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第七話「覚醒」


「この本は預言書なのか?」

「それが」


 キュアリスが本の表紙であろう部分を俺に見せる。


「何も……書かれていない?」

「そうなんです。この本が預言書かどうかすら分からないのです。見た感じ預言書みたいですけどね。ですが、それだけではありません」

「というと?」

「この本の文字は勝手に消えたり、表示されたりするんです」

「それはどう「キュアリス姫」


 俺が本の内容を聞こうとした瞬間、マルクスが荒々しくドアを開け、キュアリスを呼んだ。


「どうしたのです? そんなに慌てて」

「敵襲です。今すぐ逃げるじゅん、グハッ!」

「え……?」


 俺は目の前の光景を理解するのに時間がかかった。

 冗談だよな。

 人の体が真っ二つになって横たわってる光景なんて今まで見たこともないし、これからも見るものでないと思っていたから。


「マルクス!!」

「こんにちはあ、お姫様」

「貴方がマルクスを……」

「ん? もう一人従者がいるのか? 始末するか」


 マルクスを真っ二つにした獣族であろう男は俺に近づいてきた。

 俺の腰抜けた姿を見て、余裕の笑みを浮かべている。


 何が勇者だ。

 何が魔王を倒すだ。

 終わりじゃないか。

 ここで、世界どころか一人の人間すら守ることが出来ずに。


 終わりだ。

 

「俺は守れる人間になる」


 何だ?


「それが答えか? リギル」

「ああ」


 どこかで見たような光景。


「守れなかった人間がよく言うものだ」

「誰が何と言おうと俺は、今度こそ絶対に守って見せる」

「フッ、面白い。その誓い。忘れるなよ」


 知らないはずなのに覚えている?


「俺が守るんだああああ!!」

「何だ!? この闘気は!」


 体が勝手に動く。

 剣を振るう。

 敵である獣族の男も対抗するが、俺の攻撃を前にして手こずってるようだ。


「俺が押されている……? クソッ!」


 獣族の男は撤退した。


「ハア、ハア、ハア」


 気が抜けたのか目の前がくらくらする。

 

 俺はそのまま意識を失った。



――。


「ん……んぅ」

「気が付いたか」


 見覚えのない天井。

 ハイテンベルグ城とは違うがどこか豪華な光景が眼前に広がる。

 声がする方向へと目を移す。

 そこには凛々しそうな顔をした美女が俺の瞳に映った。


「ここは?」

「ここは私の領地。貴殿はハイテンベルグ城で倒れていたのをここまで運んでもらった」

「キュアリスは?」

「姫も無事だ」

「貴方は?」

「私はビレイル・ビリアート。一端の剣士に過ぎぬ身だ」

「ハイテンベルグ城はどうなりましたか?」

「申し訳ない。私がもっと早く辿り着いていれば被害が少なくて済んだのだが」

「……そうですか」

「見た感じまだ消耗しているようだ。しばらく休むといい」


 そう言うとビレイルは席を外した。

 

 一人になった俺は思考を巡らせる。

 獣族の男が攻め込んできたときの俺の動き。

 戦力は獣族の男のほうが圧倒しているように見えた。

 なのに俺はそれを退けた。

 強くなったといっても俺の強さは並の兵士と同レベルだと思う。

 あの男を退ける力なんてあるわけがない。


 そしてその時、頭の中に浮かんだ光景。

 あれはなんだったんだ?

 初めて見るはずなのにどこか覚えがある。


 うーん、分からない。

 俺が勇者だからと言ってしまえばそれで片付くが。


 もういいか。結果良しなわけだからそこまで考える必要もないだろう。

 

 俺はそのまま眠りについた。

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