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何やかんや34万字なんすねぇ…絆共鳴のところのカットインを描こうか思案中
「はぁ…要するに、ユリイカとやらの正体が『エウレカ』って言うヤバい呪いで?調伏してた相手を父親だと勘違いした挙句女の子になってリニューアル?はっ、巫山戯てるわね」
「俺に言われても困るんだけど…」
ユリイカを殺す前に情報を共有した結果、この有様だった。
「にしても呪いが女とか笑えない話ね。そうは思わない?団長サン」
「あんまり虐めないでくれよ唯」
唯は恐らく俺が足手纏いになる事を危惧している。そしてそれは正しい。
今でも俺は女の子を殺すと思うだけで手が震える位だ。だが…俺にとって女の子は唯を見つけても嫌える訳がなかった。長年身に染みた習慣が治らないのと同じだ。
フェミニストとしての矜持は今も確かにこの胸に息衝いている。
「いっそ…そうね。原型留めない位にぐちゃぐちゃして殺してしまえば良いんじゃない?」
唯は煽り気味にそう言った。冗談の色の無い、突き放すような物言いだった。
「唯!!お前何を考えている!?団長はヘタレの女好きだぞ、そんなヤツに女を殺させてみろ!!精神が保つ筈がない!!」
篝が無自覚に俺の心をピンポイントでえぐって来て泣きたい。
「別に、それで壊れるならそれまでよ。殺さないと死ぬのよ?ここで殺せないなら生きる気概の無い、ヘタレ以下の屑ーー」
パァンと、破裂音が聞こえた。
唯が頬を押さえ、憎憎しげな表情を一に向けている。
「取り消せや」
今まで聞いたことの無い冷ややかな声だった。
「何の事かしら」
一は能面のような感情を一切覗かせない表情をしていた。
「…あんまりワリャの親友を侮辱すんなや?……ワリャ親友が死んでからその大きさに気付いた。せやから、ワリャは仲間とか、親友とか、家族とか。そこいらの物は大切にしたいと思うとる」
「へぇ?それで?」
「親友の女やからって何でも言っていい訳が無い。せやからーーそれ以上喋ったら悪いけんどその喉。潰してしまうかもしれん」
唯はいつになく挑発的だった。
それに応えるかのように一も本気の殺意を唯に浴びせている。一触即発と言うのが良く似合う空間だ。
「止してくれ一。唯も、らしくないぞ」
「あら、私は通常運転よ」
ふと、頭に思い浮かんだのはハンカチに着いた黒いコールタール状の液体。
唯の口調には何らかの意図があって、尚且つ焦っている?
意図があって欲しい、というのは俺の身勝手な願望かもしれない。
けれど俺は伊達に幼馴染をやってない。唯は論点をずらそうとしているか、或いは何かをさせるように誘導しているように感じているのはきっと間違いじゃない。
「唯、いくら何でもこれはやり過ぎ。反省はすべき」
「…分かってるわよ」
アニがそう言うと渋々といったように唯は身を引いた。
「一もぼーりょく反対、とまでは言わないけどなるべく話し合いで解決すべき。れっつとーく」
「…せやの」
「取り敢えず今は棺桶に食料もあるし、一回休んでから『エウレカ』討伐に向かう。これで良い?」
「だな、魔素の問題もあるし何より各々思う所はあるだろうからクールダウンの時間を設けないと本格的に取り返しのつかない事態になりかねない。強行軍は悪手だ」
すかさず俺はアニの提案に乗っかる。本来、俺がすべき話だったが渦中の俺が出しゃばればそれだけ角が立つ可能性が高い。
アニが意図を汲んで先んじて提案してくれたのはこの上なく嬉しくもあり頼もしく思う。
…同時に自分の不甲斐なさを再確認する訳だが。この話は旅団の団長である俺が切り出さないといけない事だから。
「そ、そうだよ。休んで頭を冷やすのが良いかな」
慌てたようにジャックが便乗する。
いかにも唯関連で何か隠してる風な露骨なフォローだと思い当の唯を盗み見る。
「?」
笑っている。
正確に言うと哀しげに微笑んでいた。
その姿には一抹の痛ましさが滲んでいて、今にも消えてしまうのではないかと思う程だった。
唯は一体何を…?
唯が推した事象は俺がユリイカを殺す事。ならば俺がユリイカを殺す事に、狙いがある筈だ。
「……分からないな」
女心は幼馴染のものであろうと分からない。一緒に居ようが、多分一生分からないのだろう。
そんな事を考えながら自嘲する。
けれど一つ、ほぼほぼ確定した事実。
ーー唯はこの先、絶対にとんでもない事をやらかす。
「ま、受け止めるのも男の甲斐性ってやつか。前途多難だな」
自分に言い聞かせるように呟いた。
それは、先にある不安を自覚するように。
俺が、二人を抱えて飛んで行ける男でありたいと願いながらーー。




