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想像世界~カンメルトの冒険~  作者: 律
初めまして? 私の相棒!「ウィルレッド」
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右翼の森

 日が沈み、暗い夜がやって来た。

 フィアンロの言う通り、西へ西へと歩いて行くと、気味の悪い森にたどり着いた。

「ここみたいだね、右翼の森っていうのは。」

目の前に広がる森は全ての生物を飲み込んでしまいそうな暗闇の広がる森だった。

「キュニ!」

 キュニスケは森に突進していったが、ゴウンといって、森の手前で見えない壁にぶつかった。

可愛そうなことに、キュニスケは頭を強打してしまい、痛そうにうなった。

 そんなキュニスケの頭をなでるエルは

「なるほど、この結界であらゆる生き物が通り抜けられないようにしているのか。」

と呟いた。

 エルは自分の上着の懐を漁ると、小さなビー玉のようなものが出てきた。

それは、中に燃え盛る炎を閉じ込めたような赤い宝石のネックレスだった。

実は、この宝石は『朱雀の宝』と呼ばれ、持っていれば巫女さんの結界を通り抜けることが出来るとのことで、フィアンロからもらっていた。

 エルはキュニスケを頭の上に乗せると、朱雀の宝を持って森に向かった。

結界にぶつかることもなく、エルとキュニスケは森の中へ入ることが出来た。


 やはり、森の中は本当に真っ暗だった。心なしか遠くから、近くからと、獣の唸り声があちこちなっていた。

 エルとキュニスケは森の中に入ってからはずっと無言で歩き続けた。流石にこんなに獣の声がする場所で音

を立てていたらすごい数の魔物に襲われてしまう、そんなことは分かっているようだった。

 しばらく歩いていると、自分たちが今どこにいるのかがわからなくなってきた。でも、引き返そうにも前後ろもわからない暗闇で戻れるわけがない、それにウィルレッドも見つけなくてはならないため、ただただ進むしかなかった。


 そうやって歩き続けていると、エルはだんだん体力を失ってきた。めまいが襲ってきて、エルはふらふらだった。

「キュニ・・・・?」

キュニスケは頭の上からエルの顔を覗うと、エルは、

「キュニスケ、大丈夫だよ。」

とずっといい続けていた。

「キュニ~。」

突然キュニスケが何かを呼ぶように声を出し始めた。

「?キュニスケ?だめだよ、シー。」

「キュニ~!キュニ~!」

「キュニスケ、お願い、やめて!」

エルは突然叫び始めたキュニスケに動揺した。そんな時だった。

ガサ・・・ガサ・・・ガサ・・・。

 エル達の横から、足音が聞こえてきた。

もしかしたら魔物が近づいてきたのかもしれない、エルはそう思った。

音がドンドン大きくなっていき、何かがエル達にドンドン近づいてきた。

 終わりだ。

エルがそう思った時だった。


「へぇ、こんなところに人が来るなんてなぁ。」

 これは、魔物の声ではなく、明らかに人の声だった。

突然、エル達の目の前に人が現れた。

どうやら、木の上を移動してきて、木の上からエル達の前に降りてきたようだった。

 エルはジッとそいつの姿を見つめようとしたが、見えるのは、ギラリと銀色に光る何かだけ。

「お前達は来たばっかなのか?なら、見えないよな。今、明るくしてやる。」

 そいつはそう言ったと思えば、空中に複数の人魂のような炎が現れた。

急に差し込んだ光に驚いて目をつぶり、ゆっくりと目を開いた。

 目の前には、臙脂(えんじ)色の髪を一つに結い、朱色の裾の短い着流しのようなものの上に灰色の半袖コートをはおい、抹茶色の腰巻を付け、下半身は黒いズボンに深藍(しんらん)色のブーツを履いていた。

そして、腰には黒い片刃の剣を下げていた。

 そんな姿を見たエルは、

「あ、あなたが、ウィルレッド・アレロン?」

「ああ、そうだ。」

 エルはウィルレッドの姿を見てひどく驚いた。特に顔。なぜなら彼は15年間ここにいるとフィアンロは言っていたため、もうおっさんかおばさんなのだろうと思っていたが、その彼の現在の姿を見て見れば、エルの2、3歳ぐらいしか変わらない青年の姿だったのだ。

 エルが呆然と見ていると、ウィルレッドは

「お前はの名を当ててやるよ。エル・アイリッシュ、違うか。」

と言った。

 そんなウィルレッドにエルはビクッとして、どうしてわかったんだ?エスパーなのか?と思っていた。

無理はないとは思う。苗字であるアイリッシュだけでなく、エルと言う名前も見事に当ててきたのだ。

「む、人違いだったか?」

「いや、あってる。」

 ウィルレッドはずっと無表情だった。何を思って何を考えているのかわからないはずなのに、エルにはウィルレッドが嬉しそうにしているのがわかった。何だか怖くなってきた。

「ずっと待っていたよ、エル。」

「??」

ウィルレッドはまるでエルに会ったことがあるようにそう言った。

「あの~、どこかで会ったっけ?」

エルがそう聞くと、ウィルレッドは無表情のまま

「は?」

とこぼした。顔面に感情を込めてほしい、エルはそう思った。

「あ~、なんだ、そういうことな。」

 ウィルレッドは無表情のままそう呟いた。

「そういうことって?」

エルがそう問いてはウィルレッドは

「いや、こっちの話だ。気にするな。」

と無表情で言った。

 ここで彼について分かったことは一つ。こいつ、表情筋がピクリとも動かないのだ。

「む、気おつけろエル。」

突然、彼はエルに気おつけろと言ってきた。エルは何言ってんだこいつとか思ったが、

「ギュルルル!」

といううなり声がエルの頭上から聞こえた。

 キュニスケがうなり声をあげている。外敵を威嚇しているのだ。

間違いない。

エル達の元に何かが近づいてきている。

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