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第12話《これって実はちょっと、おいしい展開?》


キーンコーンカーンコーン。


寝て、起きたら、すでに午後の授業が終わっていた。我ながらなにしに学校に来ているのか甚だ疑問だった。いやまあ、おひる食べに来てるだけなんだけどね。


「咲夜!」


叫ぶ。


「らじゃー」


ナイスな咲夜は私が叫んだ意図を汲み取ってくれる。


咲夜が向かう先は教室から廊下へと繋がる後ろの方のドア。


そして、そこにはそろーりと気配を消して教室から抜け出そうとするほたるの姿があった。


「……くっ」


追っ手の存在に気がついたほたるは隠密行動をやめ、一気に逃げ出そうと走り出した。


「……ふ、甘いわね。ほたる。流石のあなたでも咲夜から逃げることは不可能よ」


勝負は一瞬の稲光。電光石火の早業で咲夜はほたるの退路に割って入り、そのままがっしりとほたるに抱き着いた。


「……ちょ!?離せ!咲夜!」


「たいちょー!かくほしましたー!」


「ナイス咲夜。とりあえず敵前逃亡しようとした愚か者は縛っちゃっていいわよ」


「らじゃー」


「いやまて!……って、咲夜!?そんな鎖どっから出した!?」


咲夜はどこからともなく、世紀末モヒカンが愛用していそうな無骨な鎖を取り出していた。


「だってねぇー。ふつうの縄で縛られるより、こっちのほうがごつごつしててキモチいいだよー」


「なに言ってんだ!?」


「だからねぇ。ほたるちゃんもいっしょにキモチよくなろぉ」


「意味わかんないよ!?私、咲夜の言ってることの意味がまったくわかんないよ!?」


「すぐわかるよぉー」


「わかりたくなーーーーーーーーい!」


そんなこんなを私は端から、オレっちにはかんけねぇーし!的な感じで傍観していた。ヤンな感じ。とくに意味はないけど。


ま、いつも通りの展開ね。よくある。よくある。


ちなみに咲夜が鎖を常備しているのは本人いわく乙女の嗜み云々、そんな乙女は嫌だなとひそかに思ってるのは咲夜には秘密。


言ったら、なにされるかわからないしね。うん。


「しれーかんどの。対象の沈黙を確認しましたー」


「……うぅ」


どさっと鎖でぐるぐるにまきにされたほたるが床に転がされる。なんか泣いてた。


「泣くなんて情けないわよ、ほたる」


「つーん」


「あ、拗ねた」


「すずちゃんちがうよー。人ってね、あんまり気持ちいいと泣いちゃうんだよー」


「気持ち良いわけあるか!」


「……ほたる。言っとくけど、ここ教室よ?」


「すずはなに考えてるんだ!?」


「……ポっ」


「なんで顔赤らめてるんだ!?なに想像してるんだ!?この変態!へんたーい!」


「うぅ。ごめんなさい。変態でごめんなさい。本当にごめんなさい」


「なんでそこでネガティブになる!?そのまえに変態っていうのは認めるのか!?」


「ま、冗談はさておき(ケロリ)」


「さておきー」


「サティ大きい!」


「なんで、そこでボケた!?すず、それおもしろくないよ!?」


「うぅ。ごめんなさい。つまらなくてごめんなさい。本当にごめんなさい」


「嘘だよ!おもしろくないって嘘だから!今、実はちょっとクスリとしたから!だから、そんながっかりしないで、元気出して!」


「冗談はさておき(ケロリ)」


「ループ入った!?いい加減にしろ!」


「えーい」


「きゃ……!ちょっ!?咲夜ッ!く、鎖を引っ張るな!く、くいこむだろ!」


「ほたるのえっちー」


「ほたるちゃんのえっちー」


「あーもー!いい加減にしろッ!!つーか、さっさとこの鎖解け!馬鹿!」





「はぁ?意味わかんない。ここで、変態を放し飼いにしたら、私の身が危ないじゃない」


「……確かに」


一利あるような、ないような。


遡ることちょっと前。


気がつくと俺はお花畑にポツンと立っていた。目の前を流れるのは綺麗な川。どこからともなく聞こえてくる楽しげな笑い声。どうやら川を挟んで向こう側から聞こえてくるもののようだった。


あっちになにかあるのかな?


なにかに誘われるように俺は川の向こう側に行ってみたくなった。


だけど、見渡すかぎり、その川には橋がかかってはいない。これでは向こう岸には行けそうにない。


渡らないの?


不意に後ろから声をかけられた。振り返るとそこには薄汚れた白いワンピースを着た少女がぽつんと。


渡るもなにも、橋がないよ?


そう……あなたには、まだ見えないのね。


え?


私はいくから、あなたは早く帰ったほうがいいよ。


するりと少女は俺の脇を抜けていく。


ちょっと、ま――。


バキッ。


脳みそをガツンと揺らす衝撃で俺は現世に帰還した。りんしたいけん?なるものを体験してたっぽい。多分、あの川は三途の川と呼ばれるものだったのだろう。


そんなわけで、俺は気がついたら両手両足をガムテープでがんじがらめにされていたのでしたまる


うごきがとれませんのでしたまる


それを剥がして下さいと頼んだら見事に断られたのでしたまる


閑話及第。


「おい、変態」


「はい、なんでしょうか」


「あんた、やっぱり警察に突き出されるのは嫌よね?」


今だに勘違いされている。なんとかして誤解を解かねば。洒落にならないことになりそうだ。


「いや、あのですね。俺は実は――」


「勝手に発言すな」


バキッ。


もはやお約束。俺の発言権回復の兆しは一行に見えやしない。


「うぅ、すいません……」


「で?どうなの?警察沙汰は嫌よね?」


「……はい、警察は嫌です」


ぼかぁもう疲れたよ。こうなったら流されるだけ流されよう。


「まぁ、当然か。そこで変態、あんたに提案があるわ」


「提案ですか?」


「変態の返答次第では警察に突き出すのは勘弁してあげる。どう?この提案乗る?乗らない?」


「乗る、乗らないの前にその提案の内容は――」


「煩い」


バキッ。


「変態がそれを知る必要はないわ。変態はYesかNoかで答えればいいの」


横暴以外のなにものでもなかった。


「ちなみにNoという選択肢は私の折角の厚意を踏みにじったうえに唾を吐きかけるような真似になることは十分に理解してるわよね?もし、そんなことしたら変態の命の保証は出来ないわよ」


パトカーで搬送が霊柩車での搬送にかわると……あれ?Noって言っても警察に行かなくて済むんじゃないのか?いやまて、行かなくて済むけど、あらゆる意味で戻ってこれなくなるわ!


まあ、どのみち理不尽。


「わかった。その提案、乗らせていただきます」


「当然ね」


結局はこう答えるしかないわけです。


まあ、なるようにしかならないだろう。


「それじゃあ、変態はこれから私の奴隷ね」


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