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第15話《ボウリングは楽しい》


「よっしゃ!三連続ストライク!」


「最終フレームだけ三連続ストライクって……あと全部ガーターなのに」


なにを間違えたのか仁と二人っきりでボウリングに来ていた。二人っきりで。男と二人っきりで。


「やっぱボウリングっていいよな!マッキー!」


「ボウリングはいいけど。男二人っきりってのが……」


ふと気がつく、悲しい現実。いや、気づいてたけどさ。


「球投げて棒を倒すとかマジエロい!」


「微妙にエロくない!」


まったく、なに言い出すんだこいつは……。


「どれ、そろそろ帰ろうぜ」


1ゲーム終わったところで、そろそろ頃合いと判断した俺は仁にそう提案した。


「ええー、もう1ゲーム行こうぜー」


「仁、残念だけど苦学生には金がない」


「なんだよー、つれねーなー。いーし!一人でやるから!」


「がんばれー」


仁は一人でボーリングを再開したのであった。


ガコン。


相変わらず仁のなげるボールはピンにぶつかる目前でことごとくガーターに吸い込まれていく。わざとやってるんじゃ?と疑いたくなるほどに。


「それでさぁ、マッキー」


「ん?」


「暁ちゃんと仲良くなるためにはどうしたらいいのだろうか?」


「当たって砕けれ」


「俺にそんな度胸があると思ったら大間違いだ!無理に決まってんだろうが!バカ!」


結局、仁は自他共に認めるヘタレなのである。


「とりあえず、あれやろーぜ。マッキーが脱いで暁ちゃんに襲い掛かる。そして、それを俺が助ける。暁ちゃんは俺にベタ惚れ」


「色んな事例は多々あれど、それの成功確率ほど低いものはないぞ。それと俺が脱ぐ意味がわかりません」


「この前たまたま見かけたんだけど、有松が悪漢から救った女の子に告られてた」


「それは主人公補正ってやつだ」


「は?なにいってんのマッキー?」


「すまん。二次元に干渉された。忘れてくれ」


「……?」


「まあ、有松は例外ってことで一般人はあれを見習ってはいけません」


つい最近まで同じクラスに有松という男がいた。その有松は急に学校を辞めてしまったのだが。やつはもう別格だった。なんというかあいつは本当にいいやつだ。男の俺でも恋しそうになったこともあるぐらいに。


「なら、俺は暁ちゃんと仲良くなるにはどうしたらいいんだよ」


「地道に好感度稼げ……って普通ならそんなとこだが、俺の意見としては鈴郷さんは諦めたほうがいいと思うぞ。そこらの女の子ならまだしも、あの三大美少女だからな」


俺達が通う秋祝高校では毎年10月に行われる文化祭で美少女投票というものが行われている。


この学校最強の美少女は誰か!?という名目で全校生徒からアンケートをとるだけの簡単なものだ。別に水着審査とかするわけじゃない。


で、そのアンケートで支持を集めた上位三人がその年度の三大美少女として、祭り上げられるのだ。というか、ほぼ奉られてる。


そして、その去年の三大美少女の一人として選ばれたのが、鈴郷暁その人なのである。


「はっきり言って、仁には釣り合わない」


ぶっちゃけ、はっきり言わずとも気がついてほしかったりした。


「マッキー勘違いするなよ」


「なにをだよ?」


「俺は別に暁ちゃんと彼氏彼女の関係になりたいとか思ってるわけじゃないんだ」


「だったら、なんなんだよ」


「俺はただ!暁ちゃんとチューがしたいだけなんだ!チューがしたい!チューがしたいだけなんだ!だ・け・な・ん・だ!」


「顔洗って出直せ!」


「できれば舌もいれたい!」


「やっぱ出直すな!おまえみたいなくすんでる奴はずっと顔洗ってろ!」


「そ・し・て!あわよくば!あわよくばぁ!GO!TO!GO!TO!」


「誰か!たいした効果はないと思うけど、この変態を漂白剤漬けにしてあげて!!少しは、ましになるかもしれなくないかもしれないないない!」


「そんなわけで、マッキーなんか作戦考えてくれ」


「仁が鈴郷さんとキスできる作戦をか?ふざけんな。この駄馬」


「こうなったら無理矢理に奪うしかないのか……やっぱりダメだ!そんな度胸俺にはない!」


「やっぱりヘタレだな」


「こうなったらしかたない!マッキーが俺のかわりに暁ちゃんとチューしてくれ!」


「なんでそうなるんだよッ!?」


「そして、俺は暁ちゃんとチューしたマッキーとチューする!」


「まさかそれで間接キスだとでも言うきか?」


「間接ダイレクトッ!!」


「意味わからんわッ!!」


「俺はとにかく暁ちゃんとチューしたいだけなんだ!どんな形であれ!」


「だったら、鈴郷さん使用済の割り箸をゲットするとか。いろいろあるだろ」


「……そこに温もりはありますか?」


「妄想次第」


「そこに正義はあるのですか?」


「信じろ。それはおまえの正義になる」


「……そうか。わかったよ。俺、頑張るから!って、なんでそうなるんだッ!!」


珍しい仁のノリツッコミ。


「そんな卑怯な真似できるかー!」


「仁にしては珍しくまともなことを」


「あ、でも、暁ちゃんの食べたカップラの容器はフルコンプしてあるぜ」


「やっぱりおまえは最低だ!!」


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