胎動する呪詛1
20,000PV乗り越えて、ブクマ無くても突き進む!!
それが底辺なろう作家のサガだから!!
誰が弔う〜死地は彼方〜♪
さっきの男の台詞と今の状況を照らし合わせる。
先ず『喰うなら喰え、それがここの掟だ』か。『アスター』に於けるルールか。喰わなければ喰われると、まぁ大体そんな所か。解釈もそうそう間違ってはいないはずだ。
次、『俺の肉を喰ったお前らはきっと呪われる』だったか。
『アスター』の様相を蠱毒のようだと思ったがやはりドンピシャだったらしい。
ついでに言うと呪いも実在するようだ。
そしてその呪いの性質は『殺せば呪いが吹き出すぞ。気を付けろ、殺意にその身を焦がされないように』だから…。
恐らく『殺意の伝播』、とでも言うべきものか。
俺が始めてユリイカに合った時に感じた真っ赤な殺意の奔流がそれなのだろう。
それが人を殺す度に進度を増す。つまり、人を殺す→殺意が湧く→人を殺すと言うループが始まる訳だ。
更に悪い事に。『呪いはやがて『禁断の鍵』へと流れ込む』のだ。
つまり人を殺し過ぎれば即座にユリイカ=ヌンとなり俺たちはハッピーエンドへの道を諦めざるを得なくなる…?
「一」
「…ワリャは何をして?」
一から冷たい表情は消えいつもの軽薄そうな、温和な顔立ちに戻っていた。
…現状、ハッキリ言ってかなりマズイ。
俺たちはユリイカの行方を探りながらこちらからは殺害を最低限度に留めなければならない訳だ。
しかも呪いによって精神をやられたら身内同士での殺し合いも…あり得てしまう。
「一、ここからは殺しは最低限に留めるぞ」
「…分かっとる。清人の言わんとする事はの。けんど…中々厳しいわ。つーのも自制が効かんくなるからや。殺しが不味いのは感覚的には分かる。けど、体は殺したくなる。そんな感じがする」
一はポツリポツリと吐露した。
その内容は俺の出した結論を裏付けるもので鳥肌が立つようだった。
でも、タネが割れれば対策が打てる。
「なら、俺が止める」
俺たちは幸い二人いる。
どちらかが呪いに犯されたらどちらかが体を張って目を覚まさせれば良い。
「あんさん正気か?接敵してる時に割り込めば最悪死ぬで…いや、最悪でなくても普通に死ぬ。仲間に殺させない為に体張るのはちゃうんやない?危険過ぎる」
「リスキーなのは百も承知だ。それに今までだって一歩トチれば死んでた。それこそ普通に、な」
一は不満そうな顔をして俺を睨め付ける。
「暴論や、今までは殺す為に体張っとったやろ。全力を賭して殺しとったやろ。それを殺さない為の全力と同一視してるのは頂けない。殺さない方が圧倒的に難しいのは道理やろ?そうや、殺せば良い!殺せば…!」
「一ッ!!」
思い切り一の頬をぶん殴った。
所詮素人の殴打だ。逆に拳の方がジクジクと痛んだ。
「…すまん、今のは忘れてくれ」
そう言うと一は俺に背を向けて先に歩き出した。
「あんさんの言う事は多分正しい。けんど…同時に怖くもある。あんさんはそれで死なんか?人は脆い。簡単に壊れてしまう…。だからこそ…何や。……まぁ良えか。ワリャにも矜持があるさかい。…今は謝らん」
「…そうか」
ギスギスした空気が辺りに満ちている。
他の仲間はーー唯やアニ、篝にジャック…ジャックに限れば殺傷能力が低いからある程度安心ではあるがーー心配だ。
無言。
一も俺も互いに一言も声を発さなかった。
或いはそれが良いのかもしれない。
何故なら、それだけ戦闘を避けれていると言う証左になるのだから。
ギスギスしてはいるが険悪な訳では無い。ただ不安と懸念、それと少しの意地が横たわっているだけで。
俺たちは張り詰めた糸のような緊張感を持って沈黙を守っていた。
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《高嶋唯》
「うーん、これどうなんだろうねぇ」
「どう、って言われても分かったもんじゃないし聞くだけ無駄だと思わないのかしら?」
場所は変わってジャックと唯。
この二人もまた幸運に恵まれーーたのかは不明だが鉢合わせしており、行動を共にしていた。
が、その雰囲気はお世辞にも良いとは言えず実に刺々しい。
清人と一が張り詰めた糸ならこちらは張り巡らされた有刺鉄線か。
と言うのも、『アスター』での事柄が起因している。
唯の魔獣化をジャックは知っているのだ。見られた以上今更繕う事も出来ず、ただでさえ世話焼きな性格のジャックが更に心配するのだから唯にとっては非常にウザく感じられ苛立ちに拍車がかかっている。
「…はぁ、せめてアニとだったら一番気楽だったかも。こればかりは運とは言え恨むわよ神サマ」
「僕だって零細だけどれっきとした神なんだけどねぇ」
ジャックはやや不満そうだが相手が唯とあってはそうそう強くは出られなかった。
「あと、あちこちにタチの悪い呪いが漂ってるから気を付けて」
その言に反応して片眉がピクリと反応する。
「さっきからずっと神の癒し的なヤツでカバーしてるけどかなり不味そうだよ。一応何が地雷になるか分からないし…まぁ不可視だから気を付ける、とまではいかないけど承知しておいては欲しいかな」
「…そう」
呪いの話を聞いても唯の反応は一貫して素っ気ない。
「唯ちゃん…?」
「何でもないわ。篝と一のバカップルいえ、夫婦、だったかしら?そこが一番心配ね」
「やっぱり唯ちゃんの愛情表現はどこか迂遠だねぇ」
ーー最も好意を寄せる人物にこそ心配をしない。
ジャックは唯の心配をそう捉えていた。
「さて、どうかしら。案外ーー」
「死んじゃうのを期待してるのかも、知れないわよ?」
礼装落ちなくても周回を止めるんじゃねぇぞ…(自戒)




