表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/40

第10話《脈絡ないなんてのは、いつものこと》


「よく考えてみ。鈴郷さんだったら普通に「ちょっと食べさせて」ってな感じで頼めば、卵焼きの一つでも恵んでくれると思うぞ?」


基本的に鈴郷暁という女性はおおらか、というか、おおざっぱなのがクラスの認識だったりする。


「……確かに」


うんうんと納得する仁。仁も思い当たったようだ。


「だから、かすめ盗るのはやめい」


「わかった。そうと決まれば行くぞ!マッキー!ついてこい!」


バッと立ち上がり。バッと片腕を高々と掲げる仁。


「あ?なんで俺も?」


「俺に一人で暁ちゃんに話し掛けられる度胸があると思ったら大間違いだ!」


「このヘタレがッ!」





「……なるほどね。要約するとほたるは有松が学校辞めてちょっくら淋しいわけか」


ほたるが最近元気がないのはこういうわけだったそうな。


「いやーしかし、ほたるがまさか有松にぞっこんラブだぜ!イエーイ!だとは思わなかったわ」


意外というか、まったくの予想外な展開だった。


「ちょっ!?すず!?声大きいよ!」


「別にいいじゃない。本人いないし。周囲にバレたところでどうにもならないでしょ?」


「そ、そういう問題じゃないだろ……」


はあ、と頭を抱えて溜め息を吐き出すほたる。なんか、疲れた感じだった。


「とりあえず間怠っこしいことは嫌いだから、さっさと告白しなさい」


「……こ、告白!?」


耳まで真っ赤にしてあわてふためき始めたほたる。口パクパクであうあうな感じ。


ほたるにしてはなかなか珍しい反応だった。レアほたるだ。


「い、いいい、いや!まって!私はだな!そんな恋人云々じゃなくて!ただ……その……一緒にいたいだけっていうか……そのぉ……それが無理なら遠くから見てるだけでも、私は……」


あたふたとしたあげく、ほたるは俯き黙ってしまった。


「重傷ね」


「重傷だねー」


「ねえ、咲夜。この娘、どうしたらいいと思う?」


「そだねー。どうしよっかー?」


あははー、としてる咲夜。やっぱりなんかぽわぽわだ。


「とりあえず有松くんに薬でも漏って、無理矢理、既成事実つくっちゃったらー?」


「ちょっ!?咲夜!?なんか発言が過激じゃね!?」


笑顔でなんてこと言い出すんだこの娘は……。まあ、いつものことなんだけど。ノーマル咲夜。



「まあ、この問題はおいといて、今はとりあえず、おひる食べるわよ!作戦会議は放課後にやることにしましょう!」


ぶっちゃけ、おひるが食べたくてしょうがなかったので、無理矢理話題を変えた。別にあとから頑張ればいいし的な。今が楽しければいいし的な。


「作戦会議ー」


「さ、作戦会議って!なんの作戦会議だよ!?」


騒ぐほたるはガン無視。私は有松弁当に箸をたてた。


とりあえず卵焼きを一つ口に運ぶ。


「うまー」


カップラ味だった。あー、幸せ。


「ねぇ、ねぇ、すずちゃん、すずちゃん。私すずちゃんのお弁当食べてみたいなー」


「ふふふ、だめー。これは咲夜でも渡せないわー」


だらし無く緩みまくっている私の顔面。おひる食べている時はいつものことだった。





「撤退!」


「……は?」


席から立ち上がり、一、二、三歩目を踏み出したところで不意に仁は立ち止まってそう言った。


「いいから撤退だ!」


「……ちょ!?バカ!引っ張んな!」


有無を言えず俺は仁に何処へともなく引きずられていく。


「おい!急に撤退って、なんだよ!やっぱりヘタレか?ヘタレなんだろ!?三歩目を踏み出したところで固有スキルチキンハートが発動したんだろ!?」


「マッキーは聞こえなかったのか?」


「あ?なんの話しだ?」


「……はあ。しかたねーな。俺が耳が遠いマッキーのために今の会話をダイジェクティブにして説明してやる。心して聞けい」


ダイジェクティブってなんだよ。もしかしてダイジェストって言いたいのか?つーか、ダイジェストっていうのもあってるのか?俺は英語の成績悪いからわかんないよ?


「ねぇん、ねぇん、すずちゅわーん、すずちゅわーん。わぁたぁすぃ、すずちゅわーんのお・べ・ん・と・うーん食べてみたいわぁーん」


「は?ダレそれ?物凄く気持ち悪いんだけど」


「佐倉田のモノマネ」


「仁てめぇ!咲夜ちゃんのこと馬鹿にしてんだろ!?」


「そうかっかしなさんな」


「わかった。俺はかっかしない。やっぱ、わかんねぇ!とりあえず仁!てめぇはそこに正座だ!咲夜ちゃんのこと馬鹿にしたてめぇは今から俺がみっちり説教だ!わかったかボケコラ!」


「で、それを暁ちゃんは華麗にスルー。つまりだ。暁ちゃんの友達その一である佐倉田がお弁当をちょっと、ちょうだいといって断られている。なのに、いくら俺が前世で暁ちゃんのご主人様であったとはいえ、現世ではまだ、ただのクラスメートでしかない現状で、暁ちゃんに「へい!A・KA・TSU・KI!あなたのそのキュートでエキセントリックでファンタズマなお弁当をちょっちオレっちに恵んでくれYO!」と頼んだところで「はぁ?さかってる猿とかチョーキモいんですけどー」とかえされるだけだ。ゆえに撤退。おーけー?」


「おーけーじゃねーよ。人の話し無視して喋んなよ。つっこむとこ多すぎんだよ。つーか、んなこたどーでもいいから、さっさと正座しろっつーの!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ