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期間限定イベント単騎攻略3

再び集落コロニーに攻め込んだ。

今回は紳士の杖を使い足元を入念に調べながら落とし穴を回避していく。


「ここまでは順調…ッ!」


ふと、油断した瞬間。


「嘘だろっ」


落とし穴ではない別の罠ーーワイヤートラップが杖に反応してしまった。

逆さに吊られた紳士の杖を回収しようとダガーを振るうが中々取れない。


「よっ、と。取れたけど…。よし戦術的撤退」


俺は視界の端に世にも恐ろしいゴブリンの無限湧きを認めるとすぐさま逃げ去るのだった。


■■■■■



「ワイヤートラップ、古典的な落とし穴…これはもしかしてブービートラップもあるか?」


ブービートラップとは戦利品になり得るものに仕掛け、それを獲得しようとした瞬間に爆発したり当たったら死ぬ類のトラップが連動する罠だ。

順に手口が巧妙になっている為戦利品の回収を考えれば痛い目を見そうな気がする。それとも、この考えをする事自体がゴブリン側のミスリードか…。


「あー、モヤモヤするっ!せめて一時間で良いから女の子を見れば治るだろうけど野宿!都合良く女の子に遭遇したら遭遇したで怪しい!」


ワシャワシャと髪の毛を掻き毟る。

ゴブリンとの連戦と罠のせいでストレスは限界を振り切っていた。

ハールーンからくすねた粘土のような保存食を口に詰めて軽く噎せながら嚥下する。


「飯も寂しいな…黒パン…ライ麦パン…と言うか黒パンとライ麦パンの違いが良く分からないけど似たようなやつが屋台で出てたよなぁ…」


そう言えばカンパーニュとか言うパンもあった。

多分地球産のものだろうが製作方法が丸っと再現されていたりするのだろうか。

…何だか異世界チートで済んで良い限度を超えている気がしなくもない。

もしかして、異世界ながらイデア論が適応されていて『カンパーニュのイデア』に基づいて再現ーーもとい複製されているのかもしれない。


「あ、ヤベぇ携帯食料切れた…」


軽い絶望感を感じつつ野営の準備を進める。


と言っても速度重視の為に持ってきたのは圧縮が効く寝袋と魔除けのお香だけだ。ただ、手元が心許ない時に貧民街の露天商から格安で買ったものの為、特に後者のパチもん臭さは異常だった。


曰く、『これを使えば邪悪なモンスターは絶対に近付かないですぞ…ホッホッホ』……明らかにパチもん摑まされた気がするが今の所実害は無い訳で…。


グルルル…ッ


今日、何度も聞いた不快で耳障りな低い唸り声。


ゴブリンだった。


「せめて…女の子は良いから睡眠は取らせてくれよッ…!」


ゴブリンは総勢八体。

ゴブリンの哨戒班のようだ。

因みにゴブリンの見張り番と哨戒班は似ているが少々違う。

見張り番は集落コロニー内に敵が進入した際に撃退を行う部隊。

哨戒班は常時各所にて勢力の分布を確認、戦闘を行う部隊だ。


要するに外にいる奴が哨戒班、中にいる奴が見張り番だ。


故に目撃報告、被害報告、討伐報告が多いのはこの哨戒班だ。

同じく外回りで略奪部隊が組織される場合があるが、飽くまで略奪をメインに据えたモノであり戦闘は行わない為、目撃報告、討伐報告共に稀だ。


「『孤月』ッ!!」


横薙ぎの炎を発しながら紳士の杖を構え突撃する。


狙い目は眼球。


奴らは目がギョロギョロしてて尚且つ大きい為当たりやすく即死させ易い明確な弱点として眼球を狙う事が推奨される。


とーー。


「熱ッ!?」


皮膚を焼かれながらも一匹のゴブリンが俺にしがみついてきた。

すると他のゴブリンも同じようにしがみ付く。

ゴブリン達の燃える皮膚がそのまま俺の皮膚を焼いていく。


そして、浅く眼球を突いたゴブリンは醜悪な笑みを浮かべーー。

仲間を足場にして俺の背中によじ登る。

必死でもがくが死なば諸共とばかりにゴブリンは離れない。


「ぁ、喉を…」


背中に登ったゴブリンは背後から首を恐ろしい力で締め付ける。


手が小さいお陰で辛うじて呼吸は出来る。が、絞殺の直接の死因は血流の停止による機能不全の場合と呼吸困難の二パターンだったか。

頸動脈洞から位置が外れたら長く苦しむ羽目になるし、頸動脈洞を止められたら普通死ぬ。

今回は前者でーー結果的に死ぬならまだ後者の方がマシだ。


「っで、バガなごどがんがえでるぞ、おぇ」


否ーー死ぬ訳には行かない。

死にたく無い、女の子の為の殉死ならばまだ自分を誇れよう。

けれど、まさか金をケチった結果の死亡なんて許せない。


「やぁ、死に掛けてるみたいだね」


そいつの声は苦しみに喘ぎながらもやけに鮮明に聞こえた。


後頭部に衝撃を感じ地面を転がるとゴブリン達はものの見事に剥がれてくれた。


息を吸い、吐き、また吸う。


「んだよ、その頬。腫れてるみたいだなーージャック」


「煩いねぇ!?あれからマジで代打探しに地球に戻ったらヘカテに『職務怠慢だ』ってぶん殴られて説教三昧だよ全く!!」


数日のうちに見慣れた南瓜頭はまたまたどう言った仕組みかは知らないが頬が赤く腫れている。


「それで、加勢は必要かな?ド変態サイコパス」


「宜しく頼むよ、陰険根暗カボチャ」


荒く息をする体に鞭を打ち、俺は再びゴブリンに対峙する。


「『上弦』に、『孤月』を重ねて…『月華十文字げっかじゅうもんじ』ッ!!」


十時の焔が一体のゴブリンに着弾しーーそのまま爆裂する!


「さて、こっちもツルパーンチ!」


緩い名前の割に殺意の高いツルの鞭を繰り出しゴブリンを三匹纏めて腹部を強かに打ち付ける。


「さっきので第一魔素ファースト・カルマを使うコツを掴めたし、一発派手に行くぞ」


第一魔素ファースト・カルマを体内から地面に這わせそのまま拡散させる。

すると地面に巨大な魔法陣が浮かび上がりーー。


「『炎走ひばしり』ッ!!」


舐めるように極大の猛火が哨戒班を丸呑みにしてそのままジャックを飲み込み、霧散する。


「ちょっと!?何で僕を巻き込むかなぁ!?」


「もっと早く来いよ!あと、ゴブリン舐めんなよ?この世界のゴブリンはクソが付く位強いからな?」


「一発は一発だよねぇ!?こっちもツルパーンチッ!!」


「なぬぅ!?こっちも…『上弦』ッ!」


クロスカウンターの要領で俺にツルが、ジャックに紅炎がそれぞれクリーンヒットし…。


「も、…もうちょい弱くしてくれよ」


「キミもねぇ…。草タイプに炎タイプは効果二倍なの知らないのかなぁ…」


こうして喧嘩両成敗と相成ったのだった。

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