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RE:ACT1

《『魔王』■■■■■■■》


かつてこの世界は『魔王』アザ■■■によって支配されていた。

しかしそれに対し年若き『魔王』■■■■■■■は反旗を翻し少なくない被害を受けながらも『魔王』アザ■■■を打倒しその手に勝利をもぎ取った。


そう、勝利はしたのだ。


この世界を支配するには至らなかっただけで。


何故『魔王』■■■■■■■は世界を支配出来なかったのか。

それはーー世界を支配するよりも先に『魔王』■■■■■■■当人が死亡してしまったからである。



『魔王』■■■■■■■の傍らには頼れる仲間たちがいた。

護符使いの女に鉈使いの男、そして『魔王』■■■■■■■が想いを寄せるたった一人の可憐な少女。

この三人は幾多の戦場を超えた朋友だった。


だが、この三人の仲間が例に漏れず全員が全員『魔王』■■■■■■■を裏切るなど誰が想像出来ようか。


「ーーーー!!」


仲間達の苛烈な裏切りに『魔王』は嘆き、怒り、声を荒げた。

これが『魔王』の最期だった。


『魔王』は抗いようのない絶望の奔流に呑まれ誰にも救われる事無く犬死を遂げたのだ。


■■■■■■■■■■■■


《杉原清人》


真っ暗な空間に俺はいた。

『デイブレイク』とか言う負け戦闘を消化したところまでは覚えている。

何やら『魔王』の夢を見たのも覚えている。

けれど誓ってこんな場所に来た覚えは無い。

気絶中かと思ったが思考は驚く程明瞭でこれで気絶と誰かに言われても納得出来ないまである。


「…バグか?」


古今東西、ゲームの歴史はバグと共にあると言って良い。

デバッグが上手く言ってないとホイホイバグが増える。直した側からバグが増えた、なんて例もザラにある。

その中でも岩の中に入って動けなくなるバグや暗転バグはかなりメジャーな部類でーーしかもバグを踏み抜いたら即座に詰む事でも良く知られている。


「これ…もしかして俺詰んだ?」


だとしたらかなり不味い。

いつの間にか俺はやらかしたらしい。

何か無いかと辺りを見回して…。


見回した事を後悔することになる。


浮いているのだ。

人の眼球が、周辺の肉と共に。


「!!?」


深淵を覗く時深淵もまた私を覗いているとは誰の言葉だったか。

その目玉は俺を凝視していた。

暫く誰得な見つめ合いを続けていると目玉さん(仮称)が興味無さげにそっぽを向くと。


(冴えない顔だな。それでも俺の宿主か?)


「!!?」


頭の中に直接声が響いた。

それは人生初のテレパシーだった。

と、そうでは無く。


「もしかして…『魔王』なのか?」


(それ以外あるまい)


改めて『魔王』だと意識して目玉さんを見てみると…成る程、イケ面ならぬイケ目なのかもしれないとは思う。綺麗な灰色の目をしている。何処までも静かで暗澹とした闇をたたえた何処か寂しげな目だ。


さて困った。自己申告で『魔王』を肯定されてしまったがこの『魔王』はどちらなのだろうか。判別がつかない。

『魔王』アザ某か或いは『魔王』全伏せ字か。


(後者だ。それに俺は全伏せ字では無くて■■■■■■■だ)


「いや全伏せ字だろ」


(…こっちの世界の強制力では無いな。だとすると機密保護防壁か。どちらにせよ下らないな)


機密、と聞いて俺が殺された日のある言葉が脳裏をよぎった。

あれは確かヘカテの言で…。

『こればかりは機密ですから話せませんね』…これだ。

そしてその文脈の近くで丁度七文字の固有名詞が出たはずだ。

試しにカマをかけてみよう。


「…『魔王』イルクィンジェ?」


目玉さんからの反応は無い。

大外れだったようだと思い少し落胆すると目玉さん改め『魔王』は少し下を向いて。


(全く、『天使セラフィム』同士名前が安直に似てるのも考えものだな)


と、そんなテレパシーを送って来た。

酷いタイムラグだ。


「…念のためもう一度名乗ってはくれないか?」


(はぁ…懲りない奴だ。俺の名前はーー『魔王』■ルクィンジェだ)


…言いたいことや聞きたい事は沢山ある。だが、真っ先に声を大にして叫びたい事があった。

ふぅと息を吸い込み裂帛の気合いと共にーー。


「本当に安直に名前似過ぎじゃねぇか!!?」


伏せ字の意義とは一体何なのだろうか、小一時間問い詰めたくなった。


『魔王』はそんな俺を何か可哀想なものを見る目で見た。


俺は終始非常に後味の悪い感じを抱えながらも目を覚ました。

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