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お見舞いは…

フォルテは、副長室の前で、足を止める。

ノックをしようと、手を扉の前に上げた瞬間、中の話声が、聞こえてきた。


魔道具の、連絡機に連絡でも来たのだろう。


「なに‼︎目覚められたか!?今すぐいく‼︎」


あの穏和な副長とは、思えない声だった。


フォルテは、目覚めたと、聞いた瞬間に、総長を思い浮かべ、小さく安堵の息を吐いた。


その瞬間に、目の前の扉が開き、フォルテも、開けた副長も驚いた。


「お!?なんだ⁈君か…。今は忙しい。何か、用なら後にしてくれ…」


副長は、そう言い残し、フォルテの返事も待たずに、スタスタと…いや、もう走っている勢いで、廊下を進んでいった。


フォルテは、あの人のいい老婆。そう、か弱い老婆なのだ、無理をした事で、体に負担がかかった事は、容易に想像でき、とても心配していた。その為、副長の後を追った。


もしかしたら、偶然にでも、姿が見れたり、状態がわかるのではないかと、思ったからだ。


なぜか皆、総長室の存在は知っていても、場所はあやふやで、いつも迷ってしまう。


用事と、許可が無いと、行けない部屋だそうだ。

なんらかの、魔道具が使われているのだろう…。


だから、副長の後を追わなければ、総長室を訪れることが、できないのだ。






しばらく行くと、副長が、一つの部屋の前で止まった。


その部屋は、絶対に、総長室では無い部屋だった。



フォルテは、第3騎士だ。

王宮の警備に着く事も、稀にある為、

王宮内の間取り、誰の部屋であるかや、なんの目的の部屋であるかは、全て頭に入っている。


余り必要性のない、魔導師塔は、粗方しか入っていなかったが…。


今、副長が入ろうとしている部屋は、

第3の姫の部屋だ。


病弱で、隠されるように育てられた姫。

フォルテは、数年前に一度だけ、家族の元を訪れていた、姫を警備していた場所から、遠目に見た事があった。


妖精かのように、儚く、美しい姫であることは、遠目からでも、伺えた。


そんな姫の部屋に、副長は、


「ああ…総長様…。私がわかりますか!?」


と、声を上げながら入っていった…。


早朝の人通りの無い時間とは言え、無用心だ…。


だがしかし、それどころではないほど、心配していたのだろう…。


フォルテは、その言葉から、隠されるように育った姫が、何故隠されて居たかを理解し、総長が、ずっとフードをかぶっている事や、人知れず、仕事をしている理由も、関係しているのだろうと思い当たる。


フォルテの中で、総長は、第3の姫グランマーレであるのではないかという、考察がなされ、ほぼ確定した。


部屋より、少し離れた場所で、観察していれば、侍女だろうか、数名の女性のすすり泣く、泣き声も聞こえてきた。


「あれほど美しかった、お肌が…、申し訳ありません…。御御足が…お手が…。おーいおいおい、おーいおいおい…。」

少し年配の女性の声で、嘆き悲しむ声がする。


「仕方ないわ。どうせ、人前に出ることもないし、結婚もしないのだし、傷があってもなくても、変わらないでしょう。そんなに泣かないで…」


若い声は、悲しむ女性を励ましている。

推測では、若い声は、第3の姫だろうと、フォルテは考えた。


「傷は痛みませんか⁈私が変われるなら…どれだけいいか…」

悲痛な声で副長は、そう語る。


「まあ、再生の泉にでも、行ければ、治るかもしれないけど、かも知れないってだけで、どこにあるか分からない泉を探しには行けないもの。

それより、早く結界の補修をしないと…。そちらの方が心配だわ。

そう言えば、西で、戦っていた、騎士達は、無事だった⁈」


「はい。みな無事に帰還して、結界や、火の玉について、語っていますが…。貴方様の犠牲も知らずに、わいわいと楽しむ様子に、腹が立って仕方ありません。」

悔しそうに言う、副長に、姫は、自分の事はどうでもいいかのように、呟いた。


「そう…間に合ったのね…!みんな無事なら、よかった…。」



フォルテは、この姫に、庇護欲を掻き立てられた。


うら若き姫で、あるにも関わらず、自分を犠牲にして、国を守り、結界を毎晩毎晩補修し、誰かに認めてもらうわけでもなく、王族でありながら、ひっそりと暮らし、楽しみも、何もないだろう、王宮内で、出かける事もなく、人のためだけに、暮らす姫。


しかも、我が身を犠牲に、騎士たちを助け、自分の傷より他人を心配している、心優しい姫。


ひっそりと、暮しているとは、いえ、王族であるのに、見たところ、充分な護衛すら無い。


騎士のフォルテの庇護欲は、働かずにはいられない。


『私ぐらいは…。あなたを護ります。』


フォルテは、第3姫の部屋に、そのまま入って行った。

そして、その場に膝まづき、大声を上げた。


「失礼します。騎士フォルテと申します。グランマーレ様。あなたに忠誠を誓いたく参りました。」




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