第十六話「守れなかった過去」
「オーホッホッホ! 私の氷球を斬り捌くとは貴方なかなかやるわね」
目の前に一人の女性が現れた。
その女性は扇を口元に当て、オーホッホッホと笑い声をあげる。
「リギル。姫を頼む」
「はい!」
俺はキュアリスを連れて逃げた。
――ビレイル視点。
「その剣捌き、その動き。貴方はあの蝶蜂の戦士、ビレイル・ビリアートかしら?」
「有名になるのも考えものだな!」
「だけど、いくら貴方でも私の前では氷漬けにならざる負えなくってよ! オッホッホッホ」
「それより、貴様は精霊族氷術使いミーチェか?」
「あら、知られてましたのね。貴方の言う通り、有名になるのも考えものね。オーホッホッホ!」
私はミーチェに向かい突進する。
「何故、精霊族がこんな惨いことをするんだ!? 精霊族は人族の味方ではなかったのか!?」
「事情が変わったのよ」
彼女は氷球を私に向けて放つ。私はそれを斬り捌き、ミーチェに最接近する。
「これで終わりだ!」
私は思いっきり、右手に握った剣をミーチェに振るう。しかし、カキンという音と共に私の剣が折れる。
「な!?」
「いくら貴方でも私の堅い堅い氷壁を削るのは不可能ですわ。オーホッホッホ」
私は一旦引いて体制を立て直した。
――。
「キュアリスはここに隠れていてください」
「リギル、貴方は?」
「俺はビレイルの援護に向かいます」
「そう、気を付けてくださいね」
「では、行ってまいります」
僕はその場を後にした。
――ビレイル視点。
「クッ、これでもダメか!」
私は魔銃を放って、敵の氷壁を削ろうとしたが、それでも敵の氷壁が削れる様子がない。
「どうやら詰みのようですわね。ビレイル・ビリアート」
「クッ!」
「逃げたければ尻尾を巻いて逃げていいのですわよ? ビレイル・ビリアート。オーホッホッホ!」
「生憎、私に逃げるという手段はないのでな」
「それは残念ですわね」「ビレイル!」「リギルか!」「あらま」
リギルが現われた。
「リギル! 危険だ! 戻れ」
「俺だって戦士の端くれです。戦うことくらいできます」
「そうか。では頼む!」
「はい!」
リギルが標的へと突進する。
ん? リギルの足が止まる。
「リギル! 危ない!」
私は咄嗟に声をかける。リギルに敵の氷球が直撃する。
リギルはそのまま、倒れ込んだ。
――。
俺は標的であろう精霊族の女性へと突進した。
ん?
「リギル! お前が……お前がもっとちゃんとしていれば姫様は!」
何だ? また何かが。
「ごめん。ごめんよクレス」
「クソがああああああ!!!」
何だこの光景は……。
「リギル! 危ない!」
え?
俺は意識を失った。




