連理の鶴翼【前編】
やや短い一の過去編です。
文字数八万字突破!
小説家になろう勝手にランキングアクションにて日間9位!
これからもよろしくお願いします!
「あれはワリャの親友…『剣聖』の使ってたスキル、『連理の鶴翼』の劣化版や。…あーやっぱ、この話題は今でも呑み込めへんわ。一つ、語ってもええか?まぁ、あんさんは病み上がりやさかい、寝物語と思ってゆるりと聞けばええよ」
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《一凩》
ハザミの商業区はいつでも活気に溢れとった。
んで、天下の往来には天麩羅売りやら寿司屋等の飯屋の呼子が宣伝する声が聞こえてきての、道端を見れば雑草が力強く生えてて活力の限界突破みたいな感じだったんよ。持ち今でもそうやけどの。
「一、遅いぞ!」
「悪い悪い、梶の木刀こさえるのに時間掛かってもうた!」
ワリャには二人の親友にして幼馴染がいる。その一人が梶。
快活で、いつもニコニコしとって。クソみたいな人誑しで最初は極端に気に入らん奴やと思っとったけど、初めてワリャをダチだって言ってくれた奴や。そっからはいつも一緒にちゃんばらしたり兎に角つるんどった。
んで、もう一人な。
「一、本当は女を追いかけていたのだろう?正直に言え」
「堪忍な、篝。あんさんに睨まれたらワリャ玉が縮こまるさかい」
灯篝。まあ、梶の第一の被害者や。
篝は梶にベタ惚れでの。何回も『ばりすいとーよー』ってくっついとるのに梶が鈍感かますもんで不憫で不憫で…。
因みに篝は美少女やったんやけんど…ちゃんばらしたらめちゃくちゃ強いし口調も男勝りだったから友人はワリャ達しかおらんかった。
で、ワリャはワリャで今よりイキっとったわ。二人をくっつけようって躍起になったりな。
あ、あと篝と梶が木刀折る度に新しい木刀こさえたり、親父の砂鉄集めに付き合ったり、暑い中を見学したり。ま、そんな日々やったわ。
いんやぁ、でも今から考えてみると梶は人に愛されたってより街に愛されとったわ。
梶が街を歩けば八百屋も魚屋も天麩羅売りも気さくに話しにいっとったし、梶と篝が野菜やらを抱えて陽気に歩く様は余りにも似合い過ぎたんだわ。
んで、途中端折るけんど。
その二人、梶が『剣聖』。篝が『剣姫』に、それぞれ昇格してワリャも正式に木刀では無くて刀を打てる『鉄打ち』になったんよ。
あ、『鉄打ち』って名前弱そうとか思うたやろ?けんど、街の人間の魂は刀剣一つやさかい。十歳から持ち始める真剣は一生に一本。折れたら死んだのと同じや。
せやから『鉄打ち』はこの街の命を司ると言ってもえぇんよ。
まぁ、ワリャの仕事はえぇか。
十二歳位にゃ一角の武人に早替わりしとったわ。
実際、ワリャがあげた二振りの刀ーー梶に『永遠結』篝に『久遠護』あげたんやけど素人仕事でよくも強くあってくれたと思うわ。
でもワリャの最初の仕事だったし、二人が結ばれる事を願って全力で臨んだから嬉しかったわ。
永遠に久遠に、二人が結ばれ、護られますようにっての。洒落てるやろう?
…でもダメやった。
十二にもなるとこう…性別意識してまう位の年頃やさかい。その差が、溝を生んでしまった。要するに思春期ってやつや。
梶は人目を気にせずくっつきたがる篝を恥ずかしさから疎ましく思ってワリャとだけつるむようになって。
篝は美少女な事もあって嫌らしい目線を受けることも多くなっての…。その度にワリャが庇うもんだからワリャと篝が出来てるって話になって、篝は梶への想いを募らせまくるし、挙句の果てに梶にもワリャと篝が出来とるって勘違いされた。
そっからやっと暗黒時代が終わるんやけんど…梶も篝も変わってしもうた…。
梶はワリャと篝をくっつけようて躍起になるし、篝は…。
篝は梶とまた話せる事に舞い上がり過ぎての。
篝は暗黒時代のせいで恋心を拗らせ過ぎたのもあって歪みが顕著になったんや。
勘違いと独占欲。それが篝を狂わせた。
ワリャが梶の誤解を解いた頃にゃ出来あがっとったんや。




