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幻想旅団Brave and Pumpkin【UE】  作者: 睦月スバル
魔獣両断、月華勝負
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武器を装備しよう3

「せや、木刀」


刀から一気にランクダウンした感が否めない。しかし、案外悪くはないと感じる俺もいた。刃を意識する必要もなさそうだし杖から移行するのも楽だろうと考えたからだ。


「ワリャ特製の木刀が幾つかあるさかい。取り敢えず見るだけ見てみいひん?」



暫くして目の前に大量の木刀が並んだ。


「うわぁ…桃の木由来の木刀があるよ。神とは言えど桃は刺さるから遠慮したいねぇ」


色、形、材質、それぞれが微妙に違うものがズラリと目白押しで軽く目眩を覚えた。


だが、この世界で自分の命を預けるモノだから半端に選んではいられない。

試しに握るとーー重さを失念していた事も分かり一層木刀選びを難儀なものにしていた。


「うんうん。ワリャ、感覚で何となく選ぶよか合理的に不要をそぎ落としながら選ぶのが好きやさかい、じっくり選びな。あ、昼は出前でも頼もか」


じぃっと品定めする。

いっそ二刀流にしてやろうかと考えがよぎったがそんな事すれば一本でアップアップなので腕とタスクが死ぬ。

選ぶ木刀は一本で良い。


「……」


目が疲れる。ただでさえ茶色まみれなのでゲシュタルト崩壊を起こすレベルだ。

当然、真剣に見れば見る程目が辛い。


その時、銘が目に入った。

そう言えば今まで見た木刀にも銘があったか。一屋多々良(にのまえやたたら)一屋にのまえや猩々(しょうじょう)明神斬浮丸みょうじんきりうきまる…。


「名前プッシュ凄いな…どれどれ…」


見て見ると今度は難読漢字でゲシュタルト崩壊に陥り掛けーーそれを見つけた。


「……唯」


唯式咎流ゆいしきとがながし』。

漆塗りで艶のある黒茶色の木刀だ。

重さはやや軽めでリーチは長く線が細い。


「『唯式咎流ゆいしきとがながし』ね。よく分からないけど良いんじゃないかな?キミ自体線が細いしよく映えると思うよ」


唯と映える、か。


きっとこめかみが痛むのは目を酷使したからに違いない。多分、そうだ。


『唯式咎流』、咎を流すというのも中々に皮肉が利いている。

それならば何やら深くて、暗い面で結ばれているように思われる。言うならば囚人と鎖の関係にも似ているだろうか。


「おっ、決まったかどれどれ…。『唯式咎流』…あぁこれ近場のガキンチョをやむ終えずボコした時の詫び用に作って放置したやつや。つくりは他に比べて若干ちゃっちいけんどこれでええのん?」


「何か由来が凄く蛇足だけど…これが気に入った」


「まぁ、あんさん細いしあんまし重いのはスタイルに合わんか…そうそうスタイルなんやけど実践見たいし一回ワリャと手合わせせんか?」


承知!と勢い良く返事をして案内されるまま裏庭に向かう。


「あんさん、儀礼は知っとるか?」


「儀礼?」


「勝負前は合掌一礼。戦いの合図は『尋常に勝負』や。コレに則って勝負せんと卑怯者呼ばわりされた挙句天誅されるから覚えとき」


「天誅!?」


ジャックの口があんぐりと開くがそれを無視して言われた通り合掌、一礼。


そう言えば大男は鞘当てした時はやらなかった。勝負前の儀礼はあるが、酔っ払いの喧嘩に儀礼はないのだろうか。…あったとしても出来るかはわからないが。


「「尋常に勝負」」


「『水月』、抜刀」


「それがにのまえの刀か」


「ああ、『水月』。ワリャのハンドメイドで一点モノや」


一の抜刀した刀『水月』。

これもまた木刀だった。だが、木刀の割にはキチンと鞘があり、木刀自体の艶も金属光沢に劣ることはない。

木刀ではあるが刀という事なのだろう。流石異世界補正と言う他ない。努力次第では何でもアリだ。


「『唯式咎流ゆいしきとがながし』…行くぞ!」


速攻…ッ!

様子見で『単一加速シングル・アクセル』から肉薄、横薙ぎを行おうとしてーー。


「初手からスウェー!?」


肉薄の時点でスウェーが入る。

突然のスウェーに驚きはしたがスウェーは続く手が無ければバランスを自分から崩す悪手中の悪手。

ならば何かをされる前に無理やり組み付けば封殺。俺のワンサイドゲームで決まりだ。


だというのに、果たしてそれで良いのかと思う俺がいる。一に近付くのを恐れる自分が居る。


バックステップだ。

地面を蹴った、刹那ーー。


「やりおるの?」


横から声が聞こえた。


皮膚が粟立つのを感じて急いで先んじて弾かれる。


「隙を作るときゃ油断させたいときだけ。負けるついでに覚えとき?」


自分から弾かれたが、あそこで押し返していたらそのままボコボコにされていたと思うと冷や汗が止まらない。


「じゃあ、スキル使ってみよか『比翼の羽根』」


追撃が来るッ!

だが、大振りな一撃。かわすのも造作も無ければカウンターまで持っていける、そんなスキだらけの一撃だ。


隙だらけの攻撃は怖い。


いや違う。一撃ではない。


『四連撃』だ。


一撃、大袈裟に避けて無事。

二撃、恐らくスキルの効果だがー擦り傷で済んだ。

三撃、鞘がこめかみに食い込みんだ。

四撃、こめかみから入ったインパクトが脳を揺さぶる。


『比翼の羽根』の効果、それはーー。


「あー、やり過ぎた。初心者に攻撃回数を倍にするのは流石にやり過ぎやったわ」


ひとしきり一が、かか!と笑うと視界がボヤけてきて…。

俺は勝負に敗北し、気絶を余儀なくされた。





後になって思う。『比翼の羽根』ってヤケクソ性能のブッ壊れじゃないかと。

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