第二話「鳥肌」
「”何寝てんだ兄ちゃん”」
その言葉。どこかで聞いたような……。
「ん……んう」
俺は目を覚ます。
起きると目の前には見覚えのない景色。
今話しかけてるのはこのおじさんか。
「あの? ここは」
「何寝ぼけたこと言ってんだ。ここはミハエル平民街。平凡な街だが、平和的でいいところさ」
ミハエル平民街? 聞いたことないな。
しかし、今の状況を考える。
目の前には見覚えのない景色
見覚えのないおじさん。
この二つの状況だけで考えは一つの答えに行きつく。
俺は見知らぬ街にいる。
しかし、どうして?
確か俺はあの鳥居から出る時に倒れた。
誰かが見つけて俺を運んだ?
だとしては目ざめる場所は病院かどこかの家の天井がセオリーのはずだ。
目覚める場所がおかしすぎる。
しかもこのおじさんの発言を聞く限り、俺はここで寝ているらしい。
ってことはこのおじさんが俺をここに運んできたというわけではなさそうだ。
「あまりここで寝るなよ。浮浪者だと思われるからな。あ、もしかして浮浪者だったか? ふはははは」
そういうと俺を起こしたおじさんは立ち去った。
さて、今この状況を考えよう。
なぜこの街に俺がいるかは分からない。
誰かが運んだ? だとしてもそんなことはどうでもいい。
今やることは決まっている。
「携帯。携帯っと」
俺はポケットから携帯電話を取り出す。
「あった!」
さて、家に連絡して今この状況を伝えなきゃ。
ぷるるるるという音を聞きながら親が電話に出るのを待つ。
「現在この電話番号は使われてはいません」
その声を聞いたとき、俺の体が震えるのを感じた。
ま……まさかな。かけ間違えか?
俺は今かけてる電話番号を確認する。
親の電話番号で間違えない。
気のせいか? もう一回。
「現在この電話番号は使われてはいません」
おかしい。
かかるのが普通のはずだ。
念のために友達にも電話をかけてみる。
「現在この電話番号は使われてはいません」
嘘だろ。
冗談きついぜ。
どうする?
よし! 困ったときは110番だ。
「現在この電話番号は使われてはいません」
何が起こってるんだ。
いや、きっと何かの偶然だ。
街の人に聞いてみれば分かるだろう。
「すいません」
俺は一人の男性に話しかける。
「はい、何でしょう?」
「110番が通じないんですが何かの誤作動ですかね?」
「何言ってるんですか? 110番に電話しても通じるわけないじゃないですか」
「え? 110番に電話すれば警察に電話が通じるじゃないですか?」
「それは111番でしょ。貴方おかしいですよ」
俺の体の震えがより一層強くなった。