イベントスキット12ー1死亡フラグ
100ptだってよ!!
カボチャ半端ないって!!!
見事に一に伸された俺は一に担がれながらも温泉宿へ帰還した。
途中、担ぐという特性上作務衣の下の腕や肩周りの筋肉が腹の辺りに当たるのだが、それが硬いことこの上無い。
自分の腕を摘んでみるもそこまでの硬さは無かった。コレが日々の積み重ねの結果かと少し凹みもしたが、日進月歩、日々努力、最終的には大躍進。
強くなって追い越してやろうと密かに野望を抱くのだった。
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「あいたたた…まだ節々が痛いな…」
「相当酷い負けだったみたいだねぇ」
隣の部屋からにゅうっとジャックがフェードインして来た。
眼球代わりの三角の穴をニマニマと歪めているのが若干腹立たしくはある。
「まぁな…やっぱり強いものは強い。俺もまだまだこれからって事だな」
「たはぁー!遂に清人も一端の主人公っぽい事を言うようになったねぇ!地味に嬉しいよ!!」
そうジャックに言われ口をへの字に曲げながら拗ねてみる。
「いいや、俺は前から主人公っぽいし!それに俺なりに頑張ってるから当然の帰結だろ?」
「そうかなぁ?」
拗ねた俺を更に煽るように顔を近づけるジャックだったが、やはり見た目のコミカルさから何とは無しに笑いがこみ上げて来てふふっと笑ってしまった。
「ああ!!何がおかしいのかなぁ!?」
「別に?ただ何となく良い感じだと思ってさ」
「絶対そんな事考えて無いパターンだ!!?」
ワイワイギャーギャーと騒げば、問題山積でも自然に笑える。
やっぱり俺は死にたくもなければ消えたくも無い。
ならば『杉原清人』を倒すしか道は無いと彼は言ったがーー。
案外、第三の選択肢が存在するかもしれない。
けれど結局、どの選択をしても俺は女々しく悔やむ自信がある。
悔いの無い選択なんて無いのを知っているから。
唯を加入させたからアニは絶望した。
唯を加入させなかったら多分俺が破綻した。
何を選び、何を捨てるか。
俺たちは常に二者選一を迫られている。
こうやって笑い合う過程は『杉原清人』が自分を選ばないと言う痛みの上で成り立っている。
俺か、『杉原清人』か。
答えはまだ出そうになかった。
「どうしたの?」
「いんや?別に?」
気付けばジャックがこちらを覗き込むように見ていた。
「いやぁ、これからの君の進化が楽しみだよ!!ガンガン戦ってオルクィンジェを回収してまた…旅をしたいかな」
尻すぼみな口調だった。
それは何かを察しているようでもある。
しかし、察していたところで俺は止まらないが。
「馬鹿だな、旅は終わらんよ。そう簡単に終わらせるにゃあ惜しいにも程があるしな。それに……」
「それに?」
ーー今も俺は正当化するための理由を欲している。
だから自分に言い聞かせるように一つ一つ言葉にしていくのだ。
さも自信ありげに虚飾を並べ立てる。
俺の悪癖だった。
「いや、今は言わない。おいおい話してやんよ」
「うわぁ、あからさまに死亡フラグ…。まぁ、清人に心配は不要だよね」
「ちょっと心外だぞ。ピュアなハートが傷ついちゃうだろ」
「心配しないのは信頼の裏返しかな。それとも……心配が必要?」
ジャックはふっと…寂しげに微笑みながら言った。
ったく、と言いながらボリボリと頭を掻いた。
カボチャの癖にどうして中々響く事を言ってくれるではないか。
「心配は要らない」
俺は死にたくない。
だからこそ、心配されたくは無かった。
俺の終わりを覚悟しては欲しく無かった。
それは酷な事だろうけれど。
今は、エゴであっても拠り所になるから。
「さてと、痛みも引いて来たしひとっ風呂入って来るかね」
そう言ってのっそりと立ち上がると部屋を後にした。
ジャックが何かを言いかけたが、その声は聞こえなかった。
きっとゲームの死亡フラグじみた事を言っているのであろう。
「 」
俺はその悉くを超えて生き残りたいと。
そう、願った。




