輝きをもう一度2
書けないなら書けるところを書くしかないじゃない!!(マミさん並感)
すみません…途中のイベントを端折りました。描写足りないところとか一と篝辺り全然触れてませんが許してクレメンス…。
俺たちはその日、邪神をを見たーー。
フウカの森には不穏な風が吹いていた。
木々はさざめき邪悪なる支配者の登場を予感させる。
今日は邪神降臨当日。ついにこの日が来てしまった。
「空が…裂けてる」
「時間だ…邪神が来るよっ!」
曇天の夜空を切り裂き、黄金が地上に降り注いだ。
突如空から降ってきた金色の粘液塊はウゾウゾと蠢くと弾け、辺りのものを見境なく侵食して行く。
悍ましい腐臭と冒涜的な見た目に総毛立ち、皮膚が粟立つ。
鼻腔を劈く悪臭に吐き気を催しながら思った。
俺たちはアレを、倒せるのかと。
とーー不意に少々前に見たばかりのデフォルメされた黒猫が俺を頭からガブリと咥え込んだ。
「ニャルりんはSAN値を実装してないからニャ。悪いけどそういうのは他の世界だけにしにゃよ?」
チハヤの能力『暴食』だった。
こみ上げる吐き気も収まり漸く戦意が戻って来る。
「クロ…チハヤ。助かった」
「勝ちにゃよ、清人」
そう言い残すとチハヤは『暴食』で背後の仲間たちの恐慌状態を貪ると颯爽と去って行った。出番はここまで、という事らしい。
そしてーー仲間達は思い思いの武器を手に戦闘の開始を待っていた。
ゾクリと体が震える。
武者震いってやつだろうか。
背後に立つ仲間の戦意が伝播したみたいに身体が火照って仕方ない。
「…勝つぞ!!」
そう宣言すると俺はまず無限収納を手に取った。
昨日、邪神と戦うと聞いて様々なアイテムを調達して来た。
敵の情報が少ないからと、ありとあらゆる場合を想定してアイテムを購入して軒並み無限収納へとブチ込んである。お陰で手元はスッカラカンだ。
…そして今回不定形の敵を想定して持ってきたアイテムは二つある。
一つはーー。
「ーー先ずは浸透圧だぁぁッ!!」
塩である。
これは皮膚が無く、毛も生えておらず水々しい敵に振りかけて使おうと考えていた物だ。酷く限定的だが、旅をする以上必要になるから多めに買っても困るものではない。
『跳躍』を駆使しながらヤード=サダジに満遍なく塩を振りかけていくと予想通りジワリと水が染み出してきた。心なしか萎んだようにも見える。
塩が有効だと分かるとイガラオに合図を送り『投擲』で塩の塊を投げて貰う。
そして、ヤード=サダジに着弾した塩の塊はーー『衝撃波判定』によって炸裂する。
「うっし、ワリャ達もやるかいな…。行こか篝!!」
「分かった」
騒々しい夜に厳かな調べが流れ出す。
二人が習得した神を鎮め、退かせる歌だ。
そして戦場は…まるで雪合戦のような様相を見せ始める。
動きの遅い邪神に対して俺たちは一方的に塩を炸裂させて水分を奪い去る外道戦術。だが、それが俺らしい。
「一人じゃ戦わない」
だって負けるから。
「どんな姑息な手も使う」
だって勝ちたいから。
「どんだけ失敗しても懲りてやらない」
だって俺は失敗を絶対にやらかすから。
「キヨト!塩が尽きるぞ!」
「…案外減りが早いな」
王の財宝ばりに投げつけて来た塩のだが、ついに底をついた。
邪神は目に見えて弱体化しているが直接的に生命維持には問題ないと見える。
がーーこうなる事を想定して第二のアイテムもちゃんと用意してある。
俺がこれまでの経験則で選んだ二つ目のアイテム、もとい魔法のお粉。それはーー。
「懲りずに粉末寒天じゃオラァ!!」
この世界で二度目の粉末寒天先輩だ。
元はと言えば唯が寒天でゼリーを自作した余りを『ヌン』に撒いたのが始まりだったのだが…電撃しか効かないクソ仕様をその時に知らなかった為、効果こそあれ使うのを敬遠していたのだ。
だが、その戒めを今解く!!
一段とノロマになった邪神に粉末寒天を振りかけてひたすら『第一魔素』で加熱していく。
「程よく固まってくれよ…!」
思い起こすのは『英雄転身鼓動疾走(ヒーロータイム・オーバードライブ』のバフ込みでも攻撃が通らずに弾かれた苦い記憶。
俺はそこから反省した。
前回は力が足りずに弾かれた。
だからーー今回はもっと力とバフを詰め込んで殴れば良い。実に簡単な理屈だ。
「行くぞ、アニ!」
「ん!」
「「『絆共鳴』!!」」
絆共鳴は互いの信頼度に応じてバフを付与するシステムだ。そして俺とアニは現在、少ないながらも互いの意識を共有している。
よって絆共鳴で付与されるバフの量はこのパーティ内では最多となる。
「はぁっ!!」
木々を足場にしながら『跳躍』を繰り返し、粉末寒天で固まった邪神に向かって斧を振り下ろす!
「『地龍の顎門』!!」
煤竹色の魔方陣から岩石が噴き出し、斧が軟体に打つかると同時に爆ぜていく。
のだがーーあまりにも手応えが無さすぎた。勿論その身体は固まっており、いなされた様子は微塵もない。
間違いなく一撃で沈んだ筈だ。
だが、内心はあり得ない。邪神討伐がこんな簡単な筈がないと、猜疑心で一杯だった。
弱体化とか調子乗ったけれど、果たしてこんなにも簡単に終わるものなのか?
攻め手はまだ『アフェクション』だって残っているし、全員余力を残しまくっている。
だが、何だ?
この…不安感は。
「キヨト、後ろだ!!」
「!?」
邪神は無傷で俺の背後で蠢いていた。
どころか鞭のようにしなる触手が俺へと迫っていた。
ーー『転移』。
そうだ俺は…ヤード=サダジに転移能力があるのを失念していた。
術後の硬直を余儀なくされた俺は呆気なく触手に真横から吹き飛ばされて地面を転がる。
口の端が切れたのか血の味がした。
「何か俺、毎度こうだよな…」
自嘲すると体が緑色に輝いた。
ジャックが『パンプキンヒール』を使ったらしい。
「よっと」
立ち上がると大斧を構える。
目の前には輝きを増していく黄金の粘液塊。
「さぁて第二ラウンドの開始と行こうかぁ!!」




