。ここで俺の予想。何故か冷蔵庫の中には大量のカップラがって展開になるはず。だけど、意外にもそういったことにはならなかった。いや、それが普通なんだけどさ。


俺の予想に反して冷蔵庫の中身は案外普通だった。野菜とか卵とかいろいろ。カップラは出てこなかった。驚愕。衝撃。仰天。世界がひっくり返るんじゃないかって思った。嘘だけど。


しかし、不思議だ。キッチンは俺が掃除する前は足の踏み場も無い状態だった。だのに冷蔵庫の中身は普通。賞味期限をみてみたが、どれも切れてるなんてことはなく、真新しい。


そういえば昨日鈴郷さんと会ったとき彼女は買物袋を持ってたな。中身はトマトとか卵とか一般的な食材。転んでぶちまけてたけど。


んー。三食カップラって言ってたのは嘘?よくわからないな。まあ、起きてきたら聞いて見よう。


さて、と。何を作ろうかな。


食材は一通りは揃ってる。勝手に使っていいのかは貞かじゃないが、金持ちがそんな些細なことを気にするとは思えない(偏見)。


こんなに沢山の食材を目の当たりにするのは久しぶりだ。詳しく言うと小学校の調理実習以来。家では一度もない。


とりあえず、なんでも作れそう。だけど、逆にそれが困った。


下手なものを作って朝っぱらから鈴郷さんのテンションを下げるなんて真似はしたくはない。


朝ごはんとはその日の全てであーる。朝ごはん次第でその日の運命が決まるのだ!なるだけ美味しいものを、そして、栄養価の高いバランスのとれたものを作ってあげたい。と思うのは俺のエゴ?いやこれが普通だ。


といっても俺に鈴郷さんの好みはまだわからない。和食?洋食?ファーストフード?カップラ?


いや、どう考えてもカップラだった。


でもなぁ。あんまり朝からカップラっていうのもなぁ。 あれ身体にあんまり良くないもんだし。いや、俺の一方的な偏見なんだけど、世間じゃそう聞くし。実際の詳しいことなんざ、わからん。わからん。


かといって、まともなTHE朝ごはん的なものを作るのもどうかと思った。三食カップラを食べる偏食家の鈴郷さんが果たして普通の朝ごはんに満足するだろうか。


ふむ、しょうがないな、ここは無難な策をとることにしようか。


俺はぼちぼち調理に取り掛かった。





「んー」


清々しい朝!嘘、至ってふつうの朝です。


でも、なんか違和感。ん?私はなんでベットの端で寝てるんだろ?


それに、どこからともなく漂ってくる、この食欲をそそるいい感じなニオイは?


んー。んー。なんだっけ?なにか忘れてるような気が?まあ、いいや、とりあえず二度寝しよ。


コテンとベットに横になって、いざ、夢の世界へ。


ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ。


横になって僅か数秒。セットしていた目覚まし時計がへっへっへー姉ちゃんそろそろ起きねぇと学校遅刻しちまうぜ?ってな感じで鳴った。なんか、若干、イヤラシイ目覚ましね。これ。いや、私の妄想なんだけどさ。


「へっへっへー、姉ちゃんそろそろ起きねぇと学校遅刻しちまうぜ?」


なんか、幻聴まで聞こえてきた。


「と、まあ、冗談はともかく。起きた?」


幻覚まで見える。目の前に人が立っていた。誰?この男?見覚えがあるような、ないような。


「朝ごはんつくっておいたよ」


ああ、このいい感じのニオイは朝ごはんのニオイだったのか。


あー、どうしよう。私どうなる?朝、起きたら見知らぬ?男が勝手に私の部屋に侵入してて、図々しくも朝ごはんまでつくってらっしゃる。なにこれ?あれ?結構有り難い?お礼を申し上げたほうがよろしいのかしら?


「あ、ありがとね」


「どういたしまして。あ、冷蔵庫の中身使っちゃったけど大丈夫だったか?」


「もーまんたい、もーまんたい。そんなことよりさ。あんた、誰?」


「……まだ、寝ぼけてる?俺は有松だよ」


有松?


「おー、有松!元気にしてた?久しぶり!」


「やっぱり、まだ寝ぼけてるだろ?とりあえず顔洗ってきたら?」


「んー……んー?あぁ……そうね。そうするわ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ