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第二十四話「メロンソーダ―」


「はあ……」「災難でしたね」「ああ、全くだ」

 先のデビルクラーケンの件でビレイルは更に有名になり、隠れて移動しないといけない事態になった。他人事だが、本当有名人って大変だなと思う。ってか俺も一応勇者なんだけどな。ビレイルさんに比べれば知名度は全くと言っていいほどない。

「姫、目的地までは?」「この道を真っ直ぐに進めば10分で着くはずです。」


 俺達は他愛もない会話しながら歩き続ける。会話をしながら道中、俺は考え事をしていた。俺が勇者で魔王を倒す。本当に俺が勇者なのか? 本当に魔王は現れるのか? そういう考え事をしていながら俺は歩く。これから先どうなるのか? とりあえず覚悟を決めようと思った矢先、

「絶望しろ……」

 何だ? また何かが……。


 ――。



「リギルお前がもっと早く駆けつけていれば姫様は!」

「ごめんよ。ごめんよクレス」

「くそがあああああああああ!?」


 何だよ……これ。何だよ。この光景。

 姫? 何が姫だ? こいつは誰だ。俺は知らない。

 俺はリギル・スメレート。普通の学生で普通の生活をする一般人。


「クレス。俺は今度こそ姫を守る」

 俺は何を言ってるんだろうな? 

「約束出来るか?」「約束する」

 約束……する……?


「その誓い、忘れるなよ」


 ――。


「ハッ!」「気が付いたか?」「リギルッ! 良かった……良かった!」

 キュアリスが俺を抱き締める。

「俺は……」「急に君が倒れたもんで近くの日陰を探して、そこで介抱させてもらった」

 なるほど、また迷惑をかけてしまったか。

「こんな時にこんな事を聞くのは野暮かもしれないが聞いてもいいか?」

 ビレイルが顎に手を当てながら俺を凝視する。

「はい、なんでしょう?」「何か夢でも見たか?」「夢?」「ああ、君は気絶している間涙を流していたからね」

 そうか、俺泣いていたか。あの夢は何だろう。そもそも俺はこの世界に来る前からこういう意味が分からない夢をよく見ていた。ただ、学生だった俺はその夢は夢としてしか見てなかったし、こうして異世界に来るなんて考えもしなかったから。

 あの夢が何かは分からない。しかし、ここまで来た以上分からないままで済ませるわけにはいかない。もう俺は勇者になっていて魔王を倒す為にこうして旅をしているんだから。

「夢は見ましたけど、俺にも何が何だか」「そうか」

「ビレイル様、持ってきました!」

 あ、そういや視界に入ってなかったけど、マラカスはどこか行ってたのか。飲み物をいくつか抱えて戻ってきている。

「マラカスご苦労」「はい、ビレイル様。では、ご褒美のキッすぐはっ!」「ご褒美の顔面パンチだ。有難く受け取れ」「ビレ……イル……様」

 マラカスは力尽きたようだ。


「とりあえず何か飲め」「あ、有難う御座います」

 とりあえず、いくつかある飲み物から俺は適当に緑色の飲み物を選んだ。

「ビレイルさん。この飲み物は何ですか?」「新商品のメロンソーダーというらしい。私は飲んでないから味は知らないが」

 め、メロンソーダー! 俺が好きな炭酸飲料TOPに入るやつだぞそれ、ラベルが貼られてないから分からなかったが、そうかメロンソーダーか! ってか異世界にもこんな飲み物あるのな。凄い驚いたぜ!

「すごいゴクゴク飲んでいるが、そんなに喉が渇いているのか?」「いえ、私の好きな飲み物だったのでつい」「そうか」


 俺が飲み物を飲み終わった頃。

「もう少し休んでから進むか?」「いえ、もう行きましょう」「リギルがいいなら構わんが」

 ということで俺達は歩を進める。

「ビレイルさん、マラカスさんが倒れたままですが?」「放っておけ、後で勝手に付いてくるだろう」

 どんまい、マラカス。

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