季節限定イベント単騎攻略2
スタイリッシュな自殺とは言い得て妙なもので俺は早速戦術的撤退を余儀なくされていた。
集落自体の発見は案外容易だった。
が、勇んで集落への一歩を踏み出した途端ーー落とし穴に嵌った。
賢いゴブリンが集落に罠を貼るのは道理だったが、俺は失念しており堂々と落とし穴を踏み抜いていた。
下には竹槍が刺さっておりこのままでは死ぬと理解した俺は火傷を覚悟で竹槍を下弦で焼却すると今度はゴブリンの見張り番が俺に向かって礫を投擲し、打撲痕が残る位にボコボコにされ命からがら逃げ帰ってきたのだ。
故に戦果は皆無。
逃げ帰る為にダガーは刃こぼれしたし、霊衣は自動的に直るからまだしも薬関連の品が一気に無くなった。
これがジャックの言葉に従ってあの時点の実力で挑んだなら確実に死んでいた所だろう。
「やっぱり第一魔素の使い方を工夫するか…?」
しかし、火単体で活躍出来そうな手は中々思い浮かばない。
「いっそ毒ガスでもバラ撒けは楽ではありそうだな」
或いは今よりももっと範囲と威力を増した炎が使えれば幾分かマシにはなるだろうが悲しいかなアテが無い。…いや、あるか。
「…サフィールに聞いたら何かアイデア貰えるか?」
異世界補正付きのよく分からない理屈とシステムで成り立つ蒸気機関ヲタであるサフィールならば良くも悪くも違った視点から起死回生のアイデアを思いついてくれる気がする。
早速俺は行動を開始した。
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「おや、珍しい来客ですね。また『ルカ』を眺めに来たんですか?」
「いや、ちょっと蒸気機関でゴブリンを上手く退治出来ないかと思ってな」
ふむ、とサフィールは考え込むと「ついて来て下さい」と言いバックヤードへ足を向けた。
それに追随し、乱雑に散らかったデスクの前に立つとサフィールは近くの棚をガサゴソと漁り始めた。
「あー、ありましたね。私が昔開発した蒸気式の噴霧器の設計図です」
「噴霧器?」
ええ、と頷くと噴霧器に関しての説明を始めた。
「要するに幻覚作用のある霧を吹いて上手いことゴブリンを同士討ちさせようっていう発明ですね。蒸気式ですから勿論範囲や射程は極長ですしゴブリンに対して強力な切り札になる筈です」
「じゃあ、何で今までそんな強いアイテムを使わなかったんだ?」
「実は発射する幻覚作用のある霧を製作するハードルが高くて製作コストが嵩んで御蔵入りしてるんですよねぇ…」
チラ、チラとこちらを見てくるのでどうやら俺が取ることが確定しているらしい。
「それを取って来てサフィールにはメリットがあるのか?」
と言うとサフィールはニヤリと笑い。
「勿論、私は噴霧器の製作者として表彰されるでしょうね。つまり研究が評価されて以降の研究に使える費用の融資を受けやすくなります。ま、信用を得れるって事ですよ」
「金の無心とかかよ…研究者としての矜持とかじゃないんだな」
「えぇ、矜持で腹は膨れませんから♪」
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幻覚作用のある霧を生み出す為に必要な素材は川辺に多く生えるとサフィールに聞いた俺は早速川辺に向かった、向かったが…。
無い。
指定された素材が全く見つからない。
「…無いのかよ」
『単一加速』で回転効率を上げるが相変わらず見つからない。
その時、頭に取り留めの無い想像が浮かんだ。
『あれ、幻覚作用のある霧を生み出す素材って。それって麻薬じゃないか?』と。
真偽の程は定かでは無いが案外核心を突いている気がする。
サフィールが実は麻薬のブローカーで善意を装い俺に麻薬を採取させ、蒸気機関を渡して過剰分をまるっと折半すると言う最悪なシナリオが頭に浮かんだ。
…流石に無いな。きっと疲れているのだろう。
しかし、噴霧器が無ければ素の自分では集落を壊滅出来ない。
中の女の子も救えなければ『魔王の欠片』の入手も出来ない。
いや、目的を同一視するのが不味かったのではないだろうか。
何も二つを同時に行う必要は無い。
別々に独立した問題として見ればどうだろう。
先ず女の子の救出。これは大体、『集落への進入』、『女の子の拉致』、『襲って来たゴブリンの撃退』。
この三つが女の子の救出に必要なステップだ。
そして『魔王の欠片』の回収、これは『集落への進入』、『集落内の探索』、『襲って来たゴブリン※但し練度が高い個体との戦闘が予想される の撃退』の三つ。
例えば、絶対に無いが、『魔王の欠片』の回収のみに全力を尽くせば必要な段階はたったの三つだ。
女の子の救出を含めるならば必要な段階は四つだ。
そう考えれば幾らか勝算はあるように思える。
ジャックとエンゲルの言動が意図せずミスリードした形だ。
ジャックは『お得意の第一魔素でどうにか出来ない?』としきりに聞いた為に無意識の内に目標が不明瞭になり、エンゲルは『都市への侵攻を示唆した』為にゴブリンの間引きが必要であると判断させた。
まぁ、どちらも最終的に結論を出したのは俺だ。
どう言い繕おうが結局は俺の失態だ。
ならば、やる事は決した。
女の子を助けてから『魔王の欠片』を回収して街に戻って最近お気に入りの定食屋の娘っ子さんの臀部の揺れを見てニヤニヤする、ただそれだけだ。
待っていろゴブリンに乱暴された女の子達よ!!
処女とか非処女とかボロボロとかは関係ない!俺は世界中の凡ゆる女の子を心から慈しみ愛するカテゴリ萌えのド変態サイコパスだ。
必ずや俺なりのやり方で女の子の笑顔と胸部と臀部の揺れ感を愉しんでやるッ!!




