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第39話《いろいろがんばらなくちゃいけない》


気がつけばすっかり日は沈み、辺りは真っ暗。駅前の時計台を見れば時刻は8時を回っていた。


俺と有灯ちゃんは相変わらず手を繋いだまま二人並んで歩いている。


かれこれ数時間歩き回っているわけではあるが、一向に鈴郷邸につく気配がない。


あれか。途中あーだこーだと理由をつけて俺を引っ張っていく有灯ちゃんに連れられて、二人でごはん食べたり、映画見たり、ゲームセンターをエンジョイしたり、バッティングセンターでハッスルしていた。そんなことしてればこんな時間にもなるって話しか。


貧乏故に今まで経験したことがないこと大半で、終始おっかなびっくりだったのは秘密。貧乏故に金銭的なアレはすべて有灯ちゃんの奢りなのは秘密。おい、そこ。甲斐性ないとか言うな。それは俺が一番わかってる。


余談だが、この借りはちゃんと身体で払うからと言ったら顔を真っ赤にした有灯ちゃんにぶん殴られたりもした。


そんなこんなで二人で一緒に過ごしていたわけである。


正直な話し、当の目的など遥か忘却の彼方に吹き飛んでいた。


楽しそうに笑う有灯ちゃんを見れるだけで俺はなんだかお腹一杯になり、他のことはどうでもいい感じで、まあ急ぐ必要なんてないのだろうと勝手に結論付けて、こたつでぬくぬくするかの如く現状に身を任せ、ただ状況に流された。


これはもう完全にやられてる。色んな意味で。


今はただ幸せな夢を見させてくれ。


「疲れた」


有灯ちゃんが呟いた。


「……」


有灯ちゃんはそこで一度黙り込み、少し間を置いてから口を開いた。


「……ど、どこか、静かな場所で休みたい」


……え?。


「二人っきりになれるような、そんな場所で――……」


有灯ちゃんは俯いていた。表情は見えない。その代わり耳まで真っ赤にしているのが見えた。


よし。俺。落ち着け。


この状況は明らかにおかしいだろ?


有灯ちゃんの今の発言は俺達がこれからアレでアレでアレな場所に行くようなニュアンスではなかっただろうか?


はっ、なにを馬鹿な。だって相手はあの傍若無人で理不尽の権化たる有灯閣下だぜ?


これは幻聴だ。幻覚だ。俺の欲求不満が具現化しただけだ。


つまり、俺は有灯ちゃんとこう言う状態になりたいっていう欲求があるのか?


否定出来ないものはあるけど……。






「汗でベタつく。シャワー浴びてくるから」


スタスタとシャワールームに行ってしまった有灯ちゃん。


俺は一人、ポツンとベッドの端に腰かけている。


……おい、待て。いきなり場面がとんだぞ!なんで既にホテルにいるんだ!


キャーーー!俺ホテルとか言っちゃったよ!恥ずかし!恥ずかしッ!!言ってないけど、思っちゃったよ!恥ずかし!恥ずかしッ!!キャーーー!キャーーー!キャーーー!


一人でゴロゴロとベッドの上でのたうち回る。正直、変態過ぎる。


落ち着け!一旦、落ち着け。


立ち上がって深呼吸。スーハースーハー。よし落ち着いてきた。


バタン。落ち着いたら気が抜け、身体から力も抜ける。俺はベッドの上に大の字で倒れた。


今日はちょっとはしゃぎすぎた。じんわりとフカフカのベッドに疲れが吸われていくような感覚。すげぇな、おまえ、このフカフカが!心の中でベッドを褒め称える。


目を瞑り、耳をすます。遠く聞こえる車のエンジン音。街の喧騒。色んな音が混じる、その中で一際大きく聞こえる音があった。



――浴室から聞こえる水が弾けるシャワーの音……。



滅!滅!!滅ッ!!撃滅!滅殺!爆滅!瞬獄滅!阿修羅殲滅!


失せろや煩悩があああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!


ガスッ!ガスッ!ガスッ!


このままでは、いろいろと壊れてしまいそうで、


ガスッ!ガスッ!ガスッ!


なにかとんでもない奇行に走ってしまいそうで、


ガスッ!ガスッ!ガスッ!


だから、だろう。


ガスッ!ガスッ!ガスッ!


俺はなんども壁に頭を打ち付けていた。


いやまて、これは既に奇行に走っているんじゃないか?


俺は程無くして意識を跳ばすことに成功。ベッドに再び大の字でぶっ倒れるのであった。





それは俺が次に目を覚ました時だ。


いや、覚ましたというよりか、覚まされたと言ったほうが正しいかもしれない。


それは微睡みの中、


不意に感じた感触、


何か柔らかいものが唇に押し当てられるような、


そんな感触、


それと口の中に何か甘ったるい匂いがした。



目を開ける。


…………。


……目の前に有灯ちゃんの顔があった。


「「……」」


目が合う。そして沈黙。


バッ!


有灯ちゃんが物凄い勢いで飛び退き、壁際まで後退した。


「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」


なにやら言葉にならない悲鳴をあげている模様。その顔はもう隅々まで、真っ赤に染まっている。


ぺたん。


そして有灯ちゃんは力なくその場に腰を下ろし、両手で顔を覆い俯いてしまった。


「……ゆ、有灯ちゃん?」


声をかけるが反応はない。微かにだが有灯ちゃんがブツブツと呟いているのだけはわかった。なんかとっても怖い。


暫くして有灯ちゃんは顔をあげる。


…………。


……ゾクリと。


言い知れぬ悪寒が走った。今世紀最狂最大の悪寒。


ガクガクと手足は震え、ガタガタと歯が噛み合わず音をたてる。言わずともわかる俺は今、恐怖しているのだ。


それも人間がもつ、潜在的な"死"の恐怖だった。


なんてことはない。顔をあげた有灯ちゃんのその表情に、俺は、ただ、ただ、恐怖しているのだ。


「ウガアアアアアアアアア!!!」


それは本当に一瞬、刹那の時間だった。


何かの雄叫び、それとガシャーンと盛大すぎる窓ガラスの割れる音。


――気がつくと俺は空を飛んでいた……。


比喩的な表現とか、そんなことではなく。ありのまま、起こったことだ。


空を飛んでいた。それもさっきまで俺が寝ていたベッドと共に。


この時の俺は何が起きたのかさっぱりで、数十秒の人力による空中浮遊を楽しんでいる余裕なんて勿論なく、ただ呆然としているだけだった。


余談。


有灯ちゃんがベッドごと俺を外に向かってぶん投げたのだと思いあたるのは、もうちょっとだけ先の未来の話。



ちょっとしみったれた話


興味がないかたは飛ばしてください





2011年3月27日

福島県いわき市より


東日本大震災で発生した津波で父親が流され行方不明。それも数日前見つかりましたが、久しぶりに再開した父は変わり果てた姿でした。


小説みたいな台詞、だけどこれは紛れもない事実で、正直な話、自分がこんな体験をするだなんて思ってもいませんでした。


明日はその父の火葬の日。葬儀の方はこんな状況だし、落ち着いてから日を改めてということです。


で、当の私はこんな状況にも関わらず小説を更新しているわけです。


こんな状況だからこそ、この小説を見て、少しでも誰かが笑顔になってほしい……


なんてそんなのは綺麗事


ただ私は現実逃避しているだけで、辛い現実から逃げているだけ


楽しいことを考えて、楽しいことをして、ただ逃げ続ける


それじゃいけない。頭の中でそうは思っていても、感情がなかなかついてきませんでした。


そんな時のこと。


昨晩。夢を見ました。怪我はしていたけど、生きて父が帰ってくる夢でした。


朝起きてなんともいえない虚脱感。ああ、そういえば父はもういないのだ、と


月に一度、顔を合わせるかどうかの父だった。いてもいなくても同じような父だった


だけど、でも、やっぱり


いざ、いなくなると、もう会えなくなるんだと思うと


寂しいし、悲しいし、辛い

鬱になる。どうしよもなくなる。なにをしたらいいのかわからなくなる。


それでも時間は流れ、嫌でも先に進まなくちゃいけません。


このままじゃいけない。



明日は火葬式


しっかりとお別れ言って、これからは前向いて歩いていかなくちゃならない。


そうしなくちゃいけない。これは乗り越えなくちゃならないことだから。


どんなに辛くても生きて行かなきゃならないから


というわけで!暗い話になってしまいましたが、今まで以上に精一杯生きていかなければならんわけです!


だから、このばっくらんど他いろいろと投げ出すわけにはいかないわけです!


これを読んでくれた方が作者同様、現実逃避しにきたとか大いに結構!無理をしてばかりでは壊れてしまいます!だから少しだけ肩の力を抜いて楽になってもらいたい!


これを読んでいる間は楽しい思いになれるよう


被災地の方も、それ以外にお住まいのみなさんも


支離滅裂な文章になってしまいましたが、これを読んでくれてありがとうございます


これを誰かが読んでくれているのだと思うだけで、少しだけ力が沸いてきます


よっしゃああ!これからも気合いいれて暴走するぜ!


ではみなさん!今後もばっくらんどをよろしくお願いします!

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