ボクらの出会い
はじめまして。そいみるくと申します。恥ずかしながら初投稿です。右も左も分かりませんが、楽しい話が書けたらいいなと思います。(※ネタでBL風味になることがございますがコメディのうちです。)
赤く焦げ付く空、焼き払われた集落の上空を大きな銀色の鳥が飛んでいた。
「ひどい有様だな……。これじゃ、ここの人達は……。」
鳥は、いや、『天使』は灰になった屋敷の屋根に降り立つと、当たりを見渡してペラペラとファイルをまくりながら呟いた。
美しく腰まで伸びた銀色の髪の毛をツインテールにし、おへそが丸だしになっているくらいの、丈の短いセーラー服を思わせる制服に真っ白なプリーツスカートを身にまとった天使は憂鬱な表情を浮かべる。
「やっぱり。全部魔王の仕業なんだ。魂を回収するのが天使の役割なのに、魔王が根こそぎ奪うからちっとも仕事になんない!」
天使は大きなため息をついた。その瞬間「シュンッ!」と何かが飛んで来る音がして振り返った時には遅かった。鋭い矢が天使の翼を射抜いていた。
「え………?」
視界は途端にぼやけて、意識はなくなった。
ぱちり、と天使が目を開けるとそこは地下牢。動こうにも両手首が拘束されていて動かない。
「あの!誰か、誰か居ませんか!」
必死に声を張り上げると誰かの気配が近付いてきた。
「ようやくお目覚めなの?麻酔の量は加減したのだけれど…これだから呑気な天使は嫌なのよ。」
ツリ目が印象的なロングヘアーの赤毛の女性は呆れた表情で言いながら拘束を外してくれる。
「外してくれてありがとう…ございます…。あの!ここは何処なんですか?」
「此処?ここはね…」
にんまり、と笑う彼女の横顔を見た瞬間後悔した。
「魔王城よ♪」
蛇の様に長い舌をチロチロと出しながら彼女は答えた。
「それと、魔王様がアンタの目が覚めたら連れてこいって仰ってたから早くついてきてよね。グズは嫌いよ。」
「は、はい…」
すごすごと天使は蛇女の後をついて行った。
やはり、魔王は"王"なだけはある。悪趣味ではあるけど装飾華美な謁見の間に通されて思わずキョロキョロと周りを見渡してしまう。大きな玉座の前まで着くと
「魔王様。連れてまいりました。」
と蛇女が恭しく跪いた。すると腹の奥に響く様な声で
「待ちわびたぞ。」
と言いながら何も無い空間から漆黒の装束に身を包んだ魔王が現れた。
「おい、そこの天使。今すぐ堕天して俺の花嫁になれ。」
尊大な態度で威圧感たっぷりに魔王が言い放つ。天使は一瞬たじろいだ。
「うろたえても仕方ないぞ?ここにはお前の逃げ場はない。」
ふふん、とでも言いたげな口調に多少なりともイラついた天使は遂に口を開いた。
「あの、」
「ん?」
「ボクは、男ですーーー!!」
謁見の間に響く宣言。魔王の顔は薄ら笑いを浮かべたままピシッと固まってしまった。蛇女はそれを見てぷっと吹き出すとゲラゲラと笑っている。当の天使は顔を真っ赤に染め上げていた。まさしく阿鼻叫喚である。
「ねぇ、アンタさ、本当に男なワケ?だったら証拠、確かめてもいい?」
ひーひー言いながら蛇女が近付いてきた。何をされるか分からなかったけど証明できるなら、と天使は答える。
「ど、どうぞ…?」
「じゃあ、遠慮なく!」
蛇女は天使のスカートを思い切り、魔王にも見えるようにまくってみせた。
「うわぁぁぁ!?」
「~~~~っ!?」
そこには女性ではありえないふくらみがあった。魔王はそれを目の当たりにすると今度はサーっと青ざめた。
「ふーん、いわゆる『男の娘』ってヤツ?自分の意思?もしかして変態なの?」
「ち、違います!ボクを育ててくれたおばあ様の趣味で…。」
「なるほどね…ほら、魔王様。いつまで顔面蒼白にしてんのよ。」
蛇女は魔王に声をかける。
「……っ!あ、ああ…。」
部下からの注意でようやく魔王の意識は戻ったらしい。
「いやぁ笑わせて貰ったわ。気分いいから自己紹介してあげる。アタシはメア。アンタは?」
「エレナ、です…。」
「名前まで女の子みたいなのね。ほら、魔王様もシャンとする!」
「スピノザだ…。」
これが、ボクらの最初の出会いだった。
いかがでしたでしょうか?ペースは気まぐれなので遅いですが、徐々に更新したいと思います。