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第十二話「ラタージャカルジス区」


 俺たちはラタージャのカルジス区に辿りついた。

 ビレイルによるとこの街には闘技場があって、街の人々は血気盛んらしい。

 ビレイルから聞いたとおりだ。普通の町の人たちより妙に活気を感じる。


 それにしても


「ビレイル様、何とお美しい」

「その言葉。11回目だぞ」


 この男は……。

 そういや紹介してなかったな。彼の名はマラカス・リンドヘイズ。傭兵だと自己紹介していたな。

 しかし、彼は


「え、とお前」

「リギルです! いい加減覚えてください」


 俺の名前を全然覚えてくれない。

 というか、ほとんどの関心がビレイルに向いていて、俺とキュアリスは置いてけぼりだ。

 ビレイルはうんざりしているしな。


 さて、それは置いといてこの街で一体何をすべきなんだろうか?


「ん?」

 

 預言書が開いた。そういやキュアリスから聞いたが、この予言書、文字が追加されるときは勝手に開くらしい。


「ビレイルさん」

「何だ?」

「闘技場に参加してとこの本に書かれています」

「私がか?」

「はい」


 ビレイルの凛々しい表情に陰りが見られた。


「私はあまり戦いが好きではないが」


 嘘だあ。あの剣さばきを見てるとこの人戦うために生まれてきたとしか言い様がない。


「何だね? リギル。私に何か言いたげだな」

「いえ、何でもないですビレイル様」

「なぜ様付け?」


 この人、人の心も読んでそう。

 あまり余計なことは考えないようにしよう。


「とりあえず今日はもう遅い、宿を借りようか」


 ということで俺たちはこの街の宿に泊まることにした。



 ――夜。皆が寝静まったところ。



「ぎゃあああああ!」


 マラカスの悲鳴。何だ!? 敵襲か?


「どうした!?」


 慌てて電気をつける。 

 そこにはマラカスの変わり果てた姿が。


「敵はどこだ!!」


 俺は剣に手を伸ばし辺りを警戒した。


「落ち着け」


 ビレイルがそう発言した。

 こんな時に落ち着いていられる……


「私がこやつをやったんだ」


 なぜ? まさかビレイルは敵に回ったというのか!?

 

「こやつが私の寝床を襲ってきたもんでな」

「へ?」

「とりあえず蹴飛ばしておいた」


 なるほど。

 よし! 睡眠続行。

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