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4話

「まずはストーリークエストに関係する町人を探さないとな。」


ファンタジーアースの世界ではプレイヤーではない、ゲーム内のキャラクターの頭上にアイコンが表示されている事がある。


これはそのキャラクターがクエストを出している。という印で、アイコンの色が青だと採集や探し物、黄色だと魔物の討伐や捕獲、赤はストーリーに関するクエスト。


と、色によって判別出来るようになっている。


今日は俺とカレーパンの二人でストーリーを進めてみよう。

と、約束をしていたので、頭に赤のアイコンを浮かべた町人を探しているのだ。


「無難に酒場、教会辺りから探してみる?」


「そうだな。二人で手分けして行くか。俺は酒場。カレーパンは教会な。」


ちなみに、パーティを組むとパーティメンバー同士ならゲーム内で一定の距離の範囲にいればで常に会話出来るようになる。


「うん。じゃあ5分後に町の広場に集合ね。」


「へいへーい。んじゃな。」


◇◆◇◆


「オーイ!教会にいたよ!酒場は?」


「おっ、マジで?こっちはサッパリ。」


酒場で特に情報を得られなかった俺が広場で待っているとカレーパンが嬉しそうな声でやって来た。


どうやら無事にお目当ての情報を得たらしい。


「うん。教会に行ったら扉がしまってて、扉の前にシスターが立っててさ、ばっちりクエスト受けてきたよ。」


カレーパンの話では……


教会の神父さんが御祈りに使う清水を汲みに北の森にある泉に向かったが帰ってこない。

なので誰かに探してきてほしい。


というクエストらしい。


「よし。じゃあ早速行こうか。アイテムとかの準備は大丈夫?」


「うん。大丈夫だよ。早く行こ!」


カレーパンはワクワクが押さえきれないようで、一人で走り出したが……


「おーい。そっちは南だよ。」


「あれ?本当だ。」


俺はまっすぐ反対方向に走るカレーパンを呼び止める。


「カレーパンって方向音痴?」


「違うよ!ちょっと間違えちゃっただけだよ!」


「えぇー?本当かなぁ?」


「もう!イジワル!知らない!」


俺がからかうとカレーパンは怒ってそのまま北に向かって行ってしまった。


「悪かったよ。怒るなって。」


謝りながらも、少し気楽に話せるようになったかな?なんて思いながら、俺はカレーパンを追いかけて北に走り出した。



◇◆◇◆


町を出てフィールドに出た俺達は改めて戦闘に関して打ち合わせをする。


ちなみにお互いのステータスはこんな感じ。


名前:メロンパン

種族:人族

ジョブ:戦士Lv5

装備:銅の槌(槌熟練度37)、霊銀の盾(盾熟練度32)、革の胸当て、革のズボン

HP:48

MP:13

筋力:30

素早さ:20

賢さ:17

魅力:6

運:7


スキル:ガード(MP3)、スマッシュ(MP2)

持ち物:ポーション×20、毒消し草×5、魔粘土×1




名前:カレーパン

種族:獣人族

ジョブ:狩人Lv6

装備:風の弓(弓熟練度40)、バトルダガー(短剣熟練度14)、革のジャッケット、狩人のズボン

HP:32

MP:14

筋力:26

素早さ:29

賢さ:18

魅力:11

運:13


スキル:三連射(MP4)、落とし穴(MP6)


持ち物:ポーション×14、マジックポーション×8、毒消し×6、痺れ薬×7、



悔しいがカレーパンのほうがレベルが高い。

まあ、パーティの仲間としてありがたい事かな。

カレーパンは普段は弓で、状況によっては短剣で戦うとのこと。


三連射は弓のスキル。落とし穴はジョブである狩人のスキルらしい。

ジョブレベルが6になった時に得たらしいので俺もそろそろ戦士のスキルを覚えられるかもしれない。


「とりあえず俺が前衛で、カレーパンが後衛が基本な。」


「うん。敵に囲まれたり、狭い場所の時はナイフで戦うね。」


「あぁ。でもどんな時も俺より前に出るなよ。」


「わかってる。守ってくれるんでしょ?」


「任せろ。」


「ふふっ。頼りにしてるよ。」


◇◆◇◆


森に向けて歩き出した俺達だが、中々森にはたどり着けなかった。


「ゴブリンが前から2!右から2!俺は前に行くぞ!」


少し歩くとすぐにモンスターに遭遇するからだ。


「右は任せて!えぃ!」


俺は前方にいるゴブリン2匹に向かって突進。

その勢いのままゴブリンを1匹を弾き飛ばし、もう1匹をぶん殴る。


すぐに後ろを振り返りカレーパンの様子を確かめるが、距離を保ちながら上手く弓で戦っていた。

カレーパンの弓は俺の霊銀の盾と同じキャラメイク時のボーナスアイテムなので序盤にしてはかなりの威力を持っている。


あっちの心配はいらないな。


俺がカレーパンの様子を眺めているうちに目の前のゴブリン達が立ち上がり、襲いかかってきた。


「おっと。俺だけられる訳にはいかないよね。」


俺はゴブリン達の攻撃をしっかり盾で受け止めると、スキルを発動させる。


「くらえ!《スマッシュ》」


発動と同時に俺の銅の槌が淡く光り、振るわれた軌道が輝く。


「ギャギャ……」


「ゴブゥ……」


2匹まとめて止めをさしてドロップアイテムを回収。

振り返ると、カレーパンも難なく倒せたようでこっちに駆け寄ってきていた。


獲得アイテム

『ゴブリンの角×2』


「ふう。ゴブリンなら10匹きても大丈夫だな。」


「そうね。一人の頃は結構苦労したけど、やっぱり前衛が体を張ってくれると楽だわ。」


「おう。任せろ。」


そんな会話をしていると……


「グォォ!」


再びモンスターと遭遇する。


「噂をすればお客さまよ!」


「はいよ店長。接客はお任せください。ってね!」


雄叫びをあげて現れたのは『タックルボア』

この草原に住む猪の魔物でリアルの猪より一回り大きい。


強力な突進攻撃を得意としているが、攻撃パターンはその突進攻撃か、噛みつきくらいしかないので落ち着いて対応すれば怖くはない。


「少しの間引き付けといて!《落とし穴》仕掛けるから!」


「了解!《ガード》」


俺はスキルを使い自らの耐久力を上げると、腰を落として盾を構えてタックルボアの突進を待ち構える。


俺の背後ではカレーパンが狩人のスキルである《落とし穴》を発動。

落とし穴はフィールドに魔物を捕らえる落とし穴を掘り、一定の時間行動不能にさせるトラップスキルだ。

しかし、発動から設置まで3秒かかり、その間スキルを使っているプレイヤーは無防備になってしまう。


なので確実に設置するには敵に見つかる前か、他のパーティメンバーに時間を稼いでもらうかになる。


「グガァァウゥ!」


「うぅぅりゃあ!」


ガギィン!!


タックルボアの突進と、俺の盾がぶつかり激しく火花が飛び散る。

と、同時にヘッドギアの視界が大きく揺れて、コントローラーが激しく振動する。


思わず歯を食いしばり、コントローラーを握る手に自然と力が入る中々の臨場感だ。


ここで1秒。


何とか体勢を崩す事無く受け止めると、すぐさまタックルボアの横っ面を殴り付ける。


「グガッ…」


俺の槌は見事にタックルボアの牙をへし折る事に成功。

部位破壊によりコイツの攻撃力は半減したがまだまだHPは残っている。


これで2秒。


カレーパンの罠がそろそろ設置出来るだろう。

俺はタックルボアが怯んでいる隙に距離をとり、罠の設置場所の手前に立って盾を構える。


部位破壊のショックから立ち直ったタックルボアは離れた位置で盾を構える俺を見つけると、目に怒りの炎を宿しながら突進してくる。


そして、3秒。


「いいわよ!」


カレーパンの罠が完成した時点でタックルボアは俺の目の前に迫っていた。


「さてさて、落とし穴の出来映えは?」


俺は間一髪でタックルボアの突進を横っ飛びでよけるとフィールドをゴロゴロと転がった。


タックルボアは勢いそのままに落とし穴に落ちていった。


「ふっふっふっ。私達を襲った事を後悔させてあげるわ。えぃ!えぃ!」


落とし穴に落ちて身動きの取れないタックルボアに目掛けひたすら矢を射かけているカレーパン。


なんだかとても楽しそうです。


落とし穴が消えると同時にタックルボアも光の粒となって消えていく。


獲得アイテム

『猪肉』


「はぁー。すっきりした。」


カレーパンはとても清々しそうに呟いた。

ゲーム内のキャラは無表情だけど。


「ストレスでも溜まってるの?」


「まあ……色々とね。」


カレーパンは同い年だけど普段は学校に行きながら働いているらしい。

何の仕事かは知らないが働くという事はきっと大変な事なんだろう。

バイトもしたことない俺には分かってやれない悩みだ。


「そうか……じゃあさっさと森に行って暴れようぜ!どっちが先に着くか競争な。」


分かってやれないけど忘れさせてやる事は出来るかもしれない。

このファンタジーアースの世界にいる間は思いっきり遊ばせてやろうと思う。


「ちょっと!いきなりとかズルくない?」


「ズルくない!お前のほうが素早さ高いだろ!これくらいハンデをよこせ!」


「何その変な理屈!?男らしくないぞ!待てぇ!」


それから俺達は絶え間なく襲ってくるモンスターを無視して森に向かって走り出した。



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