イベントスキット6 不協和音
「へくちっ!」
その頃一達は淡々と探索を続けていた。
「にしても…こっちヤケに楽になったな。最初みたく腐乱死体も出ないし、アニの第二魔素のお陰で水浴びも出来るし却ってこれでは腕が鈍りそうだ」
そう言いつつ篝は言外に隣でヘラヘラと笑う男に責任を追及していた。
「まぁあの二人なら大体何とかするやろ。ホラ、範囲攻撃とか爆破とか。御誂え向きやろ?」
「馬鹿。清人の燃費は最低。そんな事したら今は供給がないから簡単にガス欠になる」
一はアニによってボコボコにされているがまるで反省の色が見えない。
楽観的な観測も出るあたりこの男は本当に懲りない…否、アホだった。
「にしても大分歩いたけんど、一向に出口が見当たらんの。物の怪の類が化かしてるんやないかって疑うわ」
確かに歩けど歩けど終わりが見えないこの状況下で進捗状況を把握する事は困難を極める上に日数も相当掛かっている。
清人達とは別ベクトルで精神的に来ていた。
清人達が一向に進めない詰み方とするならこちらは一向に終わりが見えないと言う嫌らしい詰み方をしていた。
加えて清人とジャックは共に過ごした時間が一番長くある程度互いの性格を承知した上で協調的に進行しているがこちらは真逆。
三人共全員一月すら共に過ごしてはいない、更に一組夫婦で女の子一人といった面子で既に関係が若干ではあるがギスギスし始めている。
パーティーにカップルないし夫婦がいると不味い場面が増えるのだ。
例えばモンスターに襲われた際に一は真っ先に篝を庇うだろう。となればアニが戦線で孤立する訳で実質の単騎を強いられる。
生活面でも、一はアニを気にして篝といちゃつく事が出来ず性欲を持て余す羽目になるし、アニと篝はお茶飲み友達ではあるがそこまで親密ではない故に性格を把握し切れず、篝がアニとの不倫を警戒し神経をすり減らす事になる。
唯一アニだけが気楽な立ち位置かと言えばそうでもない。
前述ようなシチュエーションは何度もあったし、清人の事が心配で気もそぞろ。
一に襲われまいかと一を警戒しており三者三様のギスギス感を演出していた。
やはり何やかんや清人がパーティの核だったのだ。
一は清人に着いて行こうと思ったから旅をしており、篝は一の同伴。アニは清人の向かう先に私も行きたいから、と結局の所清人が旅をするから着いてきた集まりがこのメンバーなのだ。
アニは本日何度目か分からないため息を吐く。
今回の件で清人とジャックの存在の大きさが浮き彫りになった。
あの二人のお気楽なやり取りが圧倒的に不足しているのだ。深刻なネタの供給不足である。
騒がしいメンバーが居るだけで心的負担は軽減されるもので、早く合流せねばと焦燥感を募らせる。しかし空回っては事だ。
アニはどうしようもない閉塞感に浸って黄昏ていた。
「…寧ろ清人とジャックのパーティの方がアタリの予感」
「何か言ったかの?」
「何でもない。それより可及的速やかに。くいっくりぃ」
こちらのパーティには最早笑い声は無かった。




