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泉の祠

『グランマーレ様の為の薬が手に入る。と思えば、この先にどんな苦労があろうと関係ない。


もしこれで、命を落とそうとも、構わない!』


フォルテは、そう思い何のためならいもなく、洞窟の中に、急に出現した、神秘的な泉の中に飛び込んだ。



『泉の中は、なんとも神秘的な空間で、生き物は一匹たりとも見当たらないのに、水草がお生い茂り気泡が、ヒラヒラ舞う、蝶のようにさまよっていた。


太陽の光がないこの泉に、光が差し込み、反射しているのはなぜか…。』


水の圧力で聴覚が失われているなかで、視覚だけが、神秘的空間を楽しむべく、忙しなく動いていた。


透き通る透明度の高い水は、泉の底まで簡単に見渡せる。言われた祠も容易に目についたが…


どれだけ潜ろうとも、祠に到達する気配すらない…。



フォルテは、体内の魔力を巡回させ、少しでも息が続くように、魔力操作していた。

しかし、魔物との戦いに、体力の消耗は、取り繕えない。



動かない体、気を抜けば浮かんでしまいそうになる体、息は苦しく、気を失いかける。


「フォルテ。ありがとう。」

「ねえ、フォルテ。」

「フォルテ」

「フォルテ」

「フォルテ」


グランマーレの、自分を呼ぶ顔が、いくつも脳裏に浮かび上がってくる。


その顔に、歯を食いしばり、意識を振り戻す。


『くっ…このままでは、息が続くうちに、あの祠に辿り着けないのでは…』

ふと、不安が過る…。


その瞬間、フォルテの体が、倦怠感に襲われた。


『⁈なんだ⁈』


何事かわからず、自分の手を見つめるフォルテ…。


得体の知れない、不安を抱き焦りだす。


するとまた、体に倦怠感を感じた。


『⁈なんだ、なんだ!?どうなって…』

急に辺りを見渡すが、特に何も無い。先程と変わらぬ、美しい風景が続いているだけだった…。


そんなフォルテの耳に、

泉の管理者である、あの大きな犬の、声が思い出された。

「泉の水には、嘘や、後悔、不安に反応して、あなたの生命力を吸い取ります。気をつけて…」


「!!」


フォルテは、目を閉じて、グランマーレの顔だけを思い浮かべた。

彼女の苦痛を取りのぞきたい。


『不安なんてない!薬を取るんだ!それだけを思え!あとは、何とでもなる!!薬さえ握っていれば、あの令嬢が、持ち帰ってくれると約束した!信じろ!自分を!誘拐されても、構わず、ここまで、案内してくれるようなお人好しだ!信じろ!

今は、ただただ、自分自身を信じろ!できないことは何も無い!』


フォルテは、自分を叱咤しながら、先程より早く泳ぎ出した。

魔力操作なんて、頭から吹き飛んでいた。


神秘的な周りの景色も、何もかも、目にはいらず、ただ一点、目的の祠だけを見据え、ただただ体を動かした。



祠にようやく辿り着き、手を伸ばす。


祠の屋根に捕まり、自身を固定し、片手で、祠の扉を開けば、中には、片手で充分持てる程の瓶が1本立っていた。


直感的にそれが、求めている万能薬だと、確信をもった。フォルテは、素早くその瓶を持つと、浮上する為に、体の向きを変えた。


浮力に任せて上がればいいが、そろそろ息が続かない。懸命に足と手を動かすが、意識は徐々に薄れて、視界は、もうわずかしかない…


体の動きが止まれば、沈みかける体に、叱咤する。


だが、気力だけでは、抗えるのにも、限界がある。


自分の意思とは関係無く、意識が持っていかれる…


その瞬間に出てきたのは、大好きなグランマーレの笑顔ではなく、心配に悲しむ顔だった。


フォルテその顔を見た瞬間に、胸がきしんだ。

このまま死んでも、自分に悔いはない。

有るとすれば、この薬を自分が、確実に届けれない事だが、だが、自分の死により、彼女にこんな顔をさせてしまうことは、悔いても悔やみきれない。


フォルテは、拳を握りしめる。

『動け私の体よ…。頼む、動いてくれ!』


そんなフォルテの耳に聞こえてきたのは、居るはずのない、グランマーレの声だった。


「フォルテ、あなたは魔力が、多過ぎる。

だから使えないのでは無く、出せないのよ。

例えば、水差しに大量に水が入っていたら、小さな子供に持てる⁈

無理よね。持とうとして倒して割ってしまうのが、せいぜい。

では、か弱いご令嬢なら⁈持てるかもしれないけれど、カップに注げるかしら⁈

では、力がある、男性が、やれば⁈でも力任せに注いでは、カップからは、水は溢れてしまいます。

そう。カップに、適切な傾きを与え、その

量に合わせた、傾きを与えられる侍女や、執事が、上手くカップにキッチリ入れられる。

あなたは、この水差しよ。魔力量があり過ぎるの。無理に出そうとすれば、体が壊れてしまうと本能でわかっているから、自制してしまうの。量に対しての適切な傾きと、出し方が分かれば、あなたは誰より強くなるわ。」


グランマーレに、魔力の出し方を教えてもらった時の言葉だ…。

『私は、魔力が多過ぎる?だから、使えないのではなく、出せない?

魔力量があり過ぎる?無理に出そうとすれば、体が壊れてしまう…本能でわかっているから…自制してしまう?量に対しての適切な傾きなんか、今は、もう必要ない!魔力が多いなら、吹き飛ばす勢いで、出せば…体なんか壊れたって、かまうもんか!私は、誰よりも強くなれるんだ!!!!!』


フォルテは、体がきしむのもかまわず、泉の底に向かい魔力を放出した、調整なんかない、ありったけを垂れ流すように、もうその後は…フォルテには、意識は無かった。





くわ!!っと、一気に肺に、求めてやまなかった、空気が入り、ゲホゲホとむせ上げてしまうが、体の防御反応と生体反応で、フォルテが意識して行っているわけでは無い。


『何やら声がした気がしたが、定かでもない。』


フォルテはとりあえず、両脇を抱えられ、泉から出された事は何となく分かった。

だが、それと同時に、もう考える事もできなくなった…。



意識が無くなった、フォルテは、第一王子の婚約者と、その兄で、第一王子の近衛騎士長と二人の従者に、第一王子の婚約者の実家に、転送陣にて連れ帰れられた。


そこでは、公爵家で、客用のベッドルームで、治癒師まで、付けて、手厚い看病を受けた。



魔力も、体力も底を尽きていたフォルテは、3日間生死を様よっていた。

しかし、4日目の朝、なんとか目覚めた。


その知らせを受けた、第一王子の婚約者が、フォルテの見舞いにきて、グランマーレ様への手土産だと、1つのぬいぐるみをくれた。


これを渡すときは、必ずグランマーレ様の名前を呼び、直接本人に、2人だけの時に渡す事を念押しするように、何度も言われた。


その後は、体調が戻り次第、従者に転送陣で、我が国の結界の手前、まで送ってもらうように言われた。


『至れり尽せりとは、この事か…感謝してもしきれない…』


全ての感謝を伝えきれないにしてもと、お礼を言えば、洞窟での魔石は、ちゃんともらったから大丈夫とだと、あっさり言われてしまう。


さらには、グランマーレ様が良くなったら、遊びに来てくれたら嬉しいと…。


どこにも出られない、グランマーレ様は、来ることはできないが、その気持ちだけでも伝える事を告げれば、意味ありげに、「大丈夫。これるようになる。」と言い切られた。


以前なら、「何も知らないくせに!」と腹だだしかっただろう言葉も、何故かすんなり、そうであればいいと、心に入って行った。


こうして、フォルテは、苦しみの旅を終えて、やっとグランマーレの元へ帰れるのだった。

これで2つの同時に更新は、終わりです。あとは、単品?でお楽しみください。


実は泉の中は、わたくしお部屋に…では、出てこないのです。サクッと潜って終わりです。笑

こちらを読んでくれた人だけが知る事実…?笑


ブックマークして下さった方ありがとうございます。こんなつたない作品を読んで頂けることに、感謝いたします。

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