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第十話「戦いの女神」


「うぎゃああああああ!!」

「クッ」


 押されている? たかが盗賊ごときに。

 いや、俺は油断していた。

 もっと準備を万全にすれば良かった。

 後悔先に立たず。


「残りはお前一人だな」


 敵数、15。味方なし。今の俺の状態。不調。

 終わったな。こりゃ。


「終わりだああ! うりゃあっ!?」


 振り下ろされるはずの剣が吹き飛ぶ。

 何だ? 何が起こった?

 向こうに人が。


「大人しく投降してくれれば手荒な真似はしない」


 二人の女と一人の男が馬に乗ってこちらにやってくる。

 俺に向かって振り下ろされるはずだった剣は、あの凛々しい見た目をした女が撃ち落としたのか?

 すごい射撃精度だ。


「援軍か? だが相手はたったの三人。それも女二人と弱そうだ。かかれ!」

「残念だ」


 盗賊たちが彼らに一斉に遅いかかる。

 凄腕の騎士でもこの数は手厳しいだろう。

 それを

 

「うぎゃ!?」


 と思いきや何だ!? あの剣裁きは?

 蝶のように舞い蜂のように刺す。

 そんな言葉が似合う戦い方をしている凛々しい女性が目の前にいる。


 何だ。この気持ちは。

 自分の心の底から湧き上がる思いを感じる。

 ああ、貴方は戦いの女神様なのですか?

 俺は運命の出会いを今、この時したんだ。


「峰打ちにしておいた。あとは治安部隊に引き渡そう。あっ、そこの君大丈「女神様! 俺と結婚してください」

「……は?」



――ビレイル視点。


 今、私は混乱している。

 一つは、預言書の通りに事が進んでいること。預言書の通りのルートに行けば、盗賊に襲われる傭兵がいると書かれていてその通りにしたらそれが事実となったこと。

 いや、これはまだ理解できる範疇だ。


 混乱の一番の原因は……。


「ああ女神様。貴方は何とお美しいのでしょう」


 こやつだ。

 どう処理しようか。

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