8話 DSDマジやべぇけど、JKっていいよね?
「いや〜〜〜、草だわ〜!!草ァ!!」
やっべぇ超おもしろい!ダンジョン運営超楽しいわ!腹痛てぇ!!
ハーレム野郎を追い出した後、俺は自宅で死ぬほど笑った。
「あのハーレム野郎が!かっこわりぃな!HAHAッ!まあ?女の子を怒らせたのは悪かったと思うけど?でもハーレムするビッチだし?俺は魔王だし?尻ガールより和装黒髪な清潔感ある歳下がタイプだし?」
『黙れ変態』
「おっとアオダマよ、俺は尻ガールビッチに跨がれて喜ぶただの変態ではない。……ククッ!JKに乗られたい変態紳士だっ!!」
『さすが魔王サマ、常人では到底言えないセリフをいとも簡単に言ってのける』
「そこにシビれる」
『憧れませんけどね』
ちっ、ノリ悪いな。でもなんでアオダマはこのネタ知ってんだ?
『あの鬼畜仮面は誰ですか?』
「あぁ、あれは人を小馬鹿にする天才だ」
『……よくあんな者を創造できましたね』
「あいつの名前はDSDだ」
そう、ペケの巣大行進は侵入生の精神を試す試練だ。俺には人を馬鹿にするのは心苦しい(ホントだよ?)のでマジシャンを生み出した。
精神を試すなら、メンタリストがいいだろう。
メンタリスト?DAIGOだろう?
なんかドヤ顔ムカつくけど、言ってる事すごいよな。
あそうだ!DAIGOを闇堕ちさせたらどうなるんだろう?
D・S・D
最凶な外道マジシャン爆誕。それは発狂。優しい笑顔どこ行きました?そのガチな目付きどうしたんですか?えなんですかそのアホみたいな高笑いは。狂ったんですか?ドヤ顔何割増しですか?
顔面イッちゃってるので深めのフードと仮面をあげてみた。
「侵入生頭ハッスルの件、了解しました」
そう言い残して去っていった。仮面をつける際に見えたあの笑みは期待以上の仕事をしてくれると確信した。
要するに、この試練はコーラとポテチにめっちゃ合うつまみのようなものだ。
『本当の外道は外道を生み出す事ができる貴方ですよ……』
「ちなみにペケの巣大行進はDSDとの合作なんだ」
『類は友を呼ぶ、ですね』
さすがツッコミ専門、言葉が爪楊枝のように鋭いぜ。
「…………」
これから、どうしようか。
んー、ずっと考えていた事がある。
目覚めたら魔王になり、ダンジョンを作り、人に会った。
正直全てがだるいと思っていた。
ここに居ればなんでもできる。
望むものが手に入る環境で、怠惰に欲望のままに生きようと思っていた。
話し相手も俺なら創造できるだろう。でも、いつかネタが尽き退屈になる。なら、この夢のような世界で、己の欲望の為に努力してもいいかもしれない。
それに、俺の能力の限界を知りたい!だからって奢るつもりは無い。乗り掛かった船だ、魔王な俺の欲望を全力で満たそうではないか!新しいアイデアもあるからね!
何より、ダンジョンって面白い!燃えてきた!!
「俺ァ!新世界の王になる!!」
『すでに魔王じゃないですか……』
「ていうわけで...」
『いや、どういうわけで?』
……アオダマはまだ思考を読んでないのか。あーあ、せっかく慣れないことしようとしたのになー。そもそも俺が努力するって思ったの、聞かれなくて良かったかもしれな...
『いや、読んでますよ。ダンジョン制作ファイトー』
「あぁぁあん!?ガッッッテム!!」
……しばらく不貞寝する事にした。
─────
5つの王が集まるアルム王国、王城の一角で、非公式ながらダンジョンの対策会議が行われていた。
大きな円卓には各王と側近、騎士団や貴族の重鎮達がかなり真剣な表情をしていた。
「え〜、私はアルム王国首都冒険者ギルド長をしてるハスクと申します。所謂ダンジョンについて、情報が集まったので報告したいと思います」
ハスクは手元の資料をめくり、生唾を飲み込んだ。語るはダンジョンの試練について、その概要と対策だ。
「最初の試練は石像に囲まれた部屋に出ます。出入口は塞がれ、魔法は使えず、足場が不安定になりますが、石像の動きが止むと先へ進めます」
「「「……は?」」」
「……恐怖心を煽る試練となっています、殺傷性はありません」
誰もがどういう事だ?という顔をしている。すると、へドン国王が立ち上がった。
「いやいや、試練といったよな?つまりその趣旨はなんなのだ?呪いの類いではないのか?」
「いえ、そのような術式はないと思われます。ダンジョンへ突入したチームから一致した情報です」
「確かなんだろうな?」
「はい。我がギルドの冒険者とアルム王国騎士団の情報をまとめたものです」
「……信じ難いが、そういうものだと話を続けよう」
ハ ス ク は 胃 が 痛 く な っ て き た!
「ありがとうございます。次は休憩所についてです」
「ん?ダンジョンに休憩所だと!?」
「はい、ふざけた話ですがトイレがあります。」
「トイレがあるダンジョンか……だがダンジョンだろ?トイレでする必要があるのか?」
「はい、トイレ以外でしたらダンジョンの外に飛ばされます」
「なら、漏らせば脱出することができるわけか……」
「……いえ、小なら強制脱出で済みますが、大だと取り返しがつかなくなります」
「なんだと!?もしや、殺されてしまったのか!?」
「いえ、世界中のどこかにランダムで強制転移されます。……汚物が額の上に置かれた状態で」
「「「…………は?」」」
ハ ス ク は 胃 が と て も 痛 く な っ て き た!!
「次の試練ですが、迷路です。入口には《ペケの巣大行進》と書かれてあります。枝分かれする構造になっており、正攻法で進むと攻略できません。しかし、これも殺傷性はありません」
「殺傷性のないダンジョンか……もう何も言わん」
「はい。少し進むと落とし穴があり、その先にモンスターがいます」
「モンスターか!やっとダンジョンらしくなってきたな!」
その時、一人の騎士が勢いよく立ち上がった。頭を抱えながら、震える身体を抱きしめながら叫んだ。
「あぁぁぁあああああ!!!ダメだ!アイツは!絶対にダメだ!!俺は!俺はァァァアアア!!!俺は悪くないんだ!嘘を言われたんだ!俺は嫌われてない俺は必要とされてなんか……っ!!」
騎士は大きな体を丸くして泣きながら飛び出して行った。しかし、ハスクは平然として話を続ける。
「しかし、戦うことはありません。襲いかかれば立ち直れないほどの心の傷を負いダンジョンの外へ強制転移させられます」
「お、おいギルド長よ、ちょっと待ってくれ。あの騎士は……それとあんな反応をよく無視できたな」
「はい?あぁ、あのダンジョンであのモンスターに合った人はみんなそんな感じなので慣れました」
「「「…………」」」
ハ ス ク は 胃 が と っ っ て も 痛 く な っ て き た!!
「……そのモンスターとは」
「かなりの知能を持っています。そして、そのモンスターと遭遇した者は口を揃えて報告しました。『あいつは生かしておけない。絶対に絶対に殺すべきだ。人類のラスボスだ。誰か殺してくれ』と。しかし、話を聞いた限りでは害はないので……討伐しに行くにも、挑戦した者が手練で戦意喪失しているので、向かう者がおらず……」
「そんな事が……いや、あれをみたら、馬鹿にできないな」
「「「………」」」
「先に進むにはどうしたらいいんだ?」
「落とし穴の上の普通では気がつかない位置に小さなボタンがあり、それを押してから落とし穴に入り、そのモンスターの言うことに耳を傾けず、素通りする事ができれば進める事ができるそうです」
「なぜ、そんな事がわかったんだ?」
「そのモンスターがなんかつまらないからと、攻略法を冒険者に教えたそうです。ただ、その冒険者は『絶対に無理ゲーだ』と言っていました。」
「…………」
「……その先に進めた者はこの半年間、誰ひとりおらず、情報はありません」
前例にないダンジョンの出現方、意味不明な詳細、強烈な胃痛、そして前代未聞の沈黙がこの場を支配していた。