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幻想旅団Brave and Pumpkin【UE】  作者: 睦月スバル
三者三様、金策戦線
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100話記念 清人京都に立つ【後編】

祇園、京都の代表的な歓楽街だ。

伝統的な街並みが素晴らしく、匂いも香木や抹茶が売られているからかはんなりとした京都風の匂いがする。

匂いも景観も素晴らしいのだが…。


「いかんせん人が多いんだよなー。まー、おにゃのこと肩が触れたりして至福ではあるけど」


そう、山城が言うように人が多過ぎる。

まるで濁流か、或いは土砂降りの雨のよう。


「そこは…同意…いや、紳士として女の子にぶつかるような真似はしないっての」


「またまた…これだから空想彼女持ちは…二次元じゃない分痛いぜ?」


ナンセンスとでも言うかのように肩を竦める仕種がどうにも腹が立つ。


ーー空想彼女。

あれから俺は唯が側にいると仮定して動く事で寂しさを紛らわす癖が付いてしまったのだ。普段は隠していたのだが運悪く二人にバレてイマジナリーフレンドと言う体で納得させたのだが、以来このようにからかわれるようになってしまった。


「清人サンモ業ガ深イデスネ」


まぁまぁ、と話題を露骨に逸らしながらながら目に付いた京都っぽい雑貨屋に入る。


京都はさながら沼だ。金が際限なく消し飛ぶ魔境だ。


アンドリューは途中で木刀を購入したし、山城は八つ橋は駅で買うからとスルーしつつもあぶらとり紙を始めとした物を数点と下駄、扇子を買ったりしていたから今現在一番の金欠を味わっている。


「さてと、俺は練り香水を…っと」


「清人サン、練り香水ッテ何デス?」


「うーん、香水だな。ただ手紙に匂いを付けたり保冷剤の中身を混ぜるとルームフレグランスになるから結構気に入ってんだ」


購入した兎のパッケージの練り香水を見せる。匂いは金木犀だ。甘い香りが何とも素晴らしい。


「金木犀デスカ。良イ匂イガシマス」


「だろ?唯が好きそうな感じだから試しに買って以来俺がハマってな…」


中学の頃は二人で一緒にファンシーショップに行った時もどちらかといえば落ち着いた雰囲気の物を好んだように思う。

それこそ俺とお揃いに出来そうな位のデザインだった。

そんな感じで、可愛らしいっちゃ可愛らしいけど華美では無さそうなもの=練り香水じゃね?と独断と偏見でチョイスそたらドツボに嵌った訳だ。

俺が。


「清人サンモ大概ヤバイデスネHA HA HA!!」


「お、おう?まぁそうかな?」


とまぁ、こんな塩梅で道中を過ごし、八坂神社に着いた。


「八坂神社、通称祇園さんで知られている…そーいや祇園とジオンって似てね?で、祭神が牛頭天王…頼光ママが捗るヤツだコ…」


「それ以上はマズイ」


ヲタが三人ともなるとネタが収集付かなくなるのだ。どう飛躍するのかいつのまにかホモビの話になって困る事もしばしばある。


「マァ、参拝シタラ良イデス?」


「そうだな。おい山城、行くぞ」


「俺の扱いがどんどんぞんざいに…」


よく分からないが凹む山城をスルーしつつ鐘を鳴らす。


確か二礼二拍手一礼だったか?…手順トチったらまさか死ぬ訳はあるまい。

…お稲荷様は祟るようだけれど。


「これで行程は完遂だな。お疲れ様」


「オ疲レ様デシタ」


祇園の通りに戻ると若干光が灯っている。無数の蛍が仄かに光るみたいな穏やかな光に祇園は包まれていた。


「……」


「唯サン、デスカ?」


ドキリとした。

今までイマジナリーフレンドで納得していた筈だ。からかわれこそすれ、深く突っ込まれた事は今まで一度として無い。


いや、イマジナリーフレンドの事を言ったのかと顔色を伺うが生憎アンドリューは真剣そのもの。観念して口を開いた。


「まぁ、唯と見れたら、良かっただろうな」


「…財布ノ中ニ、プリクラ、チラット見エマシタ」


「ああ!くそ、練り香水買った時か」


練り香水を買った時、当たり前だが確かに財布を取り出していた。アンドリューも近くにいたからたまたま見えてしまったのだろう。


「アレガ唯サンデス?」


「…ああ、高嶋唯。俺のずっと好きな人だ」


アンドリューは眉をひそめる。

難しい顔をして一度唸った後に向き直った。


「分カリマシタ。…清人サンガイツカ救ワレル事ヲ、祈リマス」


「…救われるなら、さ。こんな愉快な旅の途中が良いな」


振り向けば夕暮れ。

点り始めた微かな明かり。

雑多な人の影、人々の営み。

旅をする俺と愉快な仲間たち。


そんな中でもし、もしも唯と再び出逢えたなら。


多分それはきっとーー本当に幸せなんだろうな。


「キット、救ワレマスヨ。神ハ乗リ超エレル試練ト少々ノ理不尽ヲ与エマスカラ」


「何だよそれ、理不尽って?」


「神ハ偶ニ理不尽ヲ与エナイト駄目ナモノラシイデス?」


よく意味が分からなかった。

けれど、何か大切な事を言っている気がした。


「そう言えば、アンドリューって何人なんだ?クリスチャンだっけ?」


「サァ?私ハ()()()()()()()()デスヨ♪」


純粋な、だって?


「サァ、清人サン。山城が退屈シテマスヨ。早ク行キマショウ」


疑問は残るが、これが楽しい旅の記憶。

俺の思い出だった。

現在、純粋なエジプト人は存在しません。

トルコ、或いはアラブの血が混じる為純粋なエジプト人は大分前から存在しません。

エジプト語話者も数える程だとか。


さて、彼は一体誰なのでしょう♪


ヒント『♪』

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