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プロローグ

 少しだけ春の日差しが差し込む暗い部屋。


小さな鳥の鳴き声,1つの小さな寝息だけが聞こえる朝。


枕元の充電器が刺さったスマホはスリープを解除し,


『6時50分』を表示すると,


設定音量最大で騒音を発てながら震え始めた。


(朝…?かぁ…)


頭まですっぽり潜り込んだ布団の中から,


騒ぎ立てるスマホを手探りで探す。


春眠暁を覚えずとはよく言ったもので,


ホントこの時期は…


いや毎日だけど,どうしてもアラームに殺意を覚えてしまう。


スマホを見つけ,


布団の中に引きずり込みアラームを解除するとまた静な空間に元通り__


「朝だよっ!おっはよっ!」


勢いよく階段を駆け上がる足音,


激しく開け放たれたドアの前で1人の少女がそう叫ぶ。


「もうちょい大人しく起こしに来れないのかお前は…」


「なら自分でちゃんと起きてよっ」


(目覚まし止めて数秒なんだけど)


少しの不満にそんなことを思いながらゆったりと体を起こすと,


周りに溶け込むほど真っ黒な髪が頬をくすぐり,


柔らかく小さな透明感のある白い手が目に映る。


もう『慣れてしまった』光景だ。


「いつになっても『弟達』は世話がかかるなぁ」


「はいはい」


得意気に鼻を伸ばす俺の幼馴染_


親友の1人 天利(てんり) 小輝(さき)は一言で言うなら太陽だ。


肩くらいまでの少しクセのあるショートヘアーをリボンでポニーテールにまとめ,


身長160前後に主張のあるバスト,ヒップに細いウエスト,


人懐っこい顔に,人当たりの良い性格。


人を惹き付け,誰からにでも愛される…のだが,


小輝を太陽と言ったのはそんな在り来たりなことだけだからじゃない。


そんな小輝だからこそ,


自身にやたら変な芯が通っていることも災いして,


小輝は人の目を霞ませ,心の影を広げ,深く濃くする。


「先に降りてるから,早くおいでよっ」


「分かってるって」


布団から起き上がり『俺』は,


『女子』用の制服に手をかけ自分に…


自分達に起きたまだ数ヶ月前の寒い冬,


そして数週間前に起きた出来事が未だに脳裏を過る__


 突然強い発熱,吐き気,痛みと共に性別が変わるなんて,


そんな病気がこの世界にはある。


発症率が限りなく低くく,事例は少ないけど,


どんな人でも,何歳でも発症することはあるらしく,


有名な男性野球選手が別の球団の男性選手と結婚しただとか,


美人女優が人気女子アナと結婚しただとか,


どっかの国のお偉いさんが発症しただとか…


一度発症すれば元々の発症率が低いこともあり,


元の性別に戻る方法,戻す方法は『医学的,科学的』にはない。


そんな中でも絶対に発症しない人…


方法を解明した医学者は,


「発症した患者に共通しているのは『性行為』の経験がない」


と簡潔に言えばそう発表した。


「「発症したら可哀想」」


「「発症するかも知れないという恐怖に呑まれやってしまった」」


その事を上手く利用した性犯罪は増え,


「「お前やったことないだろ?だと思った!やれる顔してないもん!」」


「「君本当に男(女)?やっぱ信じられないな」」


学校,社会でのそういう『いじり』も増えてしまった…











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