第六話「稽古」
「勇者は強くあらねばならない。それゆえに自分を鍛える」
本に書かれている内容を実践するため、俺は今、剣の稽古中だ。
「貴様が勇者か。この程度の実力で!」
「グッ!」
本当に俺は勇者なのだろうか?
偶然剣が抜けただけとも考えられる。
自分の実力を見てもそうだし。
「お疲れさまです」
しかし、今更弱音を吐くわけにもいくまい。
キュアリスの笑顔を見ているとそう思える。
「ヤアア! ハア! ヤアア!」
夜も外で一人剣を振る。
稽古中の動きを意識しながら、ステップを踏みつつ。
不思議だ。
俺ってこんな努力家だったっけ?
普通の学生時代、テストも特に努力もせず普通の点数だし。
今の自分が自分じゃないような感覚に陥る。
――。
稽古を続けること一か月。
「ヤアア!」
「グッ、やるようになったじゃねえか」
初めはまともに剣を振るうことすら出来なかったのに。
今や指導者と同等に戦えるようになるレベル。
努力が実を結んだこともあって、達成感が半端ない。
「すごいですねリギル。マートンにここまで言わせるなんて」
「正直、自分でも信じられません」
「やはり貴方は勇者なのですね」
「かもしれません」
本当に俺は勇者なのかもしれない。
ここまで強くなったんだから。
この調子なら魔王も倒せることだろう。
――。
「大変です。ビレイル様」
「どうした?」
「ハイテンベルグ城から救援要請が」
「状況を説明しろ」
「それが空間から突然化け物が現れたとのこと」
「どういうことだ?」
「貴方様のお力が必要だということは確かです」
私の力が必要だということは。
よっぽどのことなのか。
とにかく急ごう。