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幻想旅団Brave and Pumpkin【UE】  作者: 睦月スバル
禁断の地の深層
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エウレカ5

前衛を担う二人に当てないように魔素カルマを放出するのは酷く難しい。

戦闘は会話みたいなもので円滑に回れば回るほど良い。滞りなく言葉ーー攻撃を放ち、相手の言葉をいなしていく。

流れを意識した言葉のキャッチボールが生まれるわけだ。

これが理想形。

だが、もし俺がフレンドリーファイアなんかしてしまうと一転。

言葉のドッチボールと化す。


「仰角修正…回転数抑制…完了ッ!(偽)イルク・アルク!!」


一本の火槍が戦場に投下された。

案内人の振り払いのタイミングで放ったからフレンドリーファイアは無い。

自分的にはベストなタイミングだ。

戦線が入れ替わり今度は篝が前進するーー。


「ふム、こ賢しイ」


「やっべ、ヘイトの見込み甘かった!!」


ゲームに於ける後衛攻撃職は強力だ。遠距離、即ち相手の知覚外から放たれる強力無比な攻撃は不意を取りやすく、威力も出る。

が、その反面防御が紙でヘイトを溜めやすい。

相手に狙われたらそれで終わり。故に前衛はずっと敵に張り付いていなければならない。


では、戦線が解れたら?

案内人がこっちに来たら?


「すまん清人!!」


「ほいじゃ、やりますかね…アニ!!」


呼びかけに答えるように頷くと姿勢を低くしながら疾駆を始めた。


「行く…ッ」

挿絵(By みてみん)

「「絆共鳴」」


対象の性能を相互の信頼度に応じて上げる『絆共鳴』のシステムを利用する。

アニが相手であれば互いの思考が半ば共有されているのと同義だから補正値は極大となる。


「「跳躍秘伝ーー交差連斬」」


俺の武器はボロい石槍。

ダメージも軽微で耐久性も心許なく、その割に若干重い逸品だが考え方を変えればコイツも一級品の武器に様変わりする。


『跳躍秘伝ー交差連斬』は武器に糸を巻き付けて位置を交代しながら連続で攻撃を叩き込む技だ。

そう、交代。

アニと場所を入れ替えて一時的にアニを前衛に据えて背後から更に一、篝の二人。


「そら嬉しい置き土産だ!!」


第四魔素フォース・カルマで作った砂で案内人の目を潰す。主人公らしからぬ蛮行?死ぬよか万倍マシだ。


それに…単純にカッコいい、というのもある。連帯感とか、一連托生とか。そういうの良いと思う。

群れないのがカッコいいとか、そういう斜に構えたものの捉え方じゃなくて、誰かと寄り添い、助け合う。暑苦しいレトロな感じが俺のお好みだ。

伊達に脳内日朝ヒーロータイムしてない。

泥臭く、暑苦しく。信念と言うにはあまりに不定形で、方針と言うには少しばかり似合わない。


情熱と、そう言えば良いか。


だから、同じく泥臭い仲間が応えてくれる。


「叩ッ斬るッ!!行くで篝!!」


「当然だ!!」


「「絆共鳴!!」」


「「神速雪月花ーー『輪舞』!!」」


斬撃が迸る。

雪が煌めくように銀閃が走り。

花のように血飛沫が舞い散る。


「だりゃぁぁぁッ!!」


「おロかァぁァぁァッっ!!」


木刀と案内人の腕がせめぎ合う。

実力は拮抗しており互いに一歩も引かない。


だから、その背中はーー。


「ガラ空きなんだよッ!!」


意識が一と篝に向いて背後を取れる今なら魔素カルマを打ち放題、ヘイトは位置を入れ替えてリセット。


勝ったーー。このままパターンに入れば封殺出来る。


ただ、案内人が簡単に負けるのか?

そんな疑念が頭から離れなかった。


「(偽)イルク・アルク!!」


その疑念を振り払うように火槍を放つ。


「清人、あれどう考えてもおかしい」


「どう言う事だ?」


()()()()()。一と篝の攻撃で傷は付いてるけど斬れてない」


「!!」


アニに指摘されてようやく不安の正体が分かった。

耳をすませば金属同士が打つかるみたいな甲高い音。

いつからか案内人の腕が硬化していたらしい。

振り払いで後ろまで吹き飛ばされた一を見ながら考える。

硬化のカラクリを。落下した時は硬質な感触はしなかった。

あの時は……。


「粘液か!!」


身体の表面を覆う粘液。それが硬化の原因かもしれない。


「楽シまセて貰ッたゾ」


不味い。()()()()()()


何をやるかは見当もつかないが、何かとんでもないのが飛んで来そうな予感が。

強制ゲームオーバーのフラグを踏んだみたいなーー。


「絶ぎヲ見なガら、逝ケ」


腕を振り上げる。

モーションを潰さなければ負けだと言う感覚に従って何度も何度も火を放つ。

けれど天井の大穴を示したその腕が降りる事は無かった。


「悶エ苦しメ、重量結(グラビ)ーー」


「ぎゃぁぁぁぁ死ぬゥゥゥ!!」


間抜けな声が響いた。

俺でも、アニでも、ましてや篝や一でもない。けど、聞き慣れた声。

次いで。


「煩いわよ!静かになさい!!」


これまた随分と馴染みのある叱咤だった。

そのまま上から落ちてきた何かは案内人を正確に下敷きにして着地した。


「あら、清人。ハトが豆ガトリングを打たれたみたいな顔をしてどうしたの?」


「それは動物虐待って言うんだよ、唯」


「クロを殺したヤツが何か言ってるわ」


「死ぬかと思ったよ…」


ジャックが弱音を吐きながらヨタヨタと立ち上がる。


「まぁ、何だ。助かったよ」


「けどまだ健在っぽいわよ?」


棺桶の下でモゾモゾと蠢く黒い影は間違いなく案内人のものだった。


「では、改めて戦闘だ。気を引き締めろ。いざ、尋常にーー」



「勝負ッ!!」



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