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百七十話突破して字数が三十五万字とはたまげたなぁ…
「ん…ん?」
暗い洞窟の中ーー『アスター』で目を覚ました。
どうやら無事に脱出出来たらしい。
「あ、起きましたの!!」
「オルクィンジェ・レプリカか」
灰色のドリルロールが犬の尻尾よろしくブンブン振れている。
さて、何で俺は気絶したのだったか。
「あぁ、そうだ『ヌン』の自爆攻撃に巻き込まれたんだっけ」
そうだ『ヌン』と出会い頭に自爆されて今に至るんだったか。
がーーふと。
目年の先にゴスロリの隙間から僅かに覗く谷間があったが何故だろう。
全く何とも思わない。
これは明らかにおかしい。
俺は童貞で女の子がいればずっとそっちを無意識レベルで見てしまうようなレベルの重症だったはずだ。
それがこの調子だ。更に言えば何かとんでもなく不吉な映像が脳裏を掠め。
「うっ…おぇぇぇぇぇっ」
「いきなり吐かれましたの!!?」
知らぬ間に、俺は嘔吐していた。
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「それで、『ヌン』は自爆したけど『乱数破滅システム』への道は追加されたのか?」
「はい、オッケーですの。ちゃんと追加されていますわ」
あれから続々と目を覚まし、俺のゲロを見てはドン引きしていたのだが。
一人だけどうにも解せない反応をしていた。いや、違うか。
一と唯以外の全員がおかしかった。
ジャックは明らかに申し訳無さそうな顔をするし、篝は露骨に視線を合わせようとしない。
そして極め付けは…アニだ。
唯に対して警戒心を露わにしている。殺意が剥き出しと言って良い。
『ヌン』が自爆した後、気絶している間に何かあったようだ。
「ここですの」
オルクィンジェ・レプリカが足を止めるとその先に薄っすら光が灯っているのが見える。
その先を歩くと程なくしてお笑い番組の小道具みたいなあからさま過ぎる爆弾型の物体とそのスイッチが置いてあった。
「これが『乱数破滅システム』か」
『押せ』と書かれた張り紙ごと棺桶に詰め込む。普通は『押すな』、のはずなのだが。天邪鬼的に押したくなくなってしまう。
何がともあれ。
「ミッションコンプリートって、言って良いのかな」
だが、知らぬ間に変わっている仲間の雰囲気に俺はいまいち釈然としないものを感じていた。
多分原因はーー。
「あら、何か用かしら?」
悪戯っ子のように嗜虐的な笑みを浮かべる俺の幼馴染なのだろう。
そんな風に直感していた。
案内人の仕事柄、旅に同行出来ないオルクィンジェ・レプリカと別れて再び俺たちは旅路に戻る。
「ジャック、次はどこに行く?」
何気なくそう尋ねるとジャックは一層表情を暗くした。
どうしたのかと尋ねても何でもないの一点張りで。
仕方ないなと引くと途端にまた申し訳無さそうな顔をした。
「……。僕たちの次の目的地は…最も死に近い湖畔の村。『テルン』だよ」
「最も死に近い…?」
「うん。まぁコレは半ば洒落みたいなものだけどねぇ」
「まぁ、兎に角行ってみるか!」
俺たちの旅はまだまだ続く。
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《アニ》
「…高嶋…唯ッ!!」
アニは高嶋唯に飛びかかっていた。
その目は怒りに燃えて緋色の瞳は紅蓮に燃えている。
「あら、どうしたの?」
「どうしたもこうしたも無い。…皆んな動けなかった。でも、明らかにあの化け物程度の威圧で動けなくなるような面子じゃない。絶対に不自然。…違う、そもそもあの化け物自体が唯の仕込み。全部唯の茶番劇。違う?」
アニは身じろぎすら出来なかったのだ。周到に身体中に糸を巻きつけておいたにも関わらず。
意思一つあればどうとでも動ける状況下にあったのだ。ならば恐怖如きで動けなくなる道理が無い。
だが、意思を歪められたら話は別。
そんな芸当が出来るのは目の前の少女ーー高嶋唯以外にいなかった。
だから、これは唯の仕組んだ茶番劇だと断じたのだ。
そしてその理由は本人が既に口にしついる。
『いっそ…そうね。原型留めない位にぐちゃぐちゃして殺してしまえば良いんじゃない?』
「清人に…自発的に女の子を殺させる為にこんな芝居をした。辻褄は合う」
「さぁ?考え過ぎよ」
「答えてッッ!!」
アニの激情対し唯は感情の抜け落ちたような顔で一言だけ。
「貴方、このままだと確実に幸せになれないわよ」
そう言ったのだ。
いきなりの話の転換に面食らうアニだったが、話を逸らすなと言おうとしてーー。
「清人のこの記憶は消すわ。勿論他の面々も、だけど。貴女が余計な事を口にしたらーーうっかり思い出しちゃうかも?」
「!!?」
「精々甲斐甲斐しく清人を世話する事ね。清人は脆いから壊れるかもしれないし」
何処までも他人事な様子の唯はーー何処か態とらしさがあった。
本心を覆い隠し、意図を悟られまいとしているかのようだ。
「唯は一体何をーー」
「私は復讐者よ」
そしてーー二人は『アスター』の地下迷宮で目を覚ます。
唯にとって清人に女の子を殺させる事には二つの重要な意味があります。
一つ目はアニの為。
二つ目は清人の為。
やってることはクソが付く程鬼畜ですが、これもツンデレ(?)の範疇と言う…。




