神々の首都
そうしてエルは、北へ北へと突き進んでいった。途中、魔物も襲ってきたが、いつの間にかついてきていたキュニスケが全て何とかしてくれた。英雄なのに。
そうしているうちに、いかにも古い建物にたどり着いた。
「ここが神殿・・・なのか・・・・・?」
そうつぶやいたエルは、迷いもなく神殿の中心にたった。キュニスケはエルの頭の上に乗った。
すると、エルとキュニスケは光に包まれていった。
「あれ、なんでわた・・・・」
光に包まれたエルたちは空へと飛んでいった。
エルが目を覚ませば、キュニスケがキュニキュニと様子をうかがっていて、その向こうには神々しい都市が広がっていた。
エルは立ち上がる。
「どうして私、ここへの行き方わかったんだろう?」
エルはキョロキョロと見渡し、歩き始めた。
「ここ、初めて来たはず、なのにどうして、こんなにわかるんだろう?」
エルは迷わずすたすたと歩いて行く。
そうして、たどり着いたのは、都市の中心に立っていたでっかい塔にたどり着いた。
すると横から可愛らしいような声がした。
「あれあれ?あそこにいるアホそうな面をしているのはえるさんではないでしょうか?」
エルはさりげなく毒をはいてきた声に振り向くと、
「天使?」
と聞くと、天使は
「はい、そうですとも。最高神様が神の塔でお待ちです。どうぞこちらです。」
天使は神の塔に入ると、エルも続いてエルも入っていった。
「キュニスケ、元気ないなぁ。」
と、エルが言うと、天使がスイッチをカチカチいじりながら答えた。
「そのリトルドラゴン、魔物でしょう。人を襲わないとはいえ、魔物には変わらないので、神々のオーラがつらいのでしょう。安心してください。リトルドラゴンは魔物としての力は弱いので、死んだりしません。」
天使はスイッチをいじり終わると、今度は円盤の上に乗った。エルも円盤の上に乗る。
円盤はふわりと浮き上がった。
そして、フと止まると、別の声が聞こえた。
「おお、お主、エルではないか!?」
「・・・・あなたは?」
「ほう、最高神ベークじゃ。そして、こっちがセル。」
ベークの隣にいたセルと呼ばれた女はぺこりとお辞儀をした。
「では、さっそく話じゃ。」
ベークはおっほんと喉をならし、話を始めた。
「さて、エルよ。お主は自分が『カンメルトの英雄』と言うのを知っているか?」
「父さんと母さんが夜な夜な話してたから・・・。」
「知っているんじゃな。なぜ、お主がカンメルトの英雄として生まれたのかは知ってるか?
「いや、詳しくは。」
「知らないのじゃな?」
「はい。」
ベークはもう一度おっほんと喉を鳴らして話を続けた。
「では、話そう。お主はいずれ襲い掛かってくる恐ろしい『カゲ』からカンメルトの世界を守るために生まれた。しかしだ。お主一人ではそれは不可能じゃ。そこでお主にはまず、カンメルトの英雄たちを見つけてほしい。まずは、それだけじゃ。」
ベークの長い説明を聞いたエルは疑問に思ったことがあった。
「え?どうやって見分けるのですか?」
そんな疑問にベークはこう答えた。
「名を聞くのだ。彼らの名にはそれぞれの初代カンメルトの英雄の名がつけられている。英雄たちの名はそれぞれ『アレロン』、『セルク』、『シンデレラ』、『タルラス』、『ヴィランク』、『サーレルト』、『ガングリオン』、そしてお主の『アイリッシュ』だ。」
「ん?なんか聞いたことあるぞ?確か、えー、そうそう、父さんが、俺はガングリオンの一族なんだとか言ってたような・・・?」
とエルは言うと、
「それは、属性を現すのだ。君の父さんは闇属性の兵士だったのだよ。」
と、ベークは言う。
「父さんのこと、知ってるの?」
「我は神じゃ。君の父さんくらい知ってるのは、当然のこと。」
ベークはおっほんと喉を鳴らす。
「と、話がそれたが、こういうことじゃ。8人揃ったら、またここへ来て欲しい。」
「なんか、いきなりそう言われると、実感わかないなぁ。手紙も、怪しかったし。」
「その、怪しい手紙に従ってのこのこと、ここまで来たのは、どこのどいつだったかのう・・・。」
「そうそう、なんかおかしいんですよ。手紙のこともそうですし、なぜか、ここへの行き方もすでに行ったことがあるかのようにわかっていたし。」
「・・・・・昔のことを思い出せば、わかるぞ。」
「昔?」
「いや、気にするな。」
ベークは清らかな光をエルに浴びせた。すると、エルは空中に浮きあがり、消えかかった。
「な、なんですか!?これ!?」
「ああ、強制帰還じゃ。手間が省けるじゃろ?」
ベークはそういうと、エルに真剣なまなざしを向けた。
「エルよ、お主は一人ではない。故郷に戻れば親がいる。ここへ来ればわしがいる。そして、先へ進めばお主の仲間たちが待っている。忘れるでないぞ。」
エルはベークを静かに見つめながら、元の世界へ帰っていく。
「あ、そうそう、言い忘れておったが、お主の力を蘇ら・・・・・・」