金策・熱闘・闘技祭2★
今回、この企画を考案したのは他でもない篝の為だった。
と言うのも篝には『一が俺に着いて行っているから』という受動的な理由こそあれ俺たちとを道を同じくするだけの動機付けがないのだ。
ならば、『理由が無いなら無いなりに作ればいいのさ!だから俺たちはふうぞ…ほげぇッ!!』…大学の悪友だが、毎回下ネタ話そうとすると殴られてるよな。不思議だ…っと、そうではなく。
一には俺と旅をしてみたいと言う興味が。
ジャックには『魔王の欠片』を集めると言う使命が。
アニは…何だろう…自惚れでないと良いけど惚れた弱み、だろうか。何にしろ梃子を使っても絶対に俺から離れなさそうな気がする。
で、唯が俺への復讐もとい嫌がらせをしたいから。
そして俺は単純に異世界をエンジョイしたいから。
何がともあれ全員が全員とも旅をする動機を持っている。
今回俺が狙ったのは篝に『仲間意識』ないし『連帯感』…要は『友情』を感じて貰ってそれを以ってパーティーで旅をする動機付けになれば良いと思ったからだ。
このところの…具体的には唯が加入してから篝は何処か気が抜けている。いや、存在が浮いているのだ。
それこそこのままでは篝がパーティーを抜けるのではないかと危惧する位には馴染めないでいる。
勿論、今回の作戦の一番の目的は金策であり俺たちの現状は金欠である事に変わりない。ただ、そんな思いから二人一組や、過程重視の体制にならざるを得なかったと言う側面があったのだ。
その上でーー。
件の篝を俺が相手をするとは思わなかったのがマジで誤算で凄く困った。
何だろう。パーティーメンバーとは言え人妻だし、話す事も無ければ微妙に接点もない。
考えろ、考えるんだ。そう自分を叱咤しながら手を動かし続ける。
そんなうちに出場手続きは完了した。いや、してしまった、が正しいか。
何分、話す事が無いだけあって作業だけが早く終わるのだ。既に本日やるべき行程は消化し尽くしているから非常に困ってしまう。
どうしたものだろうか。
「っと、すまない」
出場届けを提出し終え街を散策する事にしたのだが人混みで肩をぶつけてしまったらしい。活気ある街だからぶつかるのもままある事だが、思いの外強い衝撃にびっくりした。
「お前、前くらいちゃんと見ろよ…ん?」
燃えるような赤い短髪の男だった。年齢は俺と同じくらいか。意思の強そうな青い瞳は目に焼き付くようだった。
「何だ?俺に何か付いてるのか?」
赤髪の青年は首を振る。どうやら何か付いている訳ではないらしい。
「お前…魔素師か」
「ああ、良く分かったな」
ハールーンの例もある。多分天然物の魔素師は相手が魔素師だと分かるのだろうか。因みに俺には分からない。霊衣の恩恵で感知に補正はあるはずだがまだそこまでには至っていない。
「それも珍しい二属性持ちと見える。お前は闘技祭に出るのか?」
「勿論だ。となるとあんたも出場者ってか」
「ああ」
ふとした所作に肌で感じる所謂強キャラの威圧感。
デイブレイクのシュヴェルチェ程では無いがコイツを倒すには相当手が掛かるだろう。そんな事を思わせる濃厚な気配。
始めに片手間って言ったのは訂正だ。
この男は全力を尽くさないと勝てない。
いや、全力でも勝てるかは分からない。
…それが良い。
意図せず体を熱いものが駆けた。
人はそれをーー闘志と言う。
反射的に闘気を打つける。勿論、実際に何か起こるわけでは無いが気分的にそんな感じ。
するとーー。
「慌てるなよ、闘技祭にはまだ早い。けどお前みたいな血気盛んなヤツが居るってだけで出る甲斐があるってもんだ。ぶっ潰してやる」
赤髪の青年は口の端を吊り上げ狩人のような猛々しい笑みを浮かべてそう告げた。
「あんたこそ慌てるなよ。闘技祭はタッグマッチだ。連帯感持って行こうぜ?スタンドプレーは醜いぞ?」
売り言葉に買い言葉、反射的にに俺は言い放っていた。
一瞬、ほんの一瞬だけチリ…と肌を焦がすような殺気が青年から漏れ出す。
篝と連携しないとこれは勝てそうに無い。そんな事を直感した。
俺だけなら勝てる見込みは皆無だ。
「その減らず口、いつまで叩けるか見ものだな」
「そっちこそ俺と当たるまで負けるんじゃ無いぞ」
ふっ、と微笑を浮かべたそいつはーー。
「アステル、お前の鼻っぱしをへし折る男の名前だ。覚えておけ」
と言うと踵を返した。
「杉原清人、お前の傲慢さ叩き潰してやんよ」
果たして聞こえたのだろうか。
けれど…最後の一瞬、確かにあいつは笑っていた。
そんな気がする。
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一方その頃、比較的エンジョイ勢な二人組ことジャックと一はエンジョイ勢でありながら手配に悪戦苦闘していた。
「えーとそもそも屋台で売りに出すものって何やの?」
「アニと唯で手拭いでも売ろうって話らしいよ。だから食事でも無いし特別な設備は不要だね。ストックは結構あるらしいから取り敢えず場所を確保すれば良いんじゃ無いかなぁ?」
「ふーむ、成る程の」
「で、その申請とかどこに出すん?ワリャ組合とかありそうな場所とか見なかったんやけんど。…主催者とかって誰か分かるか?」
ねぇぇ、とジャックは首を振る。
「うーん、進まんの…」
エンジョイ勢は迷走を続けていた。




