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とくべつになりたい1一2★

ヒロインと主人公のイラスト付き。

ヒロインのラスボス臭ェ…

時は変わり、何度目かのゴブリンの集落コロニー


「思ったんだけど、今回、かなり無茶してるよねぇ」


「誰のせいだ、誰の」


さて、大分遅くなったが異世界でのゴブリンの集落の扱いについてだが…。

結論、俺たちは害悪に他ならない。


順を辿ろう。

先ず、エンゲルの言った『貧民街の爆破』だが、爆破は飽くまで最終手段でしか無く、今までで実際に発動させたケースはごく稀であるとのこと。

だからと言って女の子な安全が確保されたわけでは無いがある程度は安心しても大丈夫と言う事らしい。

次に集落コロニー及び内部のゴブリンの殲滅だが、これは都市の防衛隊、有志の魔素師カルマン、ギルド会員を動員し、一度に最大火力を問答無用でブチ込む。

逃れたゴブリンも漏れなくその場で殲滅。


お分りいただけただろうか。


基本、俺の出る幕では無いのだ。

にも関わらず集落コロニーが大きくなり切ってない状態でゴブリンを刺激しようとするのはこれ以上ない害悪行為に他ならない。


本来、明らかに俺達がしゃしゃり出て良い幕ではないのだ。


チートと頭脳(ハメ技)で無双するよりずっと簡単なお仕事。


そもそも俺のチートはこれ以上ないくらいに良調整なのを留意すると何とも言えない気分に苛まれる。


しかし、ここに『魔王の欠片』の回収と女の子や『アラクニド』の問題が追加されてくると話が一気に変わる。

『魔王の欠片』は何としても先行入手したい。実際、女の子を優先したいところだがまたジャックが『竹馬進行反対っ!』とキレかねない。

ジャックは案内人としては中々に優秀だ。代金無しの文章代読人、観光地とかに詳しいし地理にも明るい。

流石になくすのは俺とて惜しい。

で、女の子と『アラクニド』。

俺が個人的に欲しているもの。

俺が生涯求め続けるべきもの。

『アラクニド』だって女の子だそうだ、ならば俺の欲するものであるべきだ。


故に、俺は俺の個人的な感情でゴブリンを殺す。


都市から離れた空気は湿っているが都市内よりかは幾分清浄に感じた。

しかし、ここは最早見慣れた地形、ゴブリンの集落コロニー

忌々しい小鬼の住処。


「っと、ハールーン。ちょっと不味いね。判別出来ないけど、多分来ちゃったんじゃないかな?」


それはゆっくりと、実にゆっくりとした歩調でこちらに向かって来た。

歩調から察せられる余裕は罠に掛かった獲物を見つけた捕食者の出す特有のもの。ゴブリンとは全く違う、この場に於いて異様な気配。

桃色の髪も甘い香りも、その全てが獲物を釣る為の餌でしかない。


「…『アラクニド』か」


「ようこそ…旅人さん」


「おいおい、ここはゴブリンの集落コロニーって話だったはずだけどな。いつの間にか乗っ取られてた訳だ」


その女の子ーー『アラクニド』は艶のある薄桃色の髪を片手で弄びながらクスクスと蠱惑的に微笑む。


「ここはもう私の巣穴。…旅人さん」


ーーあなたが私の『とくべつ』?


挿絵(By みてみん)


掻き鳴らすのは生命の危機を知らせる警報アラート


そして飛び退いても尚鼻先を掠める水球に背筋が引き攣る。


「…これを持ってから第二魔素セカンド・カルマの性能が上がった…みたい?」


『アラクニド』の手の中にあるのは青く染まった水晶の欠片。間違いない、『魔王の欠片』だ。

天にかざす様に手の中で弄ぶとそれを腰に着いたマルチポーチに収納する。

となれば、一つ。とても嬉しくもあり悲しくもある事が判明する訳だがーー。


『魔王の欠片』を摂取したから第一魔素ファースト・カルマとの親和性が高まっただけで、実際俺のチートは無いのではないか。

異世界、と聞いてチートってあるとばかり考えてしまった。


が、今はそんなことを考えて良い場合ではない。


「…一つ聞いて良いか?」


何かしらと首を傾げる。その顔は端整で、空虚だった。

普乳でどこか危うい雰囲気とあどけなさを併せ持つ文字通りの美少女。

しかし、絶対にこの場で聞かなければならない事がある。

息嗅ぎたいとか、友達から始めても、とか。ましてや嫁になって欲しいでもない。

俺が聞きたいのは、言いたいのはこんな事では断じて無い。


「他の女の子は、どうした?」


尋ねたのはゴブリンに囚われた女の子の安否。

それに答えたのは『アラクニド』ではなく、恒例のカボチャ頭。


「残念。漏れなく御臨終していらっしゃるようだね。ちょっと魂導いてくるよ」


「シリアスな空気でサラッとトンデモない台詞打ち込むなよ…反応に困る」


バハハーイ!と集落コロニーへ足早に去っていくジャックを見送りつつ俺は内心憤怒に塗れていた。例えーー相手が女の子でも。


「…ん。カボチャさんの言う通り。殺したよ。沢山、沢山殺した。でも仕方ない。間引かないと私は『とくべつ』になれない。私の『とくべつ』は見つからない。そう教わった」


悪びれる様子もなくただ淡々と事実を述べるアラクニドに薄ら寒いものを感じながらもやっぱり釈然としないようなムカムカしたものが胸に残っていた。

女の子が女の子を殺すなんてフェミニストとして許したくはない。

けれど目の前の女の子を殺せるか、と言えば絶対的にNO。俺は女の子が死ぬ場面など二度も見たくはないのだ。


ならーー。

非常に不本意な事ではあるが。


「教え云々よりももっと大切な事があるだろ…」


矯正する?

違う。俺が好きなのはありのままの女の子だ。それがいかに醜悪であれ俺が変質を促す真似を進んで行うのは烏滸がましいと言うものだ、浪漫が無い。


正義を示す?

あり得ない。これは正義ですらない。これは総じて我欲と呼ばれる本来唾棄すべきものだ。


俺は俺のエゴに殉じる。ただ、それだけ。これが正しい。善でも偽善でも、ましてや悪ですらない浅ましい俺の本質。


半ば八つ当たりじみた行動原理。


言葉で伝えられないこの感覚を言葉の代わりに直接拳で叩き込む。ただそれだけ。



だからーー。


「女の子が女の子を殺しちゃ駄目だろうがッ!!」

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