第四話「勇者リギルの誕生」
「この世界に異世界から勇者が訪れるであろう」
俺が勇者……まさかな。
「貴方はもしや勇者様」
姫様は羨望の眼差しで俺を見つめる。
「ハハハ、偶然ですよ俺が勇者なんて」
「これを見てください」
姫様が本を開きその中を指さす。
俺は姫様が指さした行を見る。
「その者がハイテンベルグ城の伝説の剣を引き抜くことが出来るであろう」
伝説の剣を引き抜く?
どこかの物語であったな。
この剣は扱える者にしか引き抜けないっていうのが。
「貴方様にその伝説の剣を引き抜いてもらいたいのです」
姫様の羨望の眼差しはますます強くなる。
「いや、俺は勇者じゃなくてただ異世界から「やってみるだけでもいいのでお願いします」
姫様にお願いされちゃ断れないじゃないか。
――。
ということで俺は姫様に連れられて、その剣がある場所に向かった。
道中ここがハイテンベルグ城であの本は家宝だという話を姫様に聞いた。
道理でどこからどこまで豪華な景色だったわけだ。
剣がある場所に辿り着く。
「キュアリス姫。本当なのですか、こんないかにも平民みたいな者が伝説の剣を扱えると」
失礼な家来だなあ。まあイメージ通りだけど。
「マルクス。何度も言ってるでしょ人を蔑むような無礼な口調はやめなさいと」
「しかし、この者が「それは剣を抜いてみれば分かることです」
姫様には悪いがあまり期待してもらわないで欲しい。
「それでは、あ、そういえば貴方様のお名前を聞いてませんでしたね。遅れてしまい申し訳ありません。私の名はキュアリス。キュアリス・ヒーリングです。貴方様の名は?」
「俺はリギルです。リギル・スメレート」
「リギル様ですね。よろしくお願いします」
「あのー。様付けはやめてください姫様。恥ずかしいです」
「私もキュアリスとお呼びください。姫とあまり呼ばれたくないのです」
「それではキュア「おい!」
となりのマルクスと呼ばれる兵士が俺の言葉を制した。
「お前ごときが姫様の名を軽々しく「いい加減にしなさいマルクス」
「ですが姫「私がそう呼んでとお願いしたのです。貴方は口出ししなくてよろしい」
「ですが「これ以上この方に無礼なことを言うものなら従者を変えますよ?」
「わ、分かりました……」
いざこざは終わったようで
「いいですかね? マルクスさんには申し訳ないですがキュアリスと呼びます。それではキュアリス」
マルクスの悔しそうな思いが嫌でも俺に伝わってくる。
この場から離れたいぜ……。
「勇者様にキュアリスと呼ばれるのはとても嬉しいです」
キュアリスがにっこりと微笑んだ。
その笑顔があまりにも可愛すぎて失神してしまいそうだ。
「その、あまり期待しないでください。俺が勇者だという確証は」
「それはこの剣を引き抜いてもらえれば分かることです」
「それは、そうですが」
「貴方が勇者じゃなくても、私は貴方を責めません。それでは剣を引き抜いてもらえますか?」
「分かりました」
俺は綺麗に地面に突き刺さってる伝説の剣の前に立つ。
「ふう」
一息ついて俺は剣を引き抜く作業に入る。
その間にいろんな思考を巡らせていた。
俺は元の世界に帰りたいだけで勇者にはなりたいと思ってはいない。
勇者は正義感溢れる男前な人がなるもので普通の学生がなるものじゃない。
だから俺は勇者じゃない。
この剣は引き抜かれない。
オーケー、適当に引き抜く作業をしてこの場を終わらせて、異世界から元の世界に戻る方法を考えよう。
俺は適当に片手で剣を引き抜いた。
引き……抜いた……?
「すごい! あの怪力のバルザークと呼ばれる者でも引き抜けなかった伝説の剣なのに!」
「勇者様無礼をお許しください!」
「へ?」
マルクスと呼ばれる兵士が俺の前に跪く。
キュアリスもそれに倣う。
「貴方様は勇者様なのですね」
えええええええええ!?
どうやら俺は勇者らしい。