第二十一話「作戦会議」
青空の下、テーブルを囲んでベンチに腰掛けながら俺たちは四人で作戦会議を開いている。内容は俺たちが狙われていることと、これから敵がどのように動くのか?
それらについて事前に話し合ったほうが良いというビレイルの計らいで開かれた会議だ。
「まず、私が一番危険だと判断したのはあの人族、確かトリマーとかいったか」「精霊族氷術使いミーチェはどうですか?」
すかさず、俺が質問する。
「確かにその氷術使いも厄介ではあるが、私がファイヤーソードを手にした今、問題はないといえる」「ふむ」
ビレイルは思考を巡らすポーズをしながら、間を置きつつ口を開く。
「それと、ハイデンベルク城の襲撃を指揮したという獣族、リギル殿はどう見る?」「覚醒した俺で対処出来た相手ですので先の二人ほど手強い相手かは分かりませんが、警戒しておいたほうがいいかと」「ふむふむ」
ビレイルは思考を巡らすポーズを続ける。そのビレイルに対し、俺は更に質問する。
「敵の主戦力に値するこの三名は今まで単独で攻め込んで来てましたが今後、結束して攻め込む可能性はありそうでしょうか?」
ビレイルは暫し考えて口を開く。
「可能性としては十分ありえる。私が一番警戒しているあの人族は戦闘技術は勿論のこと、策略家でもありそうだと私の感が告げている」「なるほど」
そして、話の内容は俺の覚醒へと移る。
「リギル殿のその馬鹿力とやらは自由に発揮出来るものなのか?」「分かりません、ピンチになったらいつの間にかそうなったとしか」「ピンチか……なるほど」
ピンチという言葉をビレイルは何度か繰り返しながら考える素振りを見せる。そして口を開く。
「とりあえず、今の段階でハッキリしているのは、敵に打ち勝つにはリギル殿、貴殿の覚醒が必要不可欠だということ」「俺の……覚醒がですか?」
「ああ、私が手こずったあの人族に撤退までさせたのだからな」「しかし、ビレイルさん。話の内容は分かったのですが、肝心の」「覚醒出来るタイミング……のことだろう?」
ビレイルは俺が言おうとした言葉を待ってましたとばかわりに呟いた。
「今の段階で分かっているのは、リギル殿の覚醒はリギル殿がピンチな時に発揮されるものだということ」
「…………」
「それを意図的に発動出来れば、やりやすいのだが」「何か、すみません……」「何故謝る?」「俺がもっとしっかりすれば……」「私は別にリギル殿を責めてるわけではない。むしろその逆だ。リギル殿には私も姫も救われたのだ。感謝しかない。どこかの変態野郎とは大違いだ」
そんなビレイル様あああとマラカスが喚いてる中、話は進む。
「とりあえず、これからの闘いはリギル殿の覚醒が頼りになるかと思う。それ以外のサポートは私、ビレイル・ビリアートに任せてくれ。これからも"よろしく頼むよ"リギル・スメレート殿」
よろしく頼むよ。ビレイルのその言葉に何かデジャブを感じる。前にこの光景を見たような……。
「リギル殿? どうした? 泣いているのか?」
ビレイルの言葉で俺は我に帰った。どうやら俺は涙を流してるみたいだ。別に悲しい気持ちではないが。
「いえ、ビレイルさん。これからも宜しくお願いします!」
こうして作戦会議は一旦終わった。これからは、俺の覚醒が頼りになる。緊張してるのか武者震いか、身体に震えを感じる。さあ、これからどうなる。そう思いつつ、俺は両手を握りしめ青空を見上げるのだった。




