第十八話「ファイアーソード」ビレイル視点
「姫、お願いがあるのだが」
「何でしょう? ビレイル」
「私の武器を発注してもらいたいのだが」
私はあのミーチェという精霊族氷術使いに遅れを取ってしまった。特に厄介だったのはあの氷壁。私の剣ではあの氷壁を削れなかった。今後、あの氷術使いは私達の前に再び現れるだろう。その時の為に、備えておく必要がある。
「分かりましたビレイル。実は丁度素晴らしい鍛冶屋さんを私は知っているのです」
「そうか、是非訪れてみたいものだな」
ということで、私達は移動した。
――。
30分経った頃。
「ここです」
鍛冶屋に辿り着いた。見た感じボロい建物だが、鍛冶屋らしい印象は受ける。私達は鍛冶屋の中に入る。中では、屈強な男性が剣を打っている。
「こんにちは、高雄さん」
「キュアリスか。何の用だ?」
「貴方に用があるのは彼です」
「彼? 彼女じゃないのか?」
「彼は男です」「そうか」
やはり、私の見た目は驚かれるようだな。そんなに皆、私が女に見えるのだろうか?
「貴殿が打つ剣はレベルが高いと聞く」
「ああ、そう自負はしている」
「で、貴殿にお願いがあるのだが」
「何だ?」
「ファイアーソードを作ってもらいたい」
「炎剣か。作るのは可能だが、コストが高いため高額になる。それでも良いか?」
「ああ、問題ない。ちなみにいくらだ?」
「安くても5万G以上はする」
「5万Gでいいのだな?」「ああ」
普通は5万Gは一般庶民が持てる金額ではないが、私は幸い城主であるため、それぐらいのお金は問題なく出せる。
「では、今から作るため。しばらく待ってもらいたい」
「どれくらい待てばいい?」
「3時間後には完成するはずだ。その時に来てくれ」
「分かった。ではここら周辺でも探索するか」
私達は踵を返し、鍛冶屋を出た。
――。
3時間か。とりあえずどこか座れる場所を探して思考を巡らせるか。
「ビレイル様ああ、私とデートしましょう」
その前に面倒な奴が。
「やめてくれ。私はノンケだ」
「またまた、そんな冗談を事情があって性別を偽ってるのですよね。私には分かっグハッ!」
「リギル殿」「はい」
「こやつを何とかしてくれんか?」
「分かりました。行きますよ、マラカスさん」
「あああ、ビレイル様ああああ!」
とりあえず、邪魔者はいなくなったので思考を巡らせるか。
――。
思考を巡らせること3時間。そろそろ武器が仕上がってる頃だろう。
「只今、戻った。ファイヤーソードのほうは?」
「ああ、丁度完成したところだ」
私は高雄という鍛冶屋から武器を受け取る。
「見た感じ、普通の剣と変わりはなさそうだが」
「取っ手の中央にボタンがあるだろう。それを押してみてくれ」
私は言われた通りにボタンを押す。すると剣が燃え上がった。
「これはすごい」
「どうだ。使い心地は?」
「ああ、これなら十分だ。お代を出そう。5万Gでいいのだな?」
「思ったより楽に作れたから5千G安くしてやろう。4万5千Gでいい」
「技術だけじゃなく、良心的でもあるのだな。この鍛冶屋は」
「俺はお金が欲しくて、剣を打っているわけではないからな」
こうして、私はファイアーソードを手に入れた。これなら、あの氷術使いは問題ないだろう。だが、敵は氷術使いだけではない。油断はしないようにせねばな。




