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幻想旅団Brave and Pumpkin【UE】  作者: 睦月スバル
禁断の地の深層
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エウレカ3

人を殺す事。

それを俺はあまりにも軽く見ていた。

胸踊る戦闘はRPGの華だし、このゲームみたいな世界でも同じような『戦い』だと、そう思っていた。


だが、初日の。

この世界に来て数時間後にその考えは霧散した。

ハールーンとの戦闘だ。俺はそこでリアリティーを感じた。明確な敵意と痛みと血の匂いを。


そしてハールーンを殺した。あの時は割り切れていると感じていたがその実、思考に蓋をしていただけだったと今なら分かる。

死の意味をもっとよく考えるべきだった。

きっと間違いはあの日あの瞬間から始まっていた。…結局、俺は猫を殺した時から変われていなかった。


あの時、立ち止まってちゃんと考えていれば今も尚悩む事は無かったかもしれない。


いやーー人を殺したらずっと悩み続けるんだろうな。

そこはこの世界に馴染めない。


我ながら面倒な性格をしている。


けど、それもこれも全部背負って俺は征かなくてはならない。

ハーレム作るからには最高にカッコいい俺でいないとアニにも唯にも心配かけてしまうから。


今だけは非情にならなければならない。


「……」


アニが心配そうな顔を覗かせる。

心は震えているのだ。怖いから。


「………」


ユリイカの足跡を辿る足は軽快だったが…心だけは、鉛みたいに重くて泣きそうになった。



■■■■■■■■■■■■■■■


《高嶋唯》


依然、二人はのんびりと探索を続行していた。

敵は元より飢餓状態であり不均衡外殻クリフォを使えば無力化するのが簡単だったというのが大体の理由だ。指先どころか意思一つでなんでも出来る状態、とは言い過ぎだが。

唯にしてみればやりたい放題できる格好のストレス発散場と化していた。

勿論、ジャックも唯の大罪系統セブンス・シリーズスキルの使用に渋い顔をしていたが、唯が「もう時限爆弾に火が着いているのだから使用を躊躇う理由が無い」と言い不承不承といった具合で唯に戦闘を任せていた。


「ねぇ、ジャック」


「何かな?」


「もし私が…本気で清人を殺そうとしたら…私を補佐してくれる?」


「は?」


ジャックは何を言ったのか今一意味を測りきれなかった。

唯は清人を殺し、その上ジャックに協力を仰ぐその意味がまるで意味が分からない。

が、ジャックは唯の事だし何かの暗喩かもしれないと思おうとするが、やはり額面通りの意味にしか取れない。

だから、尋ねる代わりに。


「…今のは聞かなかったことにするよ。唯は何も言ってないし、僕は何も聞いてない」


そう言った。

唯は溜息をつくと無理やりジャックのマントの首元を乱暴に壁面に押し付けた。

そうしてジャックは漸く彼女が本気で自分を杉原清人殺害に一枚噛ませようとしている事を理解した。


「…つまらない事を言わないで」


「何で…?君は清人を愛してるんじゃないのかい!?それに…清人が君の為にどれだけの無理をしてるか理解しているのかい!?」


「あら?どんな無理をしてるのかしら」


挑発的な表情でジャックを睥睨する唯。

だが、ジャックとて言い返したい事は沢山あった。


「…清人は童貞だ」


「そうね、知ってる」


「清人が二人の女の子を同時に好きになるようなクズだけど、でもアニに手を出す事は無かった。…君がいるから」


「当然。だって清人は犬だもの。今までも……これからも」


一瞬寂しげな表情を見せたがその台詞はジャックの逆鱗をヤスリで削るような悪手だった。


「清人は君の犬なんかじゃないッッ!!」


「……無理よ」


諦観が滲む悲痛な呟きがジャックの耳に飛び込む。何を言っているのかと苛立ちを隠そうともせずジャックは唯を睨みつけるとーー静かに唯は泣いていた。


「清人はずっと…他ならぬ自分に囚われ続ける。…そんなの犬と変わらないじゃない…」


あまりの事態に困惑を隠せないままにジャックは尋ねた。


「一体、何なんだい?君は…一体?」


「……ジャック、依頼がしたい。……違うわね」



「ジャック様。お願いします。……私の望む最期を、私の手で迎える為に、……清人の為に。私に力を貸して下さい」


ジャックは既に解放されていた。

代わりに唯はーージャックに向かって頭を下げている。


いつも高圧的で傲慢で、ツンケンしてて。他人の状況の一切を慮る事なく、辛辣な助言を繰り返した女王のような少女が。


頭を下げているのだ。


卑屈に、へり下り、似合わない様付けをして。高嶋唯という少女は頭を下げていたのだ。


「な、何なんだい…?何のつもりなんだい?僕には分からないッ!その意図が、君が頭を下げる理由が!!」


唯は重々しく口を開くとーージャックは驚愕に目を見開き切なそうな顔をした。


「……分かったよ。僕は君の口車に乗って…足止めをすれば良いんだね?」


「…えぇ。それだけで構わないわ」


それだけ言うとさっさと歩き出す。

ジャックにはその後ろ姿が…とても儚いものに見えた。



■■■■■■■■■■■■■■■



覚悟を新たにした杉原清人。

清人を支えるアニ。

自分なりの幸せを見つけた灯篝。

少しだけ狡くなった一凩。

そして、清人殺害を決意した高嶋唯。

唯に同調するジャック。


この六名の道が交錯する時ーー



ーー世界破滅へのシナリオは更に加速する。


私はやると言ったらやるのだ…。

ブクマが露骨に剥がれる道だろうが目に見えた地雷だろうが踏み抜くのが流儀なんだよぉ!!


あ、でも暫く時間かかるから安心してクレメンス。

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