見つけた4
今回の話は茶番であり、鬱や胸糞を過分に含みます。
耐性の無い方は読み飛ばしを推奨します。
『唯が全部悪い』とだけ念頭に置いて下されば。
あ、ブクマくれた兄貴ありがとナス!
励みになります!!
高嶋唯の固有スキル『不均衡外殻』。
その語源はクリフォトであり不均衡であり続ける力を表している。
このスキルの特異性の一つとしてスキルツリーというゲームじみた概念が搭載されている事が挙げられる。
その背景にはクリフォトを図式化したモデルの『邪悪の樹』がある。
これは逆三角形状の構造を有しており、悪徳が十個にも分岐する。
一方的に凄まじいリアリティーを伴う幻痛を与える拒絶。
一分間の絶対的な精神操作を可能にする醜態。
そして、今回唯が選択した残酷はーーーー。
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「貴女…貴女貴女貴女ッ!!何なのですかソレはッ!?」
残酷を唱えた瞬間、それは起きた。唯の腕が突如黒く染まり滑らかな肌が溶岩が冷えて固まったみたいなゴツゴツとした腕へと変化したのだ。
「さて、と。武器も要るかしら」
手から噴き出す赤熱した粒子を黒い腕で握ると粒子は武器へと変質するーー。
「見てくれだけの武器ッ!まやかし!幻想!そんなもの怖くも何ともーー」
「じゃあ、試してみる?」
ガクガクと震えながらどうにか視線を微かに上げると、そこにはサーベルの形を模した棒を握り不敵に笑う唯の姿が見えた。
喉奥が震える。無理だと、そう勘が告げているのだ。
俺はこの世界に来てから初めて武器を握った。未だに速力ゴリ押しで単純な『武器を扱う技術』だけで戦ったなら今までの強敵にだってボロボロに負ける自覚がある。
武器を扱う為の筋肉、武器を振るう為の心の強さ、効率的に動く為の姿勢の良さ。必要な要素なんて考えなくてもジャラジャラ出て来る。その位戦闘は難しい。
「小癪…なッ!!」
だが、現実は違かった。
あり得ない。
ーーどうして。
ーーーーどうしてあの状態で攻撃が当たらない!?
振り回された鉤爪は僅かに上体を逸らして躱し、奇襲気味に放たれた背中の羽根はあろう事か足場にされて攻撃の起点になっている。
これは夢か?現実なのか?
制服のスカートが微かに揺れる度に『エウレカ』は劣勢に追い込まれていた。
勝てる…のか?
「貴女ッ!!一体何をッ!!」
「残念だったわね。全部あんたの自業自得。もう絶対に勝ちは無いわ」
「何故、何故何故何故何故何故ッ!!奇襲は先回りされるッ!!逃げ場のない必中致命の攻撃の筈なのに…ッ」
「闇弱ね」
それは見下すでも、煽るでもなく諭すような声音だった。
「この世に絶対は無い。あるのは…そうね、必然かしら」
ボタンのかけ違いを正すように唯は指摘する。
「絶対回避不可は空論よ。現実、私はあんたの攻撃を一度も食らってない…。何故?それは…あんたが想定していた回避方法から目を背けたから。回避方法を想定しなければ確かに必中よね、自分の中では」
これは精神操作にも似ていると思った。
だが、多分本質的には全く違う。これはもっと恐ろしい能力。単純な精神干渉では唯の変化に説明がつかない。
なら、これはーー。
「そして何より」
何故か唯は距離を置く。
一方的に嬲れる間合いを自ら捨ててみせた。
そしてサーベル擬きを『エウレカ』に向けると。
「ばぁん」
そう言った。ただそれだけ。
なのにーー。
「わた、私の羽根がァァァッ!!!」
『エウレカ』の蜻蛉羽根が一枚蒸発していた。
特別何かをした素振りは無く、ただ「ばぁん」と言っただけで。
「あんたは自分の負ける姿を思い描いてしまった」
「まさかまさかまさかッ!!貴女ッ!!」
「私が負ける想像を投影してるのですかァァッ!!?」
「ね、残酷でしょ?」
てへっと酷薄に笑う唯に『エウレカ』は怨嗟の篭った視線ーー勿論目は無いーーを寄越す。
「おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれッ!!」
苛立ちが募り過ぎたか『エウレカ』はのっぺりとした頭部を鉤爪で掻き毟るとーー。
「タネが割れれば、勝つのは酷く容易ーーですね?」
酷く平坦な声を上げた。
そうだ。ここでタネを明かしたのは悪手以外の何者でも無い。
だが……笑っている。
唯はニタニタと、笑っていたのだ。
「だから闇弱なのよ、自分の負ける姿の想像は消そうとすればするほど強く脳裏にーー」
「脆弱な人間の精神性と同じ訳がないですね?」
「ぁっ…!?」
それは、最悪な光景だった。
唯に…今までは簡単に避けれていた鉤爪が当たって血が噴き出している。
俺の視界は鮮血に染まり、四肢から力が抜けた。
「捕まえたのです…ヒィィィィヤハハハッ口ほどにも無いのですッ!!なんという傲慢!!なんという慢心!!なんという闇弱さ!!弱いッ、弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い、弱いッッ!!」
「案外、そう言う夢を見ていたのかも?」
どこからか、声がした。
『エウレカ』は驚愕を露わにして辺りを見回すが、鉤爪を食らって動けない唯をおいて誰一人としていない。
いや、おかしい。
いない?
アニや一やジャックや篝の姿が見えない。漏れなく、全員。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか…。兎に角、それ多分夢なんじゃない?」
「何を…?いえ、まさか…これは幻?」
「えぇ、現実改変紛いのドチートの権化。『不均衡外殻の愚鈍』あんたの視界は私の思った風景にしか見えない」
ああ、そう言えば試練の洞窟で唯に会った時にも姿が見えなかったのだったか。
あれも『不均衡外殻』の能力だと言われれば合点がいく。
「さて、これでゲームエンドよ。何か言い残す事は?」
「こーーーー」
グサリと、何かを言おうとした喉元にサーベル擬きを突き立てる。
言い残させる気は毛頭無く、外道じみていた。
「さて、私の勝ちね」
息を一つ吐くと残酷を解除する。
しかし、その背後にーー。
「貴女ーー」
「慢心、しましたね?」
粘着質な笑みを浮かべる『エウレカ』が人外じみた動きで起き上がる。
首をブラブラと揺らしながら鉤爪を振り上げているのだ。
「ーーーーッ」
脳髄に電流が流れたみたいに体が痺れる。そしてーー鎖を握る手に力が篭る。
殺させたく無い…ッ!!
離れたく無いッ!!
「あぁぁぁぁあッッ!!」
半狂乱になりながら棺桶を振るう。
とーー案外、簡単な手応えだけが手に残った。
唯は無事だ。でも、おかしい。
あの化け物はこんなに軽い感触がするのか?
「やれば出来るじゃない、清人」
……。
おかしな点がいくつもある。
何で、俺は動けたんだ?
「これでもう、フェミニストは名乗れないわよ。悪習断つべし、って言えば理解出来るかしら?」
何を言って…。
いや、違う。違う違う違う違う違うッ。
今までの光景の全てが茶番だなんてそんな事ーー。
「『ユリイカ』、死んだわよ?」
「ぁ」
視線を鎖の先の血溜まりへと移していく。そこにはーー。
「あ…ぁ…」
ただ、無垢な幼女の死体だけが残っていた。
あまりの出来事に俺は気を失いーー。
「…高嶋…唯ッ!!」
激怒する桃色の少女を幻視した。
最終鬼畜全部唯の茶番。
この章は次話で完結します。お付き合い下さいませ。
ここでストレスを抱えた方も多くいると思われますが次の章の伏線となりますから何とか耐えて下さい。
ある程度溜まってから一気読みとかもアリですかね。




