第二十三話「ビレイルの憂鬱」
俺達は預言書と呼ばれる本に従って、その目的地に向かう。その道中。
「姫、この船はやめよう。嫌な予感がする」「ビレイル、貴方の感は当たりますが、今回は預言書の通りにしてみませんか?」「姫がそう言うなら構わないが……」
キュアリスがビレイルを説得し、僕達は目的地に向かう為、ビレイルが嫌な予感がするといったこの船に乗ることになった。
「いやあ、船に乗るのは久しぶりだぜ! ビレイル様! 一緒に黄昏ましょう!」「勝手に一人で黄昏ていてくれ。私は部屋に戻る」「そんな、ビレイルさまああ!!」
ビレイルからのマラカスの扱いは相変わらずだ。
数十分経った頃、
「さてと、俺も少し部屋に戻って休憩するか」
俺は踵を変えそうとした。その時。
「何だ!?」
船が急に大きく揺れた。
「大変だ。クラーケンが船に張り付いて来ているぞお!」
男性が大声を上げる。クラーケン? 魔物!? ビレイルの嫌な予感が的中したってことか!
「何だ? 何が起きている!?」
ビレイルが駆けつけて来る。
「何かクラーケンっていう魔物が船に張り付いているみたいなんです」「なるほど、船を揺らすほどの大きさだとするとデビルクラーケンか」「知っているんですか?」「まあ、私も一応戦士の端くれだから魔物の知識は少しぐらいはある」
一応戦士の端くれってビレイルさん貴方、蝶蜂の戦士と呼ばれているんですよ。
「デビルクラーケンは……あそこだな!」
ビレイルが走り出す。速い! これ馬より速いんじゃないのか? とりあえず俺も続こう。
「ぶおおおおおおおお!!!?」
と思った瞬間にデビルクラーケンは木っ端微塵になった。さすがは蝶蜂の戦士。その異名は伊達じゃない。こうしてデビルクラーケンの体は船から離れる。
「ああ、救世主様!」「まさか! あのお方は!」
デビルクラーケンが倒れて、数分後。ビレイルの周りに人だかりが出来る。
「蝶蜂の戦士、ビレイル・ビリアート様!」「まずい、目立ってしまったか!」
周りが歓声で湧き立つ。ビレイルは焦っている。どうしようこの場を抑えたほうがいいとは思うけど……。ただ、その後すぐ。
「何だ!?」
地震のような揺れが起こった。
「大変だ! 穴が空いていて水が大量に船の中に入ってきているぞお!」
ビレイルに夢中だった大衆が船の穴のほうへ向かう。
「私達も行きましょう!」「ああ!」
「これは……」「もうこんなに水が入ってきているなんて……」
どうする? これはまずい。このままだと船は沈む。
「魔術は研究中だが、とりあえずやってみるか。ハーッ!」
唐突にビレイルはそう言うと、穴が空いているところに手を翳す。すると水が凍り付き、船に水が入らなくなった。
「一応、何とかなったか」「ビレイル様、貴方まさかこんなことまで出来るなんて……!」
マラカスがビレイルに熱い眼差しを向ける。
「さすがは我らのヒーロー! ビレイルッ! ビレイルッ!!」「あの、困るのだが……」
ビレイルの活躍にマラカスを含めた大衆はメロメロだ。
これ……さっきのクラーケンよりやばい状況じゃないか?




