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第十九話「奇襲」


「私だ。何!? 私の城に敵が攻め込んできてる!? 分かった。すぐ行く」

 ビレイルが携帯の通話を切る。


「すまない。冒険はここまでだ。私は自分の領地に向かわねば」

「その必要はなさそうですよ」

「それはどういう」「この預言書にも貴方と貴方の城について書かれているので」「なるほど、そういうことか」「ということで、ビレイル。これからもよろしくお願い致します」「とりあえず急ぐぞ!」「はい!」


 俺達はビレイルの領地、ビレイル城へと急いで向かった。


――。


 馬を走らせること2時間半、ビレイル城へと辿り着いた。そこでは人族でも獣族でもない禍々しいオーラを放った悪魔みたいな化け物とビレイルの家来であろう者たちが、大激闘を繰り広げている。


「どうやら間に合ったようだな!」「ビレイル様が来られたぞおお!」

 

 どうやらビレイルが来たことによって、兵士達の士気が上がったようだ。状況はこちらへと大分片寄ってきた。


「なるほど、さすがは蝶蜂の戦士ビレイル・ビリアートと言ったところか」

 

 俺達の目の前にある人物が現われた。人族に見えるが、オーラが他の化け物よりも一層に禍々しい。


「貴様か。私の領地に攻め込んできた愚か者は!」「まずは、蝶蜂の戦士である君からだ!」「な!?」


 速い! あのビレイルですら彼の攻撃に手こずっている。これは援護しなければまずい!


「蝶蜂の戦士だから期待したが、思ったより弱いな。これなら力を測るまでもない。始末するか。ん?」「ビレイルさん!」


 俺はビレイルを援護すべく、その禍々しい人族へと攻撃する。


「ダメだ! リギル! 来るな! こいつは危険だと私の感が告げている!」「ほお、威勢のいい人は僕は嫌いじゃないよ。だけど」「グハッ!」


 その人族の攻撃で俺は吹き飛ばされた。そのまま地面に仰向けで倒れる。


「威勢がいいだけで大したことはないか。残念だ」


 ハハハ、そうだよな。俺弱いんだったわ。何が援護するだ。カッコつけやがって、ここで終わりじゃないか。何も成し遂げられずに。


「どうした? もう諦めるのか?」

 何だ?

「守るんじゃなかったのか?」

 そうだ。そうだよな。


「俺が……」「ん?」「俺が守るんだああああ!!」「何だ!?」


 俺は咄嗟にその人族の剣に自分の剣を振るった。その威力で人族の剣は吹き飛ぶ。


「なるほど、そういうことか。面白い。トリマー、撤退する」


 その人族の発言と共に、ビレイル城に奇襲を仕掛けていた軍勢は撤退した。 


「ハア、ハア、ハア」


 何とか、奇襲は凌いだか。しかし、何だ? また火事場の馬鹿力みたいなものを俺は発動したわけだが。とりあえず今は奇襲を凌げたことを喜ぼう。良かった。本当に良かった。

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