第36話《リア充爆発しろ》
「マッキーぃぃぃいいいい!!」
「う・る・せぇぇえええ!!」
帰宅早々、玄関を開けると仁が叫びながら突進してきたのを華麗に外に投げ飛ばす。
「なんで投げるのさ!」
「なんでも糞もあるか!」
「つーか、今日一日マッキーどこ行ってたのさ!?俺、姉さん達から逃げるの大変だったんですけど!?」
「いつものことじゃねーかよ。よかったな愛されてて」
仁は頻繁に5人の姉に玩具にされているリア充である。あー、ダメだ。仁をリア充と呼ぶのは抵抗がありすぎる。
「実姉に愛されてても嬉しかないわい!!そんな美人じゃねーし!!阿婆擦れだし!!あーあ、なんで姉さん達美人じゃねーんだろ!」
「まあおまえのお姉さんだからな」
「畜生!美人だったら間違いなく禁じられた姉弟愛に!してーあいに!糞っ!俺は妹が欲しかった!」
いつもの如く、いろいろ歪んでいる仁だった。
「でッ!?マッキーは今日どこ行ってたのさ!?折角インシテミノレなんてエロそうな映画がやってるから一緒に行こうと思ってたのに!」
「おいまて仁。あの映画のジャンルは青春ミステリーだぞ?」
「まてやマッキー!ミステリーだと?馬鹿なこと言うんじゃないよ!だってインシテミノレだぜ!?何処に!?ナニを!?なエロい映画じゃないわけがないだろッ!?」
「仁、悪いことは言わん、とりあえず謝っとけ」
「それにさ主題歌歌ってんのシェリノレじゃん!!」
「シェリノレだけどシェリノレじゃねーよ。May'ズだからシェリノレだけどシェリノレじゃねーから」
「つーかあれシェリノレ歌ってんだしアニメだろ?」
「まずそっから説明しなきゃなんねーのかよ!」
「やべぇシェリノレ超可愛い」
「おまえただシェリノレ好きなだけだろ!?」
「ちょっとシェリノレにインシテミノレ!!」
「もはやただの下ネタ!?いやまてただ名前と映画のタイトル言っただけか!?」
「シェリノレみたいな娘と新婚生活おくりてー。むしろチューしたいよチュー」
ダメだこいつ早く土葬しないと。いやまて、土葬したら何か地球に悪影響を与えそうだ。変な植物が生えてきそう。
「まあ、とにもかくにもインシテミノレはエロい映画でもなければアニメでも、ましてやシェリノレも出てこないからな。実際今日見てきたけど普通に面白かったぜ」
「……今日、見て、きた、だ、と……?」
急に仁の動きが鈍った。ぎちぎちぎちと錆び付いた機会のような動き。
「おい牧原ちなみに聞くが。一人で見てきたんだよな?」
「は?そんなわけないだろ。映画を一人で見に行くとかどんだけ淋しい奴だよ」
「牧原てめぇ!!今の発言で全国の友達いない方々全員を敵にまわしたぞコノヤロー!!」
「なんかゴメン?」
とりあえず謝った。
「んで!?ファッキン牧原は誰と映画見に行ってきたのさッ!?」
「咲夜ちゃんと一緒にだけど?」
「女の子と一緒にだとおおおぉぉぉおぉおおおおお!?!!!まさかとは思うが二人っキリだとは言わせねぇよッ!?」
「何言ってんだ。二人きりに決まってんだろ」
「言わせちゃったッ!?」
「デートなんだから当然だろ」
「インシテキタのかああああああぁぁぁぁあぁぁ!!!!牧原てめぇ大人の階段昇ったんか昇ったんかあぁん!?どこにナニをインシテキタんだろ!?」
「え?いや、まあ、その、なんだ、あはははは」
「なんでそこで照れ笑いだコノヤローおおおぉぉおぉ!?!!」
「つーか野暮な事聞くンじゃねーよ」
「ゲロゲロゲロゲロゲロゲ」
「ちょ!?仁てめぇ急になに吐いてんだ!?」
「リア充憎い。リア充憎過ぎてゲロ吐いた」
「あまりの憎悪で体調不良!?」
「うぅ……気分悪いでゲソ。リアルで充実してる糞ゲソ人間共め!こうなったら侵略してやるでゲソ」
「おいなんかゲソ娘になってなイカ!?」
「ゲソ娘可愛いよゲソ娘。ゲソ娘とぬるプレイでゲソゲソチュッチュッしたいでゲソ」
「まあ、頑張れよ」
そこには次元の壁が立ち塞がってるけどな。
「なんだその上から目線はッ!!勝ち組か!勝ち組なんか!?つーか、いつからそんな彼女なんか作ってやがったのさ!?」
「結構前からだけど?」
「アタシはそんなの聞いておりませんのことよッ!?」
「言ってねーもん。隠してたわけでもないけど。だいたい聞かれなかったし」
「マッキーに彼女が出来るだなんて思うわきゃねーだろがいッ!!マッキーは一途に俺の事思ってたんじゃねーのかよッ!?」
「なんで俺が男のおまえを一途に思わなきゃなんないんだよ!気持ち悪いわ!!」
「だって幼なじみじゃん!」
「その前に同性だッ!!」
「ガッ!」
「ぬるぽ!」
「ほら見ろやっぱり!」
「なにがだよ!?」
だんだんと収拾がつかなくなっていく仁とのやりとり。
正直この辺で切り上げたい所だがわーぎゃーと騒ぎまくる仁の勢いは暫く収まりそうにない。
なんとかしてこの状況を抜け出したいわけだが、どうしたものか。
よし、ここは。
「あー!あんなところに全裸のシェリノレがー!」
超棒読みで叫び仁の後ろを指差した。
「なんだってぇーーー!」
ばっと振り返る仁。どこだどこだと辺りを見回す。
よし今だ!
素早く玄関のドアを閉め、鍵をかけて、ついでにチェーンもかける。
これでよし。
外でぎゃーぎゃー騒ぎ続ける仁を尻目に、俺は悠々と部屋に向かうのだった。