【自分との戦い】
すまない、内容が著しく汚い。
汚いのが苦手な人は後書き部分を見るの推奨。
《一凩》
「『晴浮楽々(はるうらら)』」
その戦場は無数のキルゾーンで出来ていた。
「なんだよー、全体攻撃とか聞いてないって」
土煙の中からゆっくりと姿を現したのは鉄打ち一凩。
戦場全体に木刀による衝撃波判定が入る『晴浮楽々』によりサガラの武器ーー苦無や手裏剣などを強引に弾き飛ばしていた。
「ほれ、鬼さんこちら、手のなる方へって言ってみ?鬼ぃさんがボコったるから」
「爆破苦無ッ!!」
サガラは劣勢に於いても最終的な勝ちは揺るがないと思っている。
何故なら彼は遠距離武器による手数重視の戦法を基軸にしているからだ。
今でこそ範囲攻撃に巻き込まれて無力化されてこそいるが範囲技は消費も激しい。どちらが先にガス欠になるかと問われれば間違いなく一。
後はじわじわと嬲り殺しにしてカタがつく。
だから余裕を失わず口先ではピンチだ危険だと宣いながらも平静を保っていられている。
「んじゃ、ギアを一つ上げるかの」
戦闘を開始して以来一歩も動かなかった男は動き出した。
そしてサガラは考え違いに気付く。
一は苦無や爆破による牽制によって動かなかったのでは無く、自分の意思で動かなかったのだと。
見たところこの男は直情的で腹芸には凡そ不向き。ブラフは無いと見た。
「『餓狼点睛』」
しかし、その技の名前を聞いてから皮膚が粟立った。対峙する一は鬼のような形相を浮かべている。立っているだけでも迫ってくるような濃密な気配に一歩後ずさる。
急いで苦無を投擲するが剣圧の前に悉く弾かれた。
「あーもー、嫌だなぁ!」
範囲攻撃、実質遠距離無効。
ガス欠が早まるのは良いが現状サガラは手詰まりだった。
対する一はーー。
別ベクトルで困っていた。
(バレとらんよな…?)
強烈な便意を催しているのだ。
そりゃあ鬼のような形相にもなるだろう。
要するに我慢するのに必死過ぎるのだ。
『清人、清人は窮地に陥ったらどないすんの?』
『んー取り敢えず手札をレイズ。ってかまぁブラフに走るな。余裕を見せるもよし、不敵に笑うも良し。兎に角勘違いさせる言動を繰り返すな』
これはコロウスでした他愛無い会話ではあったのだが、今回は役に立っている。
便意はーーそう。
清人が一対一でのカチコミを敢行すると言った辺りからだった。
流れも流れだし、時間制限のある状況でどうして厠に行きたいと言えようか。いや、言えない。
結果的に臀部にも時間制限があるのだと悟り、どうしようもなく泣きたい気分だった。
故に動けない。
動けたとしても臀部に刺激が来ないようにゆっくりと。
これが一連の強キャラムーブの真相だった。
最早敵とかどうでも良いから厠へ行きたい。
が、便意で敵を先に進めるのはハザミで生まれ育った男にとって耐え難い恥辱の極み。かと言って敵の前で堂々と脱糞すればそれもまた恥辱の極み。
正に袋小路。
波が寄せては返す。
その度に形相はどんどん険しくなる。
鬼を通り越して最早般若だった。
「ぅっ…『浦風』」
必死過ぎる故に恐ろしい程の力みから生ずる破壊力、低迷する命中率。
「なんだー、威力がすごく高いなー」
二人はどちらも詰みを迎えていた。
しかし、先に天啓を得たのは一だった。
「はぁぁぁぁぁあッ」
急に力み出す。
すると服が気に耐えられず上半身分、いな下半身部分まで見事に消し飛んだ。
「くるのかー!?」
一の出した結論。
敵をさっさと倒してしまえば催したところで意味を為さず。
服がなければ汚れる心配すら不要。
一 撃 必 殺 。
少し遅れてサガラにも天啓を得た。
もしかしてこの男、催してはいまいかと。
だから、全裸。
まさか自分に物理的に尻拭いさせるつもりかと背筋を凍らせーーならば先んじて臀部に苦無の刺し入れをするのみだと苦無を構えた。
勝負は一瞬ーー。
「はぁぁぁぁぁあッ!!」
「止めてくれッての!!」
「はぁぁぁぁぁあッ!!」
「はぁぁぁぁぁあッ!!」
呼応するように、叫びがこだまする。
次いでーー轟音。
果たして勝者は……。
「ぅっ、ヤバい…」
一だった。
辛うじて我慢出来ていた。
直腸が荒れ狂う。
とうとう終末を告げる鐘の音が脳内に響き渡った。
「サガラ、あんさんは多分強かったけんど。それよかワリャの仲間への想いが強かった。更に言えばーー」
「仲間への想いよりも更に便意が強かった」
気絶したサガラを横目に一は物陰に隠れたのだった。
この話の大体の流れ。
戦闘中に出したら侍生活終わるナリ→そうだ、先に敵を倒して厠へ行くナリ→全裸で戦えば汚れないし気迫で服を破くナリ→勝ったナリ→ああああああああああああああああ。




