#2 この世界について
智紀はシルミに指摘されて振り返る。すると背後にドローンが飛んでいた。
「おい、なんでここにこんなものがあるんだ。俺はこんなの持ってないぞ」
「えっ、あなたのものじゃないの?」
どうやら彼女のものではないらしい。ならこれは何なのか。頭を悩ましているとスマホに着信が来た。そこには
《初見です!》
とだけ書かれていた。よく実況者の配信を見るとコメント欄にちょくちょく出てくるこの文章。更に訳がわからなくなった。するとシルミが
「そういえばあのおじさん、召喚された人はその生活を『はいしん』されているとか言ってたけど…まさかこれのこと?」
「えっ何? 俺の私生活勝手に暴露されてるって訳? ふざけんな! さっさとぶっ壊してやる!」
そう言って近くにあった傘を手に持つと上から思いっきりまるで剣道でもしているかのように振り下ろした。だが、簡単にかわされてしまった。その後も攻撃し続けたが一向に当たる気配がない。逆に彼の体力が切れてしまった。
「何こいつ…地味に強すぎだろ… てか疲れて立ち話も…辛くなったからとりあえず…上がって…」
傘を杖の代わりにして、ものすごく疲れ切った声で言った。
「あっ、じゃあお邪魔しまーす」
そう言うと彼女は靴を脱がずに上がった。
|(そーいう文化圏なのねここは…)
彼には怒る体力もなかった。面倒だったが彼は靴を脱いだ。
自慢できることでもないかもしれないが部屋は結構きれいだ。散らかった本の中にあっち系の本が紛れ込んでることはない。異性には興味がなく彼女いない歴=年齢だし、性欲の欠片もない。
シルミは、ソファーで寝そべっていた。智紀は、空いていた椅子に腰掛けると大きいため息をついた。
「あのーとりあえずこの世界について教えてくれねーか?」
「あーはいはい、まずは王国についてなんだけど…」
とても長かったのでカットしたが要約するとこう言うことらしい。
《スルヴェニカ王国は魔王に支配されていて、その魔王の名は、『オンノー·イモーコ』と言うらしい。圧倒的に日本史に出てきそうな名前をしているこいつを倒すために俺が召喚された。ちなみにどこに召喚されるかはランダムらしいが彼女は感が良いらしくすぐに見つけられたらしい》
「てかなんでお前の服はそんな感じになってんだぁ?」
「あーこれ? この家が召喚されるより私のほうが先にここにいたか召喚したときの衝撃でふっ飛ばされちゃったってわけ」
「あのー、とりあえずあっちで着替えてくれません?」
智紀がそう言うとシルミは、はーいと言い向こうの部屋に行って着替え始めた。ドアを閉めずに…
「いーや閉めろよ!! てかおいっドローン! お前はそっちを写すな!」
彼は、そこらへんいあった布を急いでドローンに被せた。
彼女がドアを閉めてから彼はドローンについて調べることにした。と言ってもネットは使えないから目視で見るしかない。幸い彼は機械オタクなのでこういうのには詳しい。
見てみるとドローンにはカメラが付いていた。配信していると言うことは電波が飛んでいるはずだがスマホには圏外と表示されている。ちなみにこのスマホはフリーの電波には勝手に繋がるはずだ。
|(こいつの電波借りようと思ったがセキュリティー掛かってる時点で簡単にはいかないか…)
そう思いながらスマホの画面からドローンに目を移すと不思議な事があった。
|(こいつ、羽が全部同じ方向に回転している?)
普通ドローンは4枚羽で対角線上にペアになっていて各ペアが逆方向に回転している。もしも、全部同じ方向に回転していたらそもそも飛んでる訳がない。なら、この飛行物体は何なのか?詳しく調べるためにこのドローンっぽい飛行物体の動体を鷲掴みする。するとこいつから機械が発したような声がした。
「オイッ、ヤメロー」
はい?となりながらもデコピンしてみる。すると…
「イタッ! オイオマエヤサシクアツカエヤ! |(痛っ! おいお前優しく扱えや!)」
ドローンこと飛行物体が喋った… しかも口が悪い…