トリノ地方上陸!
「さ、着いたぞ!」
漁師は陸に船を近づけると、エルは船から陸へ降りた。
周りを見渡してみると、施設っぽい建物が複数、海辺には船着き場が並び、大きな船が並ぶ。
「ここがトリノ地方『頭の港』だ。俺はこれから漁をするから、もうお前を乗せには来れないぜ。次に海を渡るなら定期船でも乗るんだな。それじゃ、健闘を祈るぜ。」
船は陸から離れ、海へと消えていった。エルは船に手を振ると、陸に向き直った。
「・・・来たはいいけど、これからどうしようか。」
エルがそうつぶやくと、エルの荷物がもぞもぞと動いた。大きめの巾着袋を開けると、中からは白いフワフワが動いていた。
「・・・・・・キュニスケ?」
エルがそう呼ぶと、白いフワフワは巾着袋から飛び出して「キュニッ!」と鳴いて出てきた。
「ついてきちゃったのキュニスケ?」
「キュニ!」
「ダメじゃん。」
「キュゥゥ。」
「おうちに帰れないよ?いいの?」
「キュニキュニ!」
「もう来ちゃったし、しょうがないかぁ。」
エルはキュニスケを頭の上に乗せると、周りを見渡し始めた。
「とりあえず、カンメルトの英雄たちの手がかりをつかまなきゃな。一番いいのは、人に聞くことかな。」
エルは建物の近くにいた人に走っていって「すいませーん」と声をかけると、その人はエルの声に気づき、こちらに振り向く。
その人に自分がカンメルトの英雄であること、カンメルトの英雄を探して旅をしていること、を話した。
「・・・という訳で、なにか知っていることはありますか?」
とエルが言うと、その人は
「はははははは!」
と笑った。
「君、そんな年にまでなってごっこ遊びとかやってんの?」
「ごっこ遊びじゃないです。」
「またまた~、もう、おじちゃんはお仕事が忙しいから、別の人に遊んでもらいなさい!」
と言って、へらへらと笑いながらその場を立ち去っていった。
エルは困った。すると、後ろから女の人の声が聞こえた。エルが後ろを振り向くと、どうやら自分に用があるようだ。エルは女の人の元へ行く。
「あなた、カンメルトの英雄なの?」
「はい。」
「名前は?」
「エル・アイリッシュです。」
「アイリッシュ・・・・、リトル地方の方ね。」
「はい、そこから来たのですが・・・、なぜわかるのですか。」
「アイリッシュはリトル地方のリトル街で祭られていたからね。正直信じられないけど、この辺にそれらしい人はいないわ。」
女の人は施設の壁に指を指すと、そこには羽を大きく広げた鳥型の何かが書いてあった。
「これは?」
「トリノ地方の地図よ。ここを見て。」
女は右側の翼の方を指さす。
「この辺に『カゲロウの里』ってところがあるの。そこはカゲロウ一族が暮らしているわ。あなたが本当にカンメルトの英雄だって言うならば・・・・、やるべきことはわかるわね?」
「はい、ありがとうございます。」
女の人が立ち去ると、エルはその地図をまじまじと見てから歩き出した。