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幻想旅団Brave and Pumpkin【UE】  作者: 睦月スバル
敗れし青年の散華
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侵略の幻影3

《杉原清人》


俺の中で答えは出ている。

確かにこの世界は邪神の作った世界かもしれない。けれど、侵略を許容する免罪符になるかと言えばそれは否だ。


「……。神さまに反逆か」


神々に反逆を企てる物語は数あれど実を結ぶのはかなり少数に限られている。

辺りを見回すと、約一名胡散臭過ぎる浮浪者を除き全員が大切な仲間達。

ーー失くしたくない大切な居場所だ。


「どうしたぁ?若いの、いきなりおっちゃんの方を見てよぅ」


視線に真っ先に反応したのは胡散臭過ぎる浮浪者のイガラオだった。

流石に『六陽』の正規メンバーなだけあって気付くのが早い。


「…なぁ、イガラオは神様と共闘して侵略者になるか神様を敵に回して世界を守るか。どっちが良いと思う?」


「当然、おっちゃんなら共闘だな」


「理由を聞いても良いか?」


へいへいとやる気なく顎をしゃくるとーーイガラオは感情の消えた顔をした。


「要するに単純なリスクリターンの話だ。神を敵に回すリスクと神と顔つなぎして媚びる機会。天秤にかけるまでも無い。寧ろ前者がリスキー過ぎる。リターンもしょっぱい。なら、感情論を捨てるのが良い。活かす事を考えず、死なない事を考える奴はどんな場面でも生存率は高い」


確かにリスクリターンで言えば議論の余地が無い程に侵略者になる方が楽で、尚且つ地球は俺の故郷。

突っぱねるには難し過ぎる案件だ。

だが、それが=侵略に繋がるのは筋が通らない。


「それになぁ……『可哀想だから』これだけは絶対に行動原理にしちゃならねぇ訳よ。あ、これおっちゃんの経験則。結局は恩を仇で返されるのがオチだ、笑うのは常に相手だけ。おっちゃん達は得をしない仕組みになってんの」


『可哀想だから』か。

何となく地球のとあるアニメを彷彿とさせた。

拳銃に撃たれてボロボロになった猫擬きを助けたら先輩が死んだり友達が絶望したり自分が魔法少女になったりするあれだ。

そんな事が俺や仲間に降りかかるのであれば、俺はどうすれば良いのだろうか。

後悔をするか、泣き寝入りするか。


そうなりたく無いなら、今ならまだ舵取りは効く。侵略の一翼を担えば良い。


「……笑えないな」


全く、笑えない話だ。

そんな帰結しか無いならばどちらも願い下げだ。


「そう、往々にして世界はつまらない冗談(ブラックジョーク)みたいなもんさ。分かってるじゃねぇのよ。なぁ?」


そう言うとイガラオは乱暴に俺の頭をガシガシと撫でた。だが、次第に腕に力が抜け小刻みに震えるばかりになった。

微か視線をズラし、顔色を伺うとーー沈痛な面持ちの、いつもゲラゲラ笑っているイガラオからは想像もつかないようなそんな顔が現れる。


「……。俺もつまらない大人になっちまったなぁ……畜生」


か細く呟いた。


「こうはなるまい、つまらないなんて言語道断って肩肘張りながらぎりちょんセーフで生きたイガラオがこの有様だなんてな…不甲斐ねぇや」


「おっさんは…もしかして」


このおっさんも、かつてはヒーローに憧れていたのかもしれない。

英雄を目指して突っ走って、擦り切れたその末路。ーー俺の将来の姿、なのかもしれない。


「おっちゃん、若い頃は騎士だったんだ。ドラゴンぶっ倒して姫さま助けて結婚してウハウハってな、そんな事を考えてた。騎士ドリームって奴だ。あぁー懐っけぇなぁ。勿論正義感は人一倍でよ、不正は許さない!って具合で…周りからは冷笑されたもんさ」


俯きながらそんな事を言った。

それは額面通りの「懐っけぇ」、なんてものでは断じて無い。それは後悔だ。

選んでしまった事を「後」から「悔」む一人の哀れな男の哀愁だった。


「結果的に俺は可愛い嫁と結婚してーーカミさんを親友に殺された。自失になった俺は大罪系統セブンス・シリーズスキルを手に入れてその能力で自分のスキルを売って酒浸り。何の目的も無く生きてきてーー『デイブレイク』に拾われた。けど時たま思う訳だよ」



「ーー俺がずっと正義の味方を志していられたら。酒なんて飲まずに正義を執行する機械になれたなら、ってな。俺にはその力があったんだ。…でも俺はこんな所に転がり込んじまった」


「こんな所、じゃ無いだろ」


イガラオはそこを間違えている。


「俺たちは『Brave and pumpkin』だ。苦悩してながらも笑って、進み続ける。そんな旅団だ。良いんじゃねえの?機械ってのは気に食わないけど。今からでも正義、始めちゃ駄目なんて道理は無いしな」


「……体良く使い捨てられない保証ねぇくせに、勝手言ってらぁ」



「……若いのーーいや、キヨトだったか。お前さんはどっちを選ぶんだ?」


それならば既に決まっている。


「反逆するぞ。暴れ回る神様ってやつに」


イガラオは苦笑を浮かべると頬を掻いた。


「ま、流れからしてそうだと思ったさ。それでどうするよ。恩が仇が来たら」


勿論、そう言ったケースに対するカウンターは既に考えてある。


「そん時はおっさんに頼らせて貰うよ。酒とか俺のへそくりから捻出してる訳だし、役に立って貰うぞ」


「横暴なリーダーなこって。……だがその仕事、『曲芸』のイガラオが請け負った」


そう言うとーーイガラオは吹っ切れたように笑った。



「ーーっと、そう言えばキヨトに聞きたい事があったんだ忘れったわ。おっちゃん」


踵を返しかけた頃、そうイガラオは口を開いた。


「キヨトはーー大海の荒波に飲まれそうになったら、どうする?」


それは妙な問い掛けだった。

俺の持ち合わせている答えなんて一つしか無い、単純で簡単な質問。


だから。


「俺は空をーー全部背負って空を飛んで行く。荒波があるなら、荒波を悠々と上から見下ろしてやんよ」


そう答えた。

それを聞いてイガラオはーー。


「格好付けやがって、キヨト最高だなお前」


そう言うと手で自分の顔を覆い隠した。


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